不動産投資でよく聞く専門用語を解説!〜「借地権割合」編〜
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吉田 謙太郎
吉田 謙太郎
宅建士・不動産投資家・ライター|筑波大学卒業後、大手不動産会社にて投資用不動産の売買および賃貸営業・投資家へのコンサルティング・自社メディアでの記事執筆などを行う。自身でも社会人1年目(22歳)から不動産投資をしており、横浜市・大阪市・神戸市に区分マンションを4戸運用中。保有資格は宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、3級ファイナンシャル・プランニング技能士。

不動産投資には、たくさんの専門用語があり不動産業者や金融機関などとのやり取りでは日常的に専門用語が飛び交っています。そのため不動産投資家として物件を購入したり賃貸経営をしたりする場合は、不動産業界における共通言語ともいえる各種専門用語を理解しておくことが必要です。専門用語が分からないと関係各者とのコミュニケーションがスムーズに取れないことがあるかもしれません。

本シリーズでは、不動産投資でよく聞く専門用語を毎回ピックアックしてこれから不動産投資を考えている人にも分かりやすく解説していきます。本記事で取り上げる専門用語は「借地権割合」です。「借地権割合」という用語の意味や不動産投資と関係する7つの局面について解説します。

目次

  1. 「借地権割合」とは?
  2. 借地権割合を調べる2つの方法
    1. 「路線価図」を参照する
    2. 「評価倍率表」を参照する
  3. 借地権割合が不動産投資と関係する7つの局面
    1. 地主から借りている土地を評価する場合
    2. 誰かに貸している土地を評価する場合
    3. 賃貸物件が建っている土地を評価する場合
    4. 借地権の権利金を算出する場合
    5. 借地権の地代を算出する場合
    6. 借地権の更新料を算出する場合
    7. 借地権の名義変更料を算出する場合
  4. 借地権も財産と同様に評価されるという点を覚えておきましょう

「借地権割合」とは?

土地の評価額の中で「借地権」という権利の評価額が占める割合のことを「借地権割合」といい土地を「借りる権利」(借地権)の財産的な価値を算出するために用いられる数値です。借地権割合は、土地を借りる権利の価値を評価する数値のため、一般的に東京駅や銀座周辺などの利用価値が高い土地ほど借地権割合が高くなります。

借地権者は、あくまで土地を借りている状態に過ぎないため、土地を売却したり担保にしたりすることはできません。一方で土地を使用する権利がある点では、借地権も所有権と同じ性質を持っているため、借地権には財産的な価値があると解されており相続時や贈与時には課税対象となります。

借地権割合を調べる2つの方法

借地権割合を調べる方法は、以下の2つです。

  • 「路線価図」を参照する
  • 「評価倍率表」を参照する

いずれも国税庁のホームページから確認することができます。

「路線価図」を参照する

路線価図とは、路線価(その土地の価値を評価するために国税庁が設定した土地の1平方メートルあたりの価格)が記された地図のことです。路線価図には、各土地の1平方メートルあたりの価格と並んでA~Gまでのアルファベットが付記されておりそのアルファベットが借地権割合を示しています。

記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

具体例を挙げて説明すると路線価図上に「215D」と記されている場合は、その土地の1平方メートルあたりの価格が21万5,000円で借地権割合は60%です。上記の例で土地の面積が100平方メートルの場合、その土地の借地権の評価は、以下の計算により1,290万円となります。

  • 21万5,000円×100平方メートル×60%=1,290万円

「評価倍率表」を参照する

評価倍率表とは、土地の評価額を算出するために路線価が定められていない地域の土地の固定資産税評価額に乗じる倍率および借地権割合が記された表のことです。郊外にある土地は、路線価が設定されていない場合もあるため、路線価図ではなく固定資産税評価額と評価倍率表を用いて土地およびその借地権の評価額を算出します。

例えば土地の固定資産税評価額が1,000万円、評価倍率1.1倍、借地権割合40%の場合、その土地の借地権の評価は、以下の計算により440万円となります。

  • 1,000万円×1.1倍×40%=440万円

借地権割合が不動産投資と関係する7つの局面

借地権割合が不動産投資と関係するのは、以下7つの局面です。

  • 地主から借りている土地を評価する場合
  • 誰かに貸している土地を評価する場合
  • 賃貸物件が建っている土地を評価する場合
  • 借地権の権利金を算出する場合
  • 借地権の地代を算出する場合
  • 借地権の更新料を算出する場合
  • 借地権の名義変更料を算出する場合

地主から借りている土地を評価する場合

例えば親が地主から借りている土地にマイホームを建てて居住し、その家と借地権を相続や贈与などで取得した場合は、借地権割合を用いて借地権の財産的価値を評価することが必要です。このような場合の借地権の評価額は、以下の計算式で算出できます。

  • 借地権の評価額=自用地評価額※×借地権割合
    ※「自用地評価額」とは、その土地を所有権として持っていたときの評価額

誰かに貸している土地を評価する場合

例えば親が所有している土地を宅地(建物を建てることを地主が許可した土地)として第三者に賃貸しておりその土地を相続や贈与などで取得した場合は、借地権割合を用いてその土地の評価額を算出することになります。

  • 貸宅地(底地)※の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)
    ※第三者に貸している土地を「貸宅地」または「底地」といいます。

賃貸物件が建っている土地を評価する場合

例えば親が所有している土地に賃貸アパートなどの建物を建てておりその建物と土地を相続や贈与などで取得した場合は、借地権割合を用いてその土地の評価額を算出します。

  • 貸家建付地※の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
    ※「貸家建付地」とは、賃貸物件が建っている自己所有の土地

上記計算式に用いられている「借家権割合」「賃貸割合」についても解説します。

・借地権割合
建物の価値において借家権(その建物を借りる権利)が占める割合のことを借地権割合といい、おおむね30%です。賃貸アパートなどが建っている土地には、利用者(アパートの入居者)がいるため、用途や処分方法の自由度が低くなります。そのため財産としての価値が更地よりも低くなることを加味して課税評価額から差し引くために設定されている数値です。

・賃貸割合
当該建物の床面積の合計うちどの程度が賃貸されているかを示す割合のことです。以下の計算式で算出されます。

  • 賃貸割合=課税時期において賃貸されている床面積の合計÷その建物の床面積の合計

借地権の権利金を算出する場合

借地権の権利金とは、借地契約を締結する際に借主が貸主に支払う一時金のことです。賃貸住宅における礼金に近い性質があり権利金の金額は以下の計算式で算出されます。

  • 権利金=土地の評価額×借地権割合

借地権の地代を算出する場合

地代とは、土地を借りるにあたっての対価(賃料)に相当する金銭で「通常の地代」と「相当の地代」の2パターンが存在します。

・通常の地代
権利金とは別に支払われる土地利用の対価のことで、以下の計算式によって算出されます。

  • 通常の地代=土地の評価額×(1-借地権割合)×6%

・相当の地代
権利金の支払いがない場合における土地利用の対価のことです。相当の地代は、権利金の支払いがない分、借地権割合によるディスカウントがなく以下の計算式によって算出されます。

  • 相当の地代=土地の評価額×6%

借地権の更新料を算出する場合

契約内容に盛り込まれていれば借地権においても賃貸住宅と同様に更新料の支払いがある場合があります。更新料の金額は、貸主と借主の合意によって決められるため、明確な決まりはありません。一般的な相場としては、以下の通りです。

  • 更新料=土地の更地価格×借地権割合×5~10%

借地権の名義変更料を算出する場合

土地の借主が借地権を第三者に譲渡した場合や相続した場合などは、契約当事者が変わるため、名義変更料を支払う必要があります。一方で土地の貸主が死亡してその土地が相続された場合にも名義変更を行う必要がありますが名義変更料を支払う必要はありません。名義変更料の一般的な相場は、以下の通りです。

  • 名義変更料=更地価格×借地権割合×10%程度

借地権も財産と同様に評価されるという点を覚えておきましょう

借地権は、土地を借りる権利です。しかし土地を借りることでその土地にマイホームを建てて居住することができたりアパートを建てて賃貸経営をすることができたりするため、財産的価値があると評価されています。一方で土地の所有権よりは弱い権利のため、借地権の評価をする際には借地権割合を用いて価値がディスカウントされるのが特徴です。

借地権割合は、土地の賃貸借が絡む多くの局面で関係する概念となるため、不動産投資家としてしっかりと認識しておくといいでしょう。

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