地域の景観や治安に悪影響を及ぼすなど、各地で社会問題となっている空き家。国では「空き家再生推進事業」として、その活用や除去に対する経費を支援するなどして対策を推進しています。一方、コロナ禍をきっかけに東京を離れて地方へと移住する人が増える中、投資物件として空き家に着目する動きも見られるようになってきました。

空き家の所有者と空き家を活用したい人をマッチングするプラットフォーム「空き家活用ナビ」を提供する空き家活用株式会社の代表取締役 和田貴充さんに、投資市場における空き家活用のメリットをうかがいました。

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー

目次

  1. 暮らし方や働き方が変化する今こそ空き家の価値を変えられる
  2. コロナで加速した空き家への注目度の高まり
  3. 空き家はいわば「埋蔵不動産」

暮らし方や働き方が変化する今こそ空き家の価値を変えられる

――和田社長は不動産業界で長く経験を積んでこられたそうですね。
24歳で不動産業界に入って以降、住宅分野で経験を積ませていただき、34歳の時に大阪で新築分譲の不動産会社を立ち上げました。

独立にあたって強い思いとしてあったのは、何よりお客様に喜んでいただきたいということ。不動産は一生に一度ともいわれる買い物であるにもかかわらず、お客様本位でないがゆえにお客様にクレームを言わせてしまったり、失敗したと思わせてしまったりする業者も多く、本当に嫌でした。僕はお客様としっかり向き合い喜んでいただくためにはどうすべきかを考えながら仕事がしたかった。

でも、そんなスタンスの不動産会社は自分が知る限りなかったんです。ならば自分で会社を立ち上げようと考えました。先用後利(※)ではないですが、お客様に尽くせば利益は後からついてくるという思いでスタートしました。
※「病気を治すのが先で利は後」を意味する言葉。先に薬を使ってもらい、あとから使用した分の代金を受け取るという販売方式のこと。

――そこから空き家活用の事業を手がけるようになったのはなぜでしょうか。
京セラの創業者である稲盛和夫さんの思考を学ぶ「盛和塾」に参加したことが一つのきっかけです。商売は利益を上げることがもちろん重要ですが、社会のためになる事業をいかに提供できるかも同じように重要です。

盛和塾では、そうしたことを同世代の経営者と共に日々議論していたのですが、38歳の時、その経営者仲間と一緒に長崎の軍艦島に行く機会がありました。海底炭鉱として注目された軍艦島に最初のマンションが建ったのは1916(大正5)年。まだまだコンクリートの建物が珍しかった時代に、当時としては最先端の、東京のど真ん中の街を見るような景色が海の上に生まれたわけです。

しかし、その後石炭が採れなくなり、ご存じのような廃墟となりました。僕が行ったのはちょうど軍艦島が世界文化遺産に選ばれた年でしたが、「これってほんまに文化遺産といえるのか」とモヤモヤした気持ちのまま見学を終えました。

すると、船に乗って帰る時、ある経営者仲間が僕にこう言ったんです。

「お前ら不動産業界の人間が日本中を軍艦島にしようとしているという自覚はあるか」

その言葉に衝撃を受けました。自分が生きていく、家族と暮らしていく、家族を幸せにする、社員を幸せにする。これらはおそらく、事業の中で普通に建物を建てていけば実現できるでしょう。しかし、30年先、40年先、50年先の未来を考えたら、自分が関わった建物がこのような廃墟になってしまうこともあり得る。このまま無秩序にこの事業を続けていいのか、今あるものをもっと活かすべきではないかと考えるようになりました。

一方、自分は商売人でもありますので、その状況を変えるならビジネスで変えたいとも思いました。暮らし方や働き方が変わっていく世の中だからこそ、空き家の価値もきっと変化させることができる。ただ空き家を売買するということではなく、その世界のリーディングカンパニーとなり、大きなマーケットをつくれば、経営者仲間からの問いかけに答えつつ空き家という社会課題をビジネスに変えていくことができるのではないかと考えました。

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー

コロナで加速した空き家への注目度の高まり

――ちょうど国としても空き家対策に乗り出した頃のタイミングでのスタートでしょうか?
それより少し早かったかもしれませんね。

空き家問題というのは重要性が高い半面、緊急性は低い課題であって、さまざまな社会課題の中では先送りされてしまう分野なんです。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大が図らずも一気に空き家活用の気運を高めるきっかけとなりました。

コロナをきっかけにリモートワークが拡大するなど、働き方に対する人々の考え方が大きく変わって、地方での暮らしが見直された。これが大きなきっかけになったと考えています。コロナがなかったら、さらに5年、10年と先送りにされていたでしょう。

――具体的にはどのような事業を展開されているのでしょうか。
まず注力をしているのは、「空き家活用ナビ」というマッチングプラットフォームの提供です。その開発にあたっては、まず空き家調査に力を入れました。

空き家は、「相続はしたけれど今は売る必要も使う必要もないからとりあえず放っておこう」とか、「片づけるのが面倒臭い」とか、兄弟でもめているとか、いろんな課題があってそのまま放置されているケースが非常に多くあります。そうなるとなかなか情報が上がってきません。そこで、まずは関東1都3県と名古屋、大阪にあるそうした物件を自分達の手でローラー作戦によってデータベース化し、その情報を「AKIDAS(アキダス)」という名前で不動産事業者に提供しました。

現在はそのプラットフォームから発展し、クラウドサービス「アキカツCLOUD(クラウド)」として自治体様に使っていただこうとしています。

また、空き家活用ナビカウンターというカウンターサービス、といってもWeb上で相談に乗るスタイルですが、空き家をお持ちの方が何でも相談できるような「よろず相談窓口」を作り、所有者と事業者をつなぐ役割を担っています。

――YouTubeでの発信もされていますよね?
日本全国から寄せられた空き家の情報を紹介していく「ええやん!空き家やんちゃんねる」で動画を配信しています。チャンネル名はサバンナの高橋茂雄さんに命名していただいたんです。

全国に足を運んで空き家の魅力を発信するという無謀な企画なんですけど、やってみたら反響が非常に大きくて、チャンネルを立ち上げて3ヵ月ほどで登録者数が約1万5,000人、動画再生数も総数で130万回を超えました。多くの人が空き家に注目していること、また見たいと思う人が多いということを実感しています。

空き家はいわば「埋蔵不動産」

――投資という側面から見た空き家活用のメリットはどんなところにあるのでしょうか。
先ほどもお話ししたように、コロナ禍によって社会の構造や暮らし方、働き方が変わってきています。また、その変化の中で地方に移住したいと考える人も増えています。その人達が探しているのは売買物件ではなく賃貸物件です。

特に今の時代の流れでいえば、いきなり住むのではなくデュアルライフから入る人が多いでしょう。それならなおさら賃貸物件が必要となります。まず借りてみて、その町に住み続けることができると感じたら買うことにつながるかもしれませんが、それ以前に、最初の入り口である「借りたい」を満たす物件が少な過ぎるんです。つまり、投資用に空き家を購入して賃貸物件として貸せば、そのニーズにしっかり応えることができる。これが一番のメリットです。

地方の空き家はいわば「埋蔵不動産」です。僕は投資家のみなさんに、埋蔵金のようにその存在も価値も知られずに眠っている空き家=埋蔵不動産に投資することで地方を助けてあげてほしいと考えています。

空き家の活用なら、収益を上げながら地域の役に立つことができる。自分の生まれ故郷でもいいですし好きな街でもいいので、どれくらいの賃貸物件があるか、一度投資家のみなさんにぜひ見てほしいです。「こんな物件しかないのか」ときっと思うはずですし、収益物件として「勝てる」要素に満ちていることも感じていただけると思います。

特にキャッシュで軽く始めたい方、いきなり1億円2億円ではなく、まずは1,000万円ぐらいでやってみたいという方は、地方の「自分でも暮らしてみたいかな」と思うようなところに戸建て物件を買ってみることをぜひおすすめしたいです。(後編に続く)

空き家活用株式会社 代表取締役 和田社長 インタビュー
和田貴充(わだ たかみつ)
1976年生まれ。大阪府摂津市出身。20歳で父が他界し事業を継承するも4年で多額の借金を抱え廃業。24歳で不動産業界へ飛び込み、2010年に株式会社オールピース、2015年に空き家活用株式会社を設立。自社が開発した調査アプリケーションを使用し16万件という膨大な空き家データを収集。そのノウハウを活かし、自治体が自ら調査し閲覧・管理ができるアプリケーション「アキカツCLOUD」を提供。YouTube「ええやん空き家やんちゃんねる」では空き家情報を発信し利活用希望者とマッチングを実現。3ヶ月で登録者10,000人超え、現在は総動画再生回数130万回を突破!

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