

【相談】賃料増額請求を行う際には、前回の合意からある程度の年数が経過していることが必要なのでしょうか。
私はマンションの一室を貸し出しています。
長らく賃料を据え置いていたことから、2年前に賃料を増額しました。
しかし、賃料を増額した直後に、周辺で開発工事が決定して、周辺の土地の価格が高騰し、家賃の相場も上がっています。
そこで、先日、私は賃借人に、賃料増額の話を持ち掛けたのですが、賃借人からは、前回の賃料増額からたった2年しか経っていないことから、承諾などできないと言われてしまいました。
賃料を増額する際には、前回の合意からある程度の年数が経過していることが必要なのでしょうか。
なお、賃貸借契約書において、賃料を増額しない等の特約はありません。
【回答】賃料増額請求権を行使するのに、前回の合意から、必ずしも、一定の期間を経過することを要しません。
賃料増額請求権を行使するのに、最後に賃料の額が決められた時点から、必ずしも、一定の期間を経過することを要しません。
賃料増額請求は、①土地建物に対する租税その他の負担の増減、②土地建物の価格の上昇低下その他の経済事情の変動、③近傍同種の建物の賃料と比較、④その他の事情等を考慮して、従前の賃料が、不相当になったことが要件となります。
仮に、最後に賃料の額が決められた時点から、2年程度しか経過していなかったとしても、上記①~④の事情を考慮して、従前の賃料が、不相当になったと認められる場合には、賃料増額請求は認められ得ます。
【解説】
賃料増額請求について
賃貸物件を経営する不動産オーナーの方が、周辺の相場と比べて、自身の物件の賃料が低すぎるのではないかと感じることもあるかと思います。
そのようなとき、賃貸人としては、賃料を増額したいと考えると思いますが、賃料を増額するためには、どのような手続きを取る必要があるのでしょうか。
賃料を増額したいと考える場合には、相手方に対する意思表示によって、行うことができます。
この意思表示は、口頭によって行うこともできますが、後日訴訟になった際に立証を容易にするため、書面を用いて行うことが一般的です。
賃料増額請求権については、借地借家法において、次の通り規定されています。
借地借家法32条1項
土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
賃料増額請求の要件
賃料増減請求は、借地借家法32条1項が定めるとおり、次の点によって、従前の賃料が、不相当になったことが要件とされています。
①土地建物に対する租税その他の負担の増減
②土地建物の価格の上昇低下その他の経済事情の変動
③近傍同種の建物の賃料と比較
④その他の事情
そして、上記の事情が考慮される期間は、最後に賃料の額が決められた時点(※)以降となります。
なお、「④その他の事情」に関しては、個別の賃貸借契約における事情が考慮されます。
たとえば、当初の賃料額決定の際に考慮された当事者間の個人的な事情や、その他、当初の賃料額を決定する際に重要な要素となった事項などが考えられます。
※最後に賃料の額が決められた時点とは、賃料を増額すること、又は、減額することを決めた場合に限られません。当事者間において、上記①~④の事情を考慮して、賃料を据え置く決定をした場合も含みます。
直近合意時点から一定の期間を経過する必要があるか?
最後に賃料の額が決められた時点から、上記①~④の事情が変更するには、通常は、一定の期間の経過を要するとも思えます。
それでは、最後に賃料の額が決められた時点から、ある程度経過しないと、賃料増額請求は認められないのでしょうか。
この点に関して、最高裁平成3年11月29日判決の事案において、賃料増額請求権の行使と一定期間経過の要否が問題となりました。
同判例は、「賃料増額請求権を行使するには、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過していることを要しない」と判断しました。
現に、最高裁昭和36年11月7日判決の事案では、上記①から④の事情を考慮した上で、最後に賃料の額が決められた時点から8か月後になされた再度の増額請求が認められています。
また、東京地裁平成23年5月10日判決の事案でも、最後に賃料の額が決められた時点から9か月後になされた再度の増額請求が認められています。
最後に
本件では、最後に賃料の額が決められた時から2年しか経過していないとのことですが、上記①~④の事情を考慮して、その2年の間に従前の賃料が不相当になったと認められる場合には、賃料増額請求は認められ得ます。
もっとも、通常は、一度、賃料の合意がなされた場合には、ある程度の期間が経過しなければ、従前の賃料が、不相当になったと判断され得る程度に、上記①~④の事情について、変更が生じることは稀と言えるでしょう。
本記事は不動産投資DOJOの転載記事になります。
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