不動産鑑定士とは?依頼すべき3つのタイミングと流れ、報酬を解説
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鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

不動産投資を行っていると状況によっては不動産鑑定士の鑑定が必要になることがあります。そもそも不動産鑑定士は、どんなことをする人なのでしょうか。本稿では、鑑定と査定の違いや依頼の流れを含めて解説します。

不動産鑑定士とは

不動産鑑定士は、土地や建物などの不動産の価値を鑑定する国家資格です。試験に合格すると国土交通省により資格が付与されます。例えば土地の評価をする場合でも実際には売買など取引のルールを知っておく必要があるため、試験では民法や会計学の知識が問われる難関試験の一つです。なお不動産会社が行う査定と不動産鑑定士が行う鑑定は異なります。

不動産会社が行う査定は、宅地建物取引業者(宅建業者)による簡単な評価です。一方、不動産鑑定士の鑑定は、不動産の適正な価格の判断となります。「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき不動産鑑定士だけが評価を行うことが可能です。なお不動産会社の査定は、民間での売買物件だけが対象となります。

しかし不動産鑑定士の鑑定は、民間の不動産取引のほか公示地価や相続税路線価、固定資産税評価額なども対象です。

不動産鑑定士が必要になる3つのタイミング

不動産鑑定士が必要になるのは、主に以下の3つのタイミングです。

土地の相続・贈与があるとき

土地の相続・贈与のときは、親族間で公平に分けることが基本です。例えば特定の親族に不動産を生前贈与する場合は、他の親族に分配する財産額とのバランスを取るべく不動産評価を正確に知らなくてはなりません。相続が始まったら「相続財産をどう分けるか」に関する相続人同士の話し合い(遺産分割協議)を行い、まとまった場合は遺産分割協議書を作ることが必要です。

協議の結果は、相続税の申告につながるので、相続税評価額をもとに不動産を分ける世帯もあります。しかし相続税評価額は、現実の不動産の価値を反映していません。公平に財産を分けるなら適正な不動産の評価が必要です。不動産鑑定士に不動産を鑑定してもらえば公正な不動産の価値が分かるため、相続人同士が納得のいく形で財産を分けやすくなります。

親族間で売買を行うとき

親子や兄弟など親族間で不動産を売買するときは、第三者との取引よりも低い金額で取引されがちです。当事者としては問題ないと感じる人も多いかもしれません。しかし市場価格から乖離しているような低額譲渡を行うと購入した側が「本来の取引額よりも安く購入した分だけ得している」として贈与税が課される可能性があります。結果として親族間のトラブルに発展しかねません。

こういった場合も不動産鑑定士に鑑定を依頼すれば無用な課税を防ぐことができます。

特殊な土地を売却するとき

特殊な土地については、簡単な査定が難しいものです。「形状がいびつ」「臭気や忌みがある」といった不動産の場合、価値が分かりにくいことがあります。逆に地方にある土地でも収益性の高い土地の場合は、簡単な査定をしてしまった結果、不当に安く売ってしまう可能性もあるでしょう。こういった特殊な事情を抱えた土地を適正額で売却するには、不動産鑑定士の手を借りることが必要です。

不動産鑑定士に頼むときの流れ

不動産鑑定士に依頼するときは、次の順に行います。

1.不動産鑑定士の事務所をいくつか探し、見積もりを出してもらう

見積もりを依頼するとき費用とともに鑑定方法を聞いてみるとよいでしょう。鑑定方法が分かれば自分にあった不動産鑑定士を探しやすくなります。なお都道府県別で不動産鑑定士を探したい場合は、「日本不動産鑑定士協会連合会」に記載されている各地の不動産鑑定士協会に問い合わせるとよいでしょう。

2.契約をし、不動産鑑定を申し込む

依頼したい不動産鑑定士を決めたら契約を行い正式に不動産の鑑定を申し込みます。一般的に申し込みの際は、以下の書類が必要です。

  • 不動産の全部事項証明書
  • 公図、地積測量図、実測図
  • 住宅地図
  • 固定資産評価証明書
  • 売買契約書

3.不動産鑑定士が実地調査を行う

実地調査では、土地の現況確認やヒアリング、各自治体(役所や法務局)での調査のほか価格形成要因の分析が行われます。ただし簡易鑑定の場合、現地調査は行われません。なお調査には平均で1~2週間程度かかるといわれています。また鑑定内容を確認したい場合や不安や疑問がある場合は、中間報告を受けることも可能です。

4.鑑定評価書の交付

調査が終了し鑑定作業が完了すると正式な土地の価格を記載した「不動産鑑定評価書」が原則正本1部と副本1部が発行されます。ただし簡易鑑定の場合、発行されるのは不動産鑑定評価書ではなく「不動産調査報告書」です。不動産鑑定評価基準に則った公的な書類は、不動産鑑定評価書だけです。

不動産鑑定士にかかる報酬

不動産鑑定士への報酬は、一般20万~30万円程度かかりますが、実際には不動産鑑定士ごとに報酬基準が異なります。また報酬は、土地の価格に比例する傾向です。評価する土地が高ければ、それだけ報酬も高くなり報酬体系を大きく分けると以下の2つになります。

報酬基準型

土地の種類や価格に応じて算定される価格体系のことです。例えば「借地ならば〇〇万円」「土地の価格が2,000万円までなら△△万円」といった具合に不動産鑑定士が定めた基準に従って報酬を決めます。

積み上げ型

土地の大きさや形状・事情の複雑さの度合いに応じて段階的に料金が加算されていく価格体系のことです。「土地が大きすぎる」「いびつな形など特殊な事情がある」といった土地は、それだけ鑑定作業に時間がかかります。

トラブルを減らしたいなら不動産鑑定士に依頼しよう

不動産投資は、不動産に関する専門的な知識が必要となるため、土地取引に伴いさまざまな不安が生じることも少なくありません。特に重いのが親族間のトラブルです。不動産の価格で相続人同士の意見が対立してしまった場合は、その分協議は長引きます。こういった面倒を避けたり早めに解消したりしたい場合は、不動産鑑定士へ依頼したほうがよいでしょう。

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