資産形成,投資信託
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

国内では、2021年1月末時点で約5,913本の投資信託が販売されており、その種類はさまざまです。教育費や老後資金の準備などを目的に投資信託で長く運用を行う場合は、どのようなファンドを選べばよいのでしょうか。今回は、資産形成に適した投資信託の選び方と押さえたいポイントを解説します。

投資信託で資産形成を行うメリット

投資信託は、複数の投資家から集めた資金を一つにまとめ運用の専門家が株式・債券などで運用を行う金融商品です。運用で得られた利益は、投資金額に応じて投資家に分配される仕組みになっています。投資信託で資産形成を行うメリットは、以下の通りです。

少額から分散投資が可能

投資信託は、1,000円程度から購入できます。なかには100円から購入できる金融機関もあるため、まとまったお金を用意しなくても手元にあるお金で今すぐ投資を始めることが可能です。また投資信託は、少額からさまざまな資産や銘柄に分散投資ができることもメリットの一つ。分散投資とは、値動きの異なる複数の資産や銘柄に投資をすることでリスクを減らす投資方法です。

「株式が値上がりするときに債券は値下がりする」など特定の資産の値下がりを他の資産の値上がりでカバーできるため、リスク軽減につながります。一般的に個人で分散投資を行うには、まとまったお金が必要です。しかし投資信託は複数の投資家から集めたお金を使ってさまざまな資産・銘柄に投資するため、個人でも少額から分散投資が可能となります。

積立投資に対応している

投資信託は、毎月一定額を購入する積立投資に対応しています。一度積み立ての設定をすると、あとは金融機関が自動的に購入してくれるため、時間や手間をかけることなく資産形成に取り組むことができることは大きなメリットです。資産を増やすには、安いときに買って高いときに売ることが必要ですが投資信託の基準価額は日々変動しているため、投資するタイミングを見極めるのは簡単ではありません。

積立投資は、価格が高いときは少量、価格が安いときは大量に購入できるため、購入単価を平準化する効果が期待できます。また資産や地域などを厳選かつ分散した積立投資を長く続けることで結果的に元本割れリスクが低くなる傾向です。

非課税制度が利用できる

投資信託の運用益(売却益、分配金)には、通常20.315%(復興所得税を含む)の税金がかかります。しかし一般NISAやつみたてNISA、iDeCoといった非課税制度を通して購入した投資信託は、運用益に課税されません。利益がそのまま手元に残るため、効率的に資産を増やすことができます。他の金融商品でも非課税制度は利用できますが投資信託は利用できる非課税制度の種類が充実している傾向です。

投資信託を選ぶときのチェックポイント

実際に投資信託を購入する際は、どのようなことに注意してファンドを選べばよいのでしょうか。ここでは、投資信託を選ぶときにチェックしておきたいポイントを紹介します。

インデックスファンドであること

インデックスファンドとは、特定の指数(日経平均株価など)に連動する投資成果を目指して運用される投資信託です。指数の値動きと連動して基準価額が上下するため、投資成果が分かりやすいのが特徴。投資テーマが古くならず市場平均のリターンが得られるので長期保有しやすいメリットもあります。資産形成が目的であれば国内外の株式が投資対象のインデックスファンドを検討するといいでしょう。

購入時手数料

投資信託を購入するときは、販売会社に購入時手数料を支払います。ただし中には購入時手数料が0円(ノーロード)のファンドもあります。コストの負担を減らすためになるべくノーロードのファンドを選びましょう。

信託報酬

信託報酬とは、投資信託の運用・管理をまかなう費用のことで投資家が負担することが必要です。投資信託を保有している間は継続してかかる費用で運用資産から日々差し引かれます。信託報酬は、ファンドによって異なり運用資産の年率0.1~3%程度です。資産形成を目的に長く運用を行う場合は、投資成果に大きな影響を与えるため、なるべく信託報酬が低いファンドを選ぶことが重要になります。

信託報酬は、年率0.5%以下を目安にするといいでしょう。

信託財産留保額・解約手数料

投資信託を解約するときには、ファンドによって信託財産留保額や解約手数料がかかります。コストの負担を減らすために信託財産留保額・解約手数料が無料のファンドを選びましょう。

純資産総額

純資産総額とは、投資信託が運用している資産の時価評価額から負債を差し引いて算出するものでファンドの規模を表します。一般的には、純資産総額が大きいほど経費率を抑えることが可能です。純資産総額が小さすぎるファンドは運用が途中で終了し繰り上げ償還されるリスクがあります。明確な基準はありませんが純資産総額は100億円以上を目安にするといいでしょう。

決算頻度・分配方針

投資信託は、ファンドごとに決算頻度(毎年、毎月など)が決まっており決算ごとに分配金が支払われるファンドもあります。しかし分配金を受け取らずに元本に組み込んで運用を継続することで利益が増幅していく複利効果が期待できるでしょう。また分配金が支払われるファンドは、資産形成には不向きなため、分配方針を確認しておくことが大切です。

償還日

償還日とは、投資信託における運用期間の終了日のことです。償還日が定められているファンドもあれば運用期間が無期限のファンドもあります。資産形成を目的に長く運用を続ける場合は、償還日が無期限のファンドを選びましょう。

選んではいけない投資信託の特徴

国内では、さまざまな種類の投資信託が販売されており中には資産形成に適さないファンドもあります。ここでは、選んではいけない投資信託の特徴を紹介します。

テーマ型の投資信託

テーマ型の投資信託とは、投資対象を特定のテーマに関連する銘柄や業種に絞って運用する投資信託です。話題になっているテーマは投資家の注目を集めますが一定期間を経過するとテーマは古くなってしまうため、長期保有には向いていません。また購入時手数料や信託報酬が高いファンドもあるため、注意が必要です。

毎月分配型の投資信託

毎月分配型の投資信託は、その名の通り分配金が毎月支払われるタイプの投資信託です。毎月分配金がもらえることに魅力を感じる人もいるかもしれませんが複利効果を得られないため、長期の資産形成には向いていません。テーマ型と同じく購入時手数料や信託報酬が高い傾向にあるのもデメリットです。

運用コストが高い投資信託

投資対象が似ている投資信託であっても商品によって運用コストに差があります。特に信託報酬は、長期の運用成果に大きな影響を与えかねません。金融庁の資料によると100万円を投資して信託報酬控除前リターンが4.5%の場合、信託報酬が年率1%違うと20年間で投資成果に約33万円の差が生じます。そのため資産形成が目的の場合は、運用コストが低い投資信託を選ぶことが大切です。

初心者はつみたてNISAの対象商品から選ぶのがおすすめ

「投資信託を選ぶのが難しい」と感じる場合は、つみたてNISAの対象商品から選ぶのがおすすめです。つみたてNISAでは、対象商品に「購入時手数料0円」「頻繁に分配金が支払われない」などの法令上の条件が設けられています。安定的な資産形成に取り組めるように配慮されているため、初心者でも投資信託を選びやすいでしょう。

投資信託で資産形成に取り組もう

投資信託は、少額から購入でき積立投資にも対応しているため、初心者でも投資しやすい金融商品です。つみたてNISAやiDeCoといった非課税制度を利用すればより効率的に資産を増やすことができます。本記事で紹介したポイントに注意して資産形成に適した投資信託を選びましょう。

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