(本記事は、水上克朗氏の著書『50代から老後の2000万円を貯める方法』アチーブメント出版の中から一部を抜粋・編集しています)
相続はプロに任せる!
親が亡くなると、悲しみに浸る間もなく、葬儀や年金、保険の手続き、そして遺産相続も進めていかなければなりません。
「いったい何から手をつけたらいいのか……」と、途方に暮れる方もいるでしょう。
相続に関する情報は書籍やインターネットでさまざまあります。自ら学ぶことは有意義ですが、相続は税理士事務所に依頼することをおすすめします。
税理士に依頼すると報酬も発生しますが、自分で相続税申告をした場合、ミスがあると税務調査の対象になりやすくなります。相続税の計算はプロの税理士でも相続税申告ソフトを使わなければ間違うほど複雑なものです。申告漏れが発生すると追加納税が必要になります。自己申告はリスクが大きいのです。
わたしの場合は、最初は「相続税申告は自力でできるのではないか」と考えていました。我が家にはお金持ちの家庭ほどの財産はありませんし、財産構成もシンプルでFPの知識もありました。
ところが、自分で財産評価をしてみると、両親の相続がほぼ同時に発生したこともあり、わからない点がいくつも出てきました。税理士事務所を探し依頼すると、自分で財産評価した際は気づかなかった制度も多く、評価額が下がり、最終的に基礎控除の範囲内に収まり、相続税はかかりませんでした。なお、基礎控除の範囲に収まっても「小規模宅地等の特例」などを適用する場合は申告が必要でした。
遺産分割も公平におこなうことができ、心配していた兄弟間のもめごとも一切なしです。相続税の申告はプロの税理士に任せるべき、と感じました。
相続税申告を依頼する税理士を選ぶポイント
①相続専門もしくは相続に強い税理士かどうか
税理士といっても医者同様に専門分野が分かれています。相続に強い税理士かどうかは、「直近1年間の相続税申告件数実績」を参考にしてください。「相談実績」を謳う事務所も多いのですが、「申告実績」が重要です。年間50件以上、職員1人あたり年間5件以上であれば相続税に強いと考えてよいでしょう。
②相続税の税務調査率は何%か
税務調査に強いかどうかは、申告実績だけではなく税務調査率(税務署に申告書を提出したあと税務調査がどれだけ入ったか)に表れます。一般的に税務調査を受ける確率は10%(国税庁統計データ)と言われています。事務所に確認して、数値が低いところを選びましょう。
③税務調査対策として書面添付制度を導入しているか
相続税申告では「この内容は正しいものです」と、税務署へ説明する書類を添付することができる制度があります。メリットとして税務署からの信頼が高まり、税務調査が入る確率が減ります。某税理士事務所の場合は書面添付制度を利用することによって、税務調査率が1%です。ちなみに、わたしの場合は、税理士事務所に書面添付制度を依頼しました。
④成功報酬制になっていないか
インターネットで多くの税理士事務所が相続税申告の報酬を開示していますが、通常報酬に加えて追加報酬に「成功報酬」という名目を設けているところは要注意です。
相続税申告業務の中でも、「土地の評価(広大地、市街、山林、不動産鑑定)」「名義預金・名義株の帰属判断」といった専門性が問われる項目がありますが、単なる判定だけで本来であれば税理士として当たり前の仕事であり、成功報酬という考え方は馴染まないものです。
法律に違反しているものではありませんが、思わぬ負担増にならないように、契約前にしっかり確認しておくことが大切です。
なお、税理士の報酬は、大半の税理士事務所が遺産総額の0・5%~1%の間で、相続税申告の税理士報酬を設定しています。遺産総額が1億円の人であれば50万円~ 100万円です。これより高い場合には相場よりも高額であるといえます。
1957年山梨県生まれ。慶応義塾大学卒業後に大手金融機関で40年間勤務し、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、二度の会社合併を経験したが「会社一筋一社の人生」を貫く。56歳のときに執行役員待遇から社外出向となり、収入が激減。同じタイミングで家族の病気が悪化、実家の父親は認知症で2年半の介護状態。母親も老老介護で疲れ果て胃がんで3ヵ月の余命宣告。両親が立て続けに他界し、ダブル相続にも直面した。ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、自身のライフプランを見直して老後資金を捻出。専門雑誌のコラムや講演活動で50代から同世代のリタイア世代にエールを送る。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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