50代から老後の2000万円を貯める方法
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(本記事は、水上克朗氏の著書『50代から老後の2000万円を貯める方法』アチーブメント出版の中から一部を抜粋・編集しています)

「退職金」で安心を手に入れる①
退職金はいくらもらえる?

「退職金があるから老後はなんとかなる」

このように安心している人もいるかもしれません。厚生労働省(※1)によると、2018年に大卒の定年退職者に企業が支払った退職金の平均額は1788万円でした。ちなみに、2012年においては1941万円もありました。1997年から比較すると、20年間で1083万円減です。また、中小企業のモデル退職金を見ると、定年まで勤めた場合の退職金は、大学卒で1203万円でした(※2)。退職金に関する調査は経団連、中央労働委員会などさまざまな機関がおこなっており、金額にバラつきがあります。

勤務している会社の就業規則や退職規定を確認してみましょう。退職金がある場合には、明示されているはずです。また、社内制度の概要を説明したハンドブックがあればそちらを見てみましょう。それでも確認できない場合は、人事部・総務部など会社労務関連の部署に問い合わせてみましょう。

雇用延長が義務付けられるなど、企業の負担は大幅に増えています。社員の昇給を抑制したり、退職金を減額しないと制度を維持できなくなっているというのが実態です。これからますます退職金額が減っていくと予想されます。少しでも有効活用するためには工夫が必要です。

会社から支給される退職金は通常、一時金として一括で受け取ります。ただ、企業年金や厚生年金基金は「年金形式」や「半分は一時金でもう半分は年金形式」など選択できるケースもあります。税金のかかり方が違うので、もらい方は一時金のほうがお得です。詳しくは次項で説明します。

※1 厚生労働省「平成30年就労条件総合調査結果の概況」
※2 平成30年「中小企業の賃金・退職金事情」調査結果の概要(東京都産業労働局)

「退職金」で安心を手に入れる②
退職金は「一時金受け取り」で手取り増

「大きな金額を一括で受け取るのは不安だ」

「年金にしてもらったほうが預金しておくより利率も高いし、増えそうだ」

こんなふうに思って、退職金を年金受け取りにすると、一時金のときに非課税になる枠(退職所得控除枠)がまったく使えなくなってしまいます。つまり、大きな収入に対して、大きな税金がかかってしまうため、かえって損をしてしまいます。具体例を見ていきましょう。

一時金受け取りの場合

大卒から38年間勤務したとすると、非課税枠は2060万円〔=800万円+70万円×18年(38年−20年)〕。退職金2000万円と仮定すると、税金は一銭もかからず、全額手取りとなります。

なお、退職前に、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、一括で受け取る際の退職所得控除が適用されず、一律20・42%という高い税率で源泉徴収されるので注意が必要です。

年金受け取りの場合

同じ2000万円を10年間の分割(年率2%の年額222万円の年金方式)として受け取ると、通常の年金収入に222万円が加算されることになります。これだけでも、年金の「公的年金等控除」という非課税枠(65歳未満で年金額130万円未満なら60万円、65歳以上で年金額330万円未満なら110万円)を超えてしまいます

また、通常の年金と退職金を年金形式で受け取った合算が雑所得となり、所得税と住民税がかかります。

さらに、年金受け取りのあいだ、国民健康保険料・介護保険料などの社会保険料までアップします。

なお、所得が多くなるため、金額によっては医療費や介護保険について、「現役並み所得者」として窓口負担や利用料が増える可能性があります。多少の運用利回りで元本は増えるでしょうが、基本的には、一時金受け取りのほうがお得です。しっかりと比較して受け取り方を選択しましょう。

50代から老後の2000万円を貯める方法
水上克朗
ファイナンシャルプランナー
1957年山梨県生まれ。慶応義塾大学卒業後に大手金融機関で40年間勤務し、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、二度の会社合併を経験したが「会社一筋一社の人生」を貫く。56歳のときに執行役員待遇から社外出向となり、収入が激減。同じタイミングで家族の病気が悪化、実家の父親は認知症で2年半の介護状態。母親も老老介護で疲れ果て胃がんで3ヵ月の余命宣告。両親が立て続けに他界し、ダブル相続にも直面した。ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、自身のライフプランを見直して老後資金を捻出。専門雑誌のコラムや講演活動で50代から同世代のリタイア世代にエールを送る。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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