不動産投資の収入と経費を深く理解しよう こんな考え方だとFIREはムリ
(画像=MonsterZtudio/stock.adobe.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

不動産投資の収入と経費で勘違いをしてしまうと「思ったように儲からない!」という結果になりかねません。ここでは不動産投資で本格的な収入確保を目指す人向けに「収入と経費のよくある勘違い」についてお話していきます。

要注意!不動産投資の収入の根本的なよくある勘違い

不動産投資の収入のよくある勘違いは、家賃収入の額面である表面利回りをもとに経営の善し悪しを考えてしまうというものです。この勘違いをされている人は「それなりに家賃収入はあるはずなのに最終的なキャッシュフローや利益が増えない……」と感じやすいのではないでしょうか。

表面利回りがいくら高くても、純利回りが高くなければ不動産投資で利益を出すことはできません。純利回りとは表面利回りから諸経費・金利支払い・税金を差し引いたものです。
※金利支払いと税金を差し引いた利益を「正味利益」と解説する専門家もいます。

この純利回りはキャッシュフローや売却時の含み益などの源泉になります。源泉がなければ儲けようがありません。物件購入時には「純利回りが出せる物件なのか」を必ずチェックしましょう。ご自身で純利回りが出せない場合は不動産会社に「純利回りの概算はどれくらいですか」と確認してみましょう。

不動産投資の収入はキャッシュフローだけではない

もうひとつの不動産投資の収入に関するよくある勘違いは、「不動産投資で儲けること=キャッシュフローを出すこと」と思い込んでしまうことです。この考え方だと、節税効果が薄れてキャッシュフローが悪化してきたら「物件を即売却する」という判断になりやすいです。

しかし、不動産投資の収入はほかにも売却時の含み益などもあります。この点についてロングセラー『Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて』の著者である玉川陽介さんも「賃料から得られるキャッシュフローだけが不動産投資の利益ではありません。一方、物件の売却時には非常に大きな現金が手元に残る仕組みになっています。」 と解説しています。

不動産投資では、キャッシュフロー、売却時の含み益、節税効果などを複合的に見ながら、物件の売却や保有継続を判断するのが賢明です。このことを知った上で不動産投資をすることで誤った タイミングでの売却を避けられます。

FIREを目指す人は要注意!不動産投資の経費の根本的なよくある勘違い

次に不動産投資の経費についてです。よくある勘違いは「なるべく多くの経費を積み上げて赤字申告にしなければならない」というものです。

不動産投資の目的が一時的に所得税を抑えることだけであれば、この考えもアリなのかもしれません。しかし、今後も融資を受けながら経営規模を拡大していくこと(=物件数を増やすこと)を目指すなら、黒字申告に徹して資産を着実に増やすのが大事です。

金融機関から見たとき、赤字申告は貸倒れリスク以外の何ものでもありません。そのため、赤字の不動産投資家に積極的に融資をしたいと考える金融機関はほぼ皆無のはずです。もし赤字申告でも融資を受けられるとしたら、それは個人の属性(収入や社会的信用力)に依存した融資と考えられます。これでは個人の融資枠を超えたら規模拡大が止まりかねません。

この黒字申告の大切さについて『現役融資担当者がかたる 最強の不動産投資法』の著者である河津桜生さんは「納税額が減っても融資の道が閉ざされてしまったら元も子もありません」と述べています。

とくに経営規模を着実に拡大して「FIREや不労所得生活を実現したい」という人は、黒字申告しやすい物件を選ぶとともに「削れる経費は削る」という発想が大事になってきます。

不動産投資の経費の項目別のよくある勘違い

不動産投資の運用中に計上できる経費には次の項目があります。

・管理費(=管理委託手数料)
・賃貸募集費用
・原状回復費用
・雑費
・税金(登録免許税、不動産取得税、固定資産税など)
・ローン金利の支払い
・減価償却費 など

このうち勘違いしやすい不動産投資の経費項目は「管理費」「雑費」「ローン金利」です。

・管理会社は変更が可能なケースも多い
管理費は管理会社に業務(入居者管理や物件管理など)をアウトソースする際に毎月支払うものです。この管理費のよくある勘違いとしては物件購入時に仲介してくれた不動産会社の管理部門(またはグループの管理会社)に委託しなければならないというものです。

しかし実際にはサブリース契約との兼ね合いなどのくくりがなければ、別の管理会社に委託することも可能です。管理費の一般的な相場は5%くらいと言われます。もし現在依頼しようとしている管理会社の管理費が割高な場合は、管理会社を変更して経費削減するのも一案です。

ただ管理費がいくら安くても管理の質が悪ければ、入居者満足度が下って結果的に空室リスクが高まりかねません。そのため管理会社の決定・変更は慎重に行うのが基本です。

・不動産投資に直接関係のある雑費しか計上できない
不動産投資の雑費のよくある勘違いとしては、旅行や物品購入などの費用を自由に計上して赤字にすることで給与所得などの所得税を圧縮できるというものです。しかし、経費計上できる雑費はあくまでも不動産投資に直接関係ある経費のみです。

たとえば不動産投資に直接関係ない一般的な書籍や雑誌の購入費を経費計上する、視察と称して旅行代を経費計上するといったことは確定申告の否認リスクがあります。

「個人事業主なら税務調査(実地調査)はあまり行われない」と思い込んでいる人もいらっしゃるかもしれません。ただ実際には、税務署などによる申告所得税の実地調査は7万4,000件も行われています(2018年事務年度/うち申告漏れ件数6万1,000件)。実地調査とは高額または悪質な不正計算が見込まれる事案のことです。申告所得税の実地調査の相当数が個人事業主を対象にしているものと考えられます。

・ローン金利が減ったら即売却ではない
ローンの支払いのうち、元本の返済は経費計上できませんが、金利支払い分は経費計上できます。 ローン返済と金利の関係は、返済が進んで金利の負担が少なくなると、計上できる経費が少なくなる(=キャッシュフローが悪化する )というものです。

勘違いしやすいのは、このキャッシュフローが悪化した部分だけを見て「長期保有は非 効率だ」と思い込み売却に走ってしまうことです。確かに金利の支払い分は徐々に減っていくかもしれませんが、元本の返済が進むことで残債が減るペースが速まります。それにより、含み益や所有する資産が積み上げやすくなる点にも注目しましょう。

目的があいまいだと中途半端な結果になりやすい

ここでは不動産投資の収入と経費のよくある勘違いをテーマにお話してきました。とくに強調したいのは経費の根本的なよくある勘違いの部分です。不動産投資には赤字申告にすることで赤字分をほかの所得と損益通算して、所得税を節税できる効果もあります。

一方でムダな経費を強引に積み上げて赤字にしても、持続的に規模拡大をしていくのは難しいでしょう。ここで大事なことは「何のために不動産投資をするのか」の軸をきっちり固めることです。

あくまでも一時的な所得税節税が目的なら、赤字申告にこだわるのもよいでしょう。また、FIREや不労所得生活を実現したいなら黒字決算が鉄則です。当然ながら、黒字決算によって所得が増えれば所得税も増えます。

もっとも避けたいのは「所得税の節税もしたいしFIREも叶えたい」というような、どっちつかずのスタンスです。これでは、どちらも中途半端な結果になってしまう可能性が高いです。 今一度、不動産投資の目的を明確化してみましょう。

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