不動産取得時に生じる税金とは?税金の種類や計算方法・軽減措置について解説
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菊原浩司
菊原浩司
一種証券外務員資格保有、管理業務主任者 お金の不安のない生活をおくるにはマネープランを作ることが有効です。マイホームの取得や養育費の準備、老後資金の確保といった大きなお金の問題に対処するには、資産運用の導入や各種保険を利用したリスクへの備えが必要となっています。日常生活では知る機会の少ないこれらの知識・情報について、分かりやすく解説していきます。

投資用物件を取得して不動産投資を行う場合、物件の購入時や所有、維持といったタイミングでさまざまな税金が生じます。しかしどのような税金が課されるのか分からず不動産投資に二の足を踏んでいる方もいるのではないでしょうか。物件取得時の税金は、実際の投資利回り(実質利回り)を算出するうえで重要な要素です。

本記事では、物件取得時の税金の種類や課税額の計算方法および軽減措置について解説します。

不動産投資の利回りについて

投資用物件を取得する際は、物件の収益性を十分に比較・検討することが必要です。一般的に収益率を比較するための指標として「表面利回り」が用いられています。表面利回りは、以下のように想定される賃料収入を物件の取得価格で割ったもので算出することが可能です。

  • 表面利回り(%)=想定される年間の家賃収入÷物件の取得価格

しかし実際の不動産投資では、賃料のすべてが収入になるわけではありません。例えば物件の管理・修繕費や入居者を探すための広告費、不動産仲介会社への仲介費などさまざまな必要経費が発生します。また物件の取得価格も額面そのままで購入できるわけではありません。例えば不動産投資でローンを利用する場合は、金融機関への事務手数料などの諸経費が必要です。

さらに物件を取得して不動産登記を司法書士へ依頼する場合は、司法書士報酬や登録免許税なども加算されます。そのため投資用物件の収益性をより正確に見極めるには、表面利回りに各種必要経費を加えた「実質利回り」によって評価を行うことが必要です。

  • 実質利回り(%):(想定される年間の家賃収入-不動産投資の必要経費)÷(物件の取得価格+取得にかかわる諸費用・税金)

しかし不動産投資の必要経費は、オーナーの投資戦略や投資用物件の状況で大きく変動するため、一概に金額を求めることができません。例えばオーナーが早く入居者を得たい場合は、広告宣伝費や仲介費を高めに設定することもあるでしょう。また取得物件の設備が老朽化していたり時代遅れとなっていたりする場合は、設備の修繕・更新費用が必要かもしれません。

ただし取得時の税金に関しては、負担額がある程度定まっているため、実質利回りの計算時に考慮しやすいのが特徴です。

不動産投資をはじめる際に生じる税金とは?

不動産を購入した際の税金は、主に「印紙税」「登録免許税」「不動産取得税」の3つです。それぞれに以下のタイミングで課税されます。

1.印紙税

印紙税は、一定の金額を超える契約書を作成した場合に課税される税金です。不動産投資では、主に土地・建物の売買契約書や仮契約書、アパートローンを利用する場合の金銭消費貸借契約書が対象となります。

2.登録免許税

投資用物件を購入し当該土地・建物への登記を行う際に納付する税金です。登録免許税は、以下のようなときにかかります。

  • 土地を購入する場合(所有権移転登記)
  • アパートローンの利用で投資用物件を担保として差し入れる場合(抵当権設定登記)
  • 建物を購入する場合(所有権保存登記など)

例えばアパートローンを組んで土地建物を購入する場合は、上記すべての登記が必要でそれぞれに登録免許税が必要です。

3.不動産取得税

不動産取得税は、購入または贈与など相続以外の方法で不動産を取得した際に一度だけ課税される税金です。物件の取得から約半年後に納税通知書が届くため、それをもとに原則一括で納税を行います。

不動産取得にかかわる税金は、不動産の価値に連動するものもあります。物件価格が高くなると税金が高額になりやすいため、資金不足とならないように税金の種類や課税されるタイミング、税額の計算方法、軽減措置などをしっかりと把握しておきましょう。

不動産取得時に生じる税額の計算方法と軽減措置について

不動産取得時における3つの税金には、それぞれに計算方法と軽減措置が設定されています。しかし軽減期間が定められているものもあるため、投資用物件の購入を計画されている方は、軽減措置の期限切れに注意しましょう。

印紙税の税額の計算方法と軽減措置

印紙税は、土地の売買や建物の建設に関する契約書であれば売買金額、アパートローンなどの金銭消費貸借契約では融資額で税額が異なります。例えば不動産売買契約書の印紙税を一部抜粋すると以下の通りです。

売買契約金額本則税率軽減後税率
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5000万円超1億円以下6万円3万円
1億円超5億円以下10万円6万円

引用:国税庁から一部抜粋

軽減措置として2022年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」と「建設工事請負契約書」の印紙税は本来納める税額から50%軽減されます。

登録免許税の税額の計算方法と軽減措置

登録免許税の税額は、投資用物件の課税標準額に一定の税率を乗じて税額を算出します。基本的に課税標準額は、自治体の固定資産税台帳に記載されている固定資産税評価額と同額です。中古物件の場合は、売主に確認することで把握することができます。しかし新築の場合は、固定資産税評価額が決まっていないため、不動産会社などに周辺相場を教えてもらうことで概算を知ることが可能です。

登録免許税の税率は、登記の種類によって異なります。投資用物件取得に関する税率は、以下の通りです。

土地を購入する場合
(所有権移転登記)
本則2%
軽減税率1.5%(2023年3月31日まで)
新築の建物を購入する場合
(住宅用家屋所有権保存登記)
本則0.4%
軽減税率0.15%(2022年3月31日まで)※自己居住のみ
中古の建物を購入する場合
(住宅用家屋所有権移転登記)
本則2%
軽減税率0.3%(2022年3月31日まで)※自己居住のみ
投資用物件に担保設定する場合
(抵当権設定登記)
本則0.4%
※担保設定の場合は固定資産税評価額ではなく融資額に税率を乗じて税額を算出
軽減税率0.1%(2022年3月31日まで)※自己居住のみ

登録免許税の軽減措置は、土地について2023年3月31日までに売買により登記を行う場合、土地に関する税率が「2%→1.5%」に減額されます。建物の取得と担保権設定に関しても軽減措置がありますが自己居住の場合のみに適用されるため、投資用物件では利用することができません。

不動産取得税の税額の計算方法と軽減措置

不動産取得税も固定資産税評価額に一定の税率を乗じて税額を算出します。不動産取得税の居住用建物と土地に対する本来の税率は4%です。しかし2024年3月31日までは、3%とする税率の特例を受けることができます。不動産取得税の軽減措置は、土地と居住用建物に関するものがありますが居住用建物の軽減措置は、自己居住が適用要件です。

そのため投資用物件の場合は、土地の評価額を50%減とする「住宅用地・商業地等の特例」のみを利用することができます。

不動産投資をはじめる際は必要経費・取得時の諸費用も含めた「実質利回り」で物件を比較・検討

投資用物件の実力を見極めるには、表面利回りだけでなくより精度の高い実質利回りでも評価を行うことが重要です。しかし不動産投資の必要経費や諸費用は、オーナーの経営方針などによってその額が変動する個別性の高いものが多くなっています。簡単に金額を算出できない恐れがありますが不動産取得時の税金は、計算方法が定められており実質利回りの計算に組み込みやすい費用です。

また一般的に不動産の購入は、高額となるため、不動産取得時の税金も比較的高額になりやすい点は注意しましょう。例えば新築の取得価格3,000万円(固定資産税評価額を建物1,000万円・土地1,000万円)の物件をアパートローン2,000万円・自己資金1,000万円で購入した場合の取得時の税金は、以下の通りです。

印紙税

・売買契約書2万円×50%=1万円
・金銭消費貸借契約書2万円
印紙税合計:3万円

登録免許税

・土地1,000万円×1.5%=15万円
・新築建物(所有権保存登記)1,000万円×0.4%=4万円
・アパートローンの担保設定(抵当権設定登記)2,000万円×0.4%=8万円
登録免許税合計:27万円

不動産取得税

・土地1,000万円×50%×3%=15万円
・新築建物1,000万円×3%=30万円
不動産取得税合計:45万円

取得時の税金は、合計で約75万円となるため、ある程度まとまった資金を用意しておくことが必要です。投資用物件購入時は、一時的に手持ち資金が減少してしまうため、納税に備えて資金繰りに余裕を持たせられるような計画を立てておきましょう。

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