日本の人口減少と少子高齢化は凄まじい勢いで進んでおり、それに伴って経済成長は鈍化していきます。このような閉塞感が漂う日本から、著しい経済成長を遂げている東南アジア諸国へ出ていく日本人は少なくありません。
移住ではなく、1年のうち数ヵ月間どこかに移り住むことを「ロングステイ」と言います。以前は、リタイアメント後の生活拠点を東南アジア諸国に移すケースが多かったですが、最近はその目的が多様化しています。特に富裕層が日本からアジア各国へ移るケースが増えています。その実態を見ていきましょう。
海外移住の現状
外務省が今年発表した「海外在留邦人数調査統計」によれば、2018年10月31日現在の海外に住む日本人は139万人と過去最高を更新しています。
【国(地域)別在留邦人数推計上位50位推移】一部抜粋
(出典:外務省 海外在留邦人数調査統計)
※各年10月1日の数値/単位:人
最近3年間の動きを見るとタイやマレーシア、台湾、ベトナムといった東南アジアへの移住が増えていることがわかります。
移住目的の多様化 教育移住
前述のとおり、今まではリタイアメント後の生活基盤を物価の安い海外に移すという目的が主流でしたが、最近は子供の教育や介護といった目的で海外へ移り住む日本人が増えています。
世界の富裕層の間では新たな教育の場所としてマレーシアが注目されており、日本の子育て世代も欧米より安いコストで子どもに優れた教育を受けさせようとしています。マレーシアは、リタイアメント後の生活拠点として不動の1位ですが、近年は国際教育のハブとしても注目されています。もともとマレー系や中華系、インド系などの多民族国家で、以前はイギリスの植民地でもあったので、英語も広く使われています。そのような環境があることに加え、マレーシア政府自体も自国を「教育のハブ」にしようとしているのです。
ジョホールバルでは国家主導の都市開発「イスカンダル計画」が進んでおり、そこに教育特区を作って世界各国から名門校を誘致しています。
2012年には英国の名門校マルボロカレッジのマレーシア分校が開校し、世界各国から富裕層の子弟を集めています。国籍はさまざまであり、多様性とクロスカルチャーを自然に学ぶことができる環境です。
幼稚園から高校までの一貫教育で、カリキュラムはイギリス本校と同等、さらに中国語やマレー語なども選択できます。90エーカー(東京ドーム6個分)の広大な土地に各種スポーツ施設もあり、その規模は日本では味わうことはできないでしょう。
日本人が自国を脱出して海外の教育機関に子どもを入れる理由は、日本の教育制度にリスクを感じているからです。「日本の偏差値重視、暗記重視の教育だけでは世界で通用しない」と思っている親たちが教育移住を始めているのです。
移住目的の多様化 介護移住
最近では「介護移住」も増えています。特に、リタイアメント世代が自分の親の介護をマレーシアで行うケースが多いです。マレーシアでMM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)という10年間有効なビザを取得し、リタイアメント世代とその親世代が一緒にロングステイします。
マレーシアの気候は穏やかで高齢者への負担が少なく、マレーシア人も高齢者に優しい気質を持っています。また、マレーシアでは費用も安く抑えることができます。たとえば、日本で介護施設入居代とおむつ代で月額約35万円かかっていたものが、マレーシアでは約10万円で済みます。もちろん日本の介護保険制度は使えませんが、それでも経済的負担はかなり軽減されるでしょう。
さらに、マレーシアの銀行預金の利率は日本よりもはるかに高く、1年定期で3%台、5年定期では4%台です。もし1,000万円を5年定期に預けたら、毎年40万円の利息を得られます。これは、ロングステイでの生活費の約2ヵ月分です。今のところ利息に税金はかからないので、40万円がそのまま手残りとなります。
まとめ
ここまで、主にマレーシアでの移住についてお伝えしてきました。リタイアメント後の生活だけでなく、教育や介護を目的としてマレーシアに移住する人も増えているのは、グローバル化が進んで「日本だけが住まいではない」という新たな視点を持つ人が増えているからでしょう。日本の良さも感じながら、1年の半分は日本、半分は海外といった生活も、何にも束縛されない生き方として、一考の余地があるのではないでしょうか。
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