相続,賃貸物件,遺産分割
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

賃貸物件の持ち主が亡くなったあとに発生した賃料や必要経費は、遺産分割が完了するまで「相続人全員の共有状態」とみなされます。また相続人全員が不動産所得の確定申告をしなくてはなりません。今回は、未分割の賃貸物件の確定申告について解説します。

賃貸物件の遺産分割が終わらない間は「相続人の共有物」

相続財産に賃貸物件があり、かつ遺言書で承継者の指定がされていないのであれば遺産分割は早急に進めるのが理想です。なぜなら相続人に余計な申告の手間がかかるからです。遺産分割が終わらない間、賃貸物件は「相続人の共有物」として扱われ相続人全員が所得税や相続税の申告を行わなくてはなりません。

いずれも分割が確定すれば賃貸物件を相続した人だけの手間になりますが、共有状態のときの確定申告で納税しているなら更正の請求をする必要があります。相続税については多くのメディアが取り上げていることもあり比較的気づきやすいのですが、所得税は盲点になりやすいのが現実です。そのため各相続人は相続税だけでなく所得税の確定申告にも意識を向けなくてはなりません。

未分割物件で行うべき所得税の確定申告は2つ

未分割の賃貸物件について各相続人は以下の2つの確定申告を行わなくてはなりません。

準確定申告

原則として被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日の間に確定した不動産所得の申告が必要です。死亡日から4ヵ月以内に被相続人の死亡時における住所地の税務署に申告します。

通常の確定申告

被相続人が死亡した日の翌日から12月31日までの不動産所得を申告します。その年の翌年3月15日(土日・祝日になったときはその次の平日が期限。2019年分は2020年4月16日)までに相続人それぞれの住所地の税務署に申告。

両者は「相続人全員が行う」という点で同じですが、意義が違います。準確定申告はあくまでも被相続人名義で行い、相続人は被相続人の代理でしかありません。一方、相続人死亡後の確定申告については、各相続人の名義で行います。

遺産分割が終わらない賃貸物件の確定申告

遺産分割が終わらない中で賃貸物件の所得税の確定申告を行うならば以下の点に注意しましょう。

準確定申告は「被相続人の不動産所得」として行う

被相続人の生前に発生・確定した賃料や必要経費はすべて被相続人に帰属するため、準確定申告は「被相続人1人分」として行います。後ほど説明する被相続人死亡後の不動産所得の計算とは異なり法定相続分による按分は必要ありません。

被相続人死亡後の不動産所得は法定相続分による按分が必要

「遺産分割が完了しない」つまり「未分割」の状態での不動産所得は、法律上「法定相続人全員の共有状態になっている」と考えます。つまり不動産所得のうち法定相続に応じた分が相続人それぞれに帰属するわけです。そのため総収入金額・必要経費の両方を法定相続分で按分したうえで不動産所得額を算出し法定相続人が自分の所得として自ら確定申告します。

法定相続分とは、民法で定められた相続分のことです。遺産分割時の相続割合の指標として用いられますが、税金でも使われます。法定相続分は配偶者以外の相続人の順位に応じて以下のように定められています。

・配偶者と子どもが相続人(第1順位)
配偶者が2分の1、子どもが2分の1(複数の子どもがいるときは2分の1を子どもの人数で按分)

・配偶者と両親または祖父母が相続人(第2順位)
配偶者が3分の2、両親または祖父母が3分の1(父母がともに相続人ならば父6分の1、母6分の1)

・配偶者と兄弟姉妹が相続人(第3順位)
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数の兄弟姉妹がいるときは4分の1をその人数で按分)

被相続人の青色申告は引き継げないので注意

世帯によっては被相続人が生前青色申告をしていたところもあるでしょう。こういったとき相続人は青色申告ではなく白色申告になります。青色申告をしていた相続人の賃貸物件を相続しても青色申告のメリットまでは引き継げません。青色申告と白色申告には次の違いがあります。

【青色申告】
・不動産所得は青色申告決算書に記載する
・10万円か65万円を青色申告特別控除として所得額から差し引ける
・損失の繰越控除ができる
・30万円未満の減価償却資産を一度に必要経費に計上できる

【白色申告】
・不動産所得は収支内訳書に記載する
・青色申告特別控除は使えない
・損失の繰越控除はできない
・10万円未満でないと減価償却資産は一度に必要経費にできない(10万円以上はいったん資産計上したあと、少しずつ減価償却を行っていく)

仮に被相続人の準確定申告で繰越損失が発生していてもそれを相続人の不動産所得の確定申告で使うことはできません。相続人が青色申告をしたいなら自ら青色申告の承認申請書を提出する必要があります。

確定申告する対象範囲が被らないように注意

申告の対象範囲は、被相続人の準確定申告と法定相続人の確定申告で異なります。準確定申告はあくまでも被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までに確定した総収入金額と必要経費が対象です。一方、法定相続人の確定申告は被相続人の死亡の日翌日以後からその年の12月31日までの分が対象になるため、申告する範囲が被らないようにしましょう。

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