新型コロナウイルスの影響は、生命保険業界にもおよんでいます。対面での営業の回避を余儀なくされ、既存顧客へのフォローもままならない状況が数ヵ月続いた保険会社がある一方で、業績を伸ばしたのがネット生保と呼ばれる「ネットで完結する」保険会社でした。
ライフネット生命は新規契約数が急増した
契約から保険金の支払いまで、すべてネットで完結できるネット生保の勢いは、コロナ禍以降とどまるところを知りません。
ライフネット生命保険株式会社が毎月5営業日目に開示している月次業績速報から、コロナ禍におけるネット生保の強さがうかがえます。
2020年4月の同社の新規契約数は前年同月の約2倍に上りました。新契約金額は前年同月が297億6,400万円だったのに対し、2020年4月は693億2,600万円と2倍以上に増加しています。
厳しい状況にある大手生保
一方で、苦戦を強いられているのが大手の生命保険会社です。日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命の4大生保と呼ばれる大手生命保険会社すべての保険料等収入が減少していることが、各社の2020年3月期決算によって判明しました。
これは大手の生命保険会社は顧客と対面しての保険商品の販売を前提としていたことが理由と考えられます。
ネットとリアルの境目なく。大手生保はネット生保を凌駕するのか
このような状況を受けて、大手生保はこれまでとは異なる戦略に乗り出しています。
対面営業を主とする生命保険会社では、契約内容の確認や個人情報の変更、保険金の請求など、新規保険契約以外の部分しかネットに対応していないのが現状です。
ところが第一生命は今年度中に、明治安田生命は来春をめどにオンラインでの保険販売をスタートするという報道もあり、ネット生保市場の変化が予期されます。
リアルを主戦場にしていた生命保険会社がネット販売に踏み切ることで、今後はネット生保各社が苦戦を強いられるようになるかもしれません。
ますます厳しくなる保険業界、今後はどうなる
人口減少で少ないパイを奪い合うようになる未来がすぐそばまで来ている保険業界。業態に関係なく、あらゆるチャネルを駆使して新規契約を確保していかなければ、企業の存続も難しくなっていくでしょう。
新型コロナウイルスは、もしかすると生命保険業界全体にプラスの影響を与えてくれるかもしれません。ネット生保は非対面販売のメリットを生かし、大手生保は大手の安心感をもって今後の生活に不安を感じている人のニーズにマッチする商品を提案したり、ネット販売を契機に新商品を展開したりと、これまでにない方法で業績を伸ばす可能性もあります。
まさに群雄割拠の戦国時代に突入する、生命保険業界の動向に要注目です。
【あなたにオススメ】
・賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
・空き家の活用促進にも効果あり。浸透するデュアルライフとは
・次世代のスタンダードになるか?サブスクリプション型賃貸住宅とは
・時間軸を変えることでマネタイズ!タイムシェアという選択
・不動産投資の「2022年問題」とは?土地オーナーが知っておくべき知識