(本記事は、内藤 忍氏の著書『初めての人のための資産運用ガイド』=ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020年11月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
預金・保険・年金は安全ではなく、実は危険
▶︎預金・保険・年金は、安全と思われがちだが、実はリスクが高い
▶︎円の価値が下がれば、円資産の価値も下がってしまう
▶︎円安か円高か、予想がつかないなら、半分ずつ保有するのが合理的
預金・保険・年金はすべて国債で運用されている
堅実な資産形成を説いている人の中には、「預金・保険・年金で資産形成するべき!
株式や外貨投資といったリスクの高い資産運用は避けるべきだ」という意見の人がいます。現実、日本人の個人金融資産は、預貯金と年金、保険などに全体の8割以上が偏っています。
これは一見リスクがない状態だと思うかもしれません。しかし、このような資産形成の方法には2つの問題があります。
問題点①資産の集中
銀行預金に保険や年金を組み合わせて分散したとしても、実はこれらは国債を使って運用されているので、分散投資が実現できていないのです。
問題点②国債の問題
もう1つは「国債の問題」です。預金・保険・年金の一部は国債で運用されています。日本では超低金利が続き、国債価格は安定していますが、市場金利が上昇すれば、国債価格は下落します。国債には将来の金利上昇による損失が発生するリスクがあるのです。
円だけで資産を持つと、円安やインフレに対応できない
日本の個人金融資産は、1700兆円といわれていますが、9割以上が円資産です。この状態にもリスクがあります。具体的な数字で見ていきましょう。
1ドル=100円で100万円を持っていたとします。ドルに換算すると、1万ドルです。しかし、翌年に急激な円安が進み、1ドル=125円となったとすると、ドル換算では8000ドルになってしまいます。
つまり、円だけで資産を持っていると、円安になった場合、グローバルに見て資産が減少してしまうのです。
インフレになった場合でも同じことが起こります。
物価が上昇し、これまでは100円で買えていたものが、125円出さなければ買えなくなったとすると、預金などは「元本保証」という名のもとに、名目金額では守られていても、実質的な価値は減少してしまいます。
リスクを避けるつもりが、「リスクを取らないリスク」になってしまっているのです。
円安になるか円高になるかわからない場合は?
普通、為替が円安になると思うのであれば、円を売って外貨を買います。逆に、円高の場合は、外貨を売って円を買うわけです。つまり、円安になるか円高になるか、五分五分だと思うのなら、100万円持っているとして、円を半分の50万円、外貨を半分の50万円という、中立(ニュートラル)な保有がベースになります。
日本の未来に悲観し、円安におびえながらも、円100%のまま、資産を保有している人は、思っていることと、やっていることがチグハグな状態といえるでしょう。
【CHECK !】やみくもにリスクを取っても失敗する
個人投資家の投資の失敗には、典型的なパターンがいくつかあります。
● 自分が知っている会社を選んで投資する(有名な会社は人気があるぶん割高になっている可能性がある)
● 1つの株に資金を集中させる(ちょっとした相場変動で大きな失敗につながる)
株価が確実に上がる会社を予想することは不可能です。いきなり株式投資を始めるのではなく、最初は投資信託などを使った分散投資から始めるべきなのです。
● 購入した株が値下がりすると見なくなる(不都合な真実から目を反らす)
購入した株が思った通りに上昇せず、下落していくことがあります。このような場合は、株価回復の見通しが無ければ「損切り」を早めにする必要があります。しかし、多くの個人投資家は自分の保有する株式の価格が下がってくると、都合の悪い現実を見ないようにしてしまい、その株式は結局値下がりしたまま「塩漬け」になってしまうのです。
1964年生まれ。東京大学経済学部卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院修士課程卒(MBA)。金融機関勤務を経て、1999年にマネックス証券株式会社の創業に参加。マネックス・ユニバーシティなどグループ会社の代表取締役を歴任後、株式会社資産デザイン研究所代表取締役就任。著作は40冊を超え、「初めての人のための資産運用ガイド」はシリーズ24万部のベストセラーに。 早稲田大学、明治大学などで、資産運用に関する講座を開講。 毎週金曜日配信の資産デザイン研究所メールは、配信数49000通を超える人気。ブログ「SHINOBY'S WORLD」も毎日更新中。
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