インパクト投資とは、社会や環境にポジティブな影響を与える企業やプロジェクトに投資することです。これまでの投資と違うのは、お金を増やすことだけにフォーカスするのではなく、「財務的リターン」と「インパクト(社会や環境に対する良い影響)」の両方を重視していることです。ここでは、インパクト投資の基本や始め方について解説します。
インパクト投資なら「社会に影響を与えながら儲けること」が可能
インパクト投資は、「従来の投資では満足感を得られない」と思っている投資家と相性が良いと考えられます。具体的には、以下のような投資家です。
「投資をするなら社会に影響を与えながら儲けたい」
「これまで投資で儲けてきたが、社会の役に立っている実感がない」
インパクト投資は以下の2つを結ぶことで、「財務的リターン」と「インパクト(社会や環境に対する良い影響)」の実現を目指します。
・投資する側:手持ち資金を社会に役立てながらリターンを得たい投資家
・投資される側:社会や環境に良い影響を与えたい企業や団体
両者が手を結ぶことで、社会にポジティブな影響を与えるプロジェクトが進みやすくなります。
下の図のように捉えると、インパクト投資を理解しやすいでしょう。これまでの投資は「リターン」と「リスク」という2つの軸で成り立っていました。これに「インパクト(社会や環境に対する良い影響)」という軸が加わったのが、インパクト投資です。
インパクト投資は本当に儲かるのか?
投資家の中には、「リターンとインパクトが両立するだろうか?」と思う人もいるかもしれません。この疑問を解決するためのヒントになるのが、GSG国内諮問委員会がインパクト投資の定義の一つとして挙げている「財務的なリターンはもちろん、インパクトの部分も定量的・定性的に把握する」という部分です。
この定義によれば、インパクト投資においては「儲からない(財務的リターンがない)」「社会や環境をより良く変えていない(インパクトがない)」プロジェクトや銘柄は淘汰されていくことになります。
これを前提にすると、本稿タイトルの「インパクト投資は本当に儲かるのか?」という問い対する回答は、「インパクト投資は儲かる可能性があり、特に定量的・定性的に厳しい基準がある長期プロジェクトや銘柄は儲かっている可能性が高い」となるでしょう。
その意味で、インパクト投資の銘柄やプロジェクトを選択する際は「どのように定量的・定性的な審査をしているか」に着目することが重要です。
国内のインパクト投資市場は、3年間で十数倍に拡大
世界の投資の潮流ともいえるインパクト投資ですが、日本国内における市場も2018年頃から急拡大しています。GSG国内諮問委員会のレポートによると、日本国内のインパクト投資の残高は2016年の337億円から2019年の4,480億円へと、3年間で十数倍に成長しています。
国内インパクト投資残高 | |
---|---|
2016年 | 337億円 |
2017年 | 718億円 |
2018年 | 3,440億円 |
2019年 | 4,480億円 |
出典:GSG国内諮問委員会「インパクト投資拡大に向けた提言書2019」
日本国内のインパクト投資市場が急拡大している理由について、同委員会はレポートの中で、資産運用会社、保険会社、金融機関などが参入した影響が大きいと分析しています。
インパクト投資の始め方:直接投資と間接投資の2つの選択肢がある
個人投資家がインパクト投資を始める際は、以下の2つの選択肢があります。
・直接投資:クラウドファンディング
・間接投資:投資信託
共感するプロジェクトに個別で出資したいなら、直接投資がよいでしょう。一方で、世界中の数多くの企業に分散投資をしたいなら、間接投資が向いています。それぞれの詳細は、以下のとおりです。
インパクト投資を「直接投資(クラウドファンディング)」で始める
クラウドファンディングによるインパクト投資の最大の特徴は、特定のプロジェクトまたは限定されたテーマのファンドを指定することです。
クラウドファンディングとは、ネットを介して多くの人から資金を集めるスキームのことです。クラウドファンティングにはさまざまなタイプ(購入型・寄附型・不動産投資型など)がありますが、投資型のプラットフォームである「セキュリテ」「クラウドクレジット」でインパクト投資ができます。
クラウドファンディングのメリットは、共感する個別のプロジェクトに出資できることです。プロジェクトが成功すれば「社会に良い影響を与えられた」ことを実感でき、やりがいを感じられます。デメリットは個別の案件に出資するため、プロジェクトが頓挫すればリターンを得られないことです。
・インパクト投資のプラットフォーム「セキュリテ」
セキュリテは「社会的課題の解決に役立つインパクト投資」をテーマにしたプラットフォームです。2021年1月にファンドを立ち上げ、メディアで話題になった「しなの鉄道 車両更新応援ファンド」の出資者募集の場として使われたほか、途上国の貧困支援や生産者育成、日本の各地域の食文化を守るための活動など、裾野の広いプロジェクトが多く掲載されています。
・インパクト投資のプラットフォーム「クラウドクレジット」
クラウドクレジットは、資金を必要とする人や事業者を投資対象にしたプラットフォームで、「メキシコ女性起業家支援ファンド」「東欧金融事業者支援ファンド」など、ファンドごとにテーマを設定して資金を募集しているのが特徴です。
インパクト投資を「間接投資(投資信託)」で始める
投資信託によるインパクト投資の最大の特徴は、数多くの株式を対象に運用するファンドを通じて投資できることです。
投資信託の分散投資効果でリスクヘッジができることや、証券会社の口座を持っていれば手軽に購入できることなどがメリットです。ただし、投資対象をリアルに感じられないため、クラウドファンディングと比較すると「やりがい」という点で劣ります。
インパクト投資をテーマにした投資信託の一例を見てみましょう。
・ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド
(委託会社:三菱UFJ国際投信)
投資対象は、「平等な社会・教育の実現」「環境・資源の保護」などのインパクトテーマで展開する世界各国の株式(日本や新興国を含む)。決算頻度は年1回で、「為替ヘッジなし」です。
・世界インパクト投資ファンド
(委託会社:三井住友DSアセットマネジメント)
投資対象は、世界各国の社会的な課題の解決を目指す企業の株式(日本を含む)。決算頻度は年2回で、「為替ヘッジなし」です。
・野村ACI先進医療インパクト投資
(委託会社:野村アセットマネジメント)
投資対象は、世界各国の先進医療関連企業の株式(新興国を含む)。商品は4タイプあり、決算頻度が年1回または毎月、為替ヘッジありまたはなしを選択できます。
インパクト投資はあくまでも資金の一部で運用するのが賢明
最後に補足をすると、インパクト投資のメリットとして、株式市場の急落時の影響が小さいため、インパクト投資以外のテーマの投資信託や株式と組み合わせると分散投資効果を得られることが挙げられます。
その反面、クラウドファンディングを利用したインパクト投資は、ファンドが破綻したり、期待していた利回りを得られなかったりすることもあります。「社会や環境にポジティブなインパクトを与える」というコンセプトは素晴らしいのですが、上記のリスクを踏まえて資金の一部で運用することをおすすめします。
※本稿は、インパクト投資や紹介したプラットフォームやファンドを推奨するものではありません。投資判断は自己責任でお願いいたします。
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