STOによって不動産投資が身近に?メリットと課題を解説
(画像=Song_about_summer/stock.adobe.com)

セキュリティトークンを使ったSTOは、新たな資金調達法として注目を集めています。特に不動産投資では少額投資も可能になり、「投資に消極的だった層の投資参加を促す」「少規模でも魅力ある店舗が資金を集めやすくなる」など新たな活用法も期待できるでしょう。本稿では、STOの仕組みや将来性、課題などについて解説します。

セキュリティトークンの意味とメリット

STOは「Security Token Offering」の頭文字を取った略称でセキュリティトークン(SecurityToken、以降ST)を発行して行う資金調達方法です。STは、ブロックチェーン技術などを利用してデジタル化された法令上の有価証券のことでSTOを理解するには、まずSTについて知る必要があります。STの主な特徴は以下の3つです。

24時間取引と決済が可能

2021年時点で主要な証券取引所は、取引時間が決められています。しかしSTは、24時間いつでも取引が可能です。将来的には、世界中で随時取引ができるようになるとされています。また証券取引所での決済は、売買成立から数日後ですがSTでは即時決済も可能です。

データの安全性が高い

STは、分散型台帳技術により高い安全性が確保されます。分散型台帳は、参加者全員でデータを管理および共有するため、改ざんが非常に難しいのが特徴です。さらにSTは、証券規制の中で発行される点でも安全性が確保されます。仮想通貨のように「管理者や発行者が不明確」ということがなく信頼性も高い傾向です。

取引コストが抑えられる

ST化された有価証券は、迅速な決済が可能で管理も短期間かつシンプルで済みます。また売買や譲渡における各種の手続きも簡略化されるため、取引にかかるコストを抑えることが可能です。これにより費用対効果や流動性の面から証券化の難しかった資産の証券化も進むことが期待されます。美術品などもデジタル証券化され新たな取引方法が現れる可能性も秘めているのです。

所有権が小口化しやすくなる

金融資産や不動産所有権の小口化は、手続きや管理コストがかかるため、これまで積極的に行われませんでした。しかしSTは手続きが簡略化されるため、小さな単位への分割が容易です。所有権の小口化が進めば少額投資も可能になるため、特に不動産で資金調達がしやすくなると期待されています。

STOとは新たな資金調達方法

STOは、STを介した資金調達方法の一つです。投資家は、投資対象へ出資することでSTを受け取ります。投資先が運用される間に配当を受け取ったり売却によって収益を得たりすることは従来の投資と同様です。STは、電子記録移転権利として金融商品取引法の法規制を受けSTOを取り扱う金融機関は、金融庁から認定された自主規制団体「一般社団法人日本STO協会」の規約遵守が求められます。

STOと似た資金調達方法にICO(Initial Coin Offering)があります。しかし原資の仮想通貨には発行体が不明確なもの多くトラブルが発生していました。しかし一定規模以上のSTOは、有価証券届出書の提出が必要です。このようにSTOは、取引の健全性や投資家の保護に努められています。

不動産で期待されるSTOの効果

不動産取引では、STOを用いることで以下のようなメリットが期待されています。

権利を小口化し投資しやすくなる

不動産の権利をSTによって小口化することで投資資金をより集めやすくなります。従来の不動産への直接投資は、自己資金か融資で一定の金額を用意する必要がありました。しかしSTで小口化されれば少額投資も可能になり幅広い投資家からの投資が期待できます。

世界中の投資家から資金調達可能に

STを取り扱う証券取引所に上場すれば世界中の投資家から資金を集めることが期待できます。すでに米国など海外には、STを売買可能な取引所がいくつかあります。日本からもSTを取り扱う証券取引所へ上場することで国内より多くの資金を集められる可能性があるでしょう。

個性的な不動産への投資

収益性が高くなくとも個性的な不動産施設であれば投資の配当を金銭に限らず施設利用やサービスをリターンにすることで投資家の間口を広げることもできます。一定額以上の投資をする場合、従来は資金が必要でどうしても配当金や売却益でのリターンを求められました。

しかしSTにより少額投資が可能になれば「個性的な店舗や歴史的な施設などを応援したい」という個人投資家のニーズを発掘できる可能性があります。

国内のSTO事例

近年注目されているSTOですがいくつか実際に行われた例があるので紹介します。

葉山の古民家宿づくりファンド

2019年に国内初の一般投資家向け不動産STOとして「葉山の古民家宿づくりファンド」が実施されました。すでにプロジェクトの目標募集額1,500万円に達しファンド組成は完了しています。投資実行後にSTが発行され投資家へ持分が譲渡される流れです。「葉山の古民家宿づくりファンド」は、投資によって葉山の空き家の所有権を持つことになります。

これにより建物や敷地の維持管理が行われ古民家再生に協力できるというわけです。想定利回りは2%、運用期間は4年3ヵ月で投資家には施設を割引価格や無料で利用できる特典が付いています。

大家.com

株式会社グローベルスが運営する「大家.com」では、2020年12月から不動産賃貸物件の運営資金をクラウドファンディングで集めています。投資金額は、1口1万円です。賃料収入を配当とし運用期間終了後は売却益などで元本償還されます。投資家は、出資後にSTが発行され持ち分を取得。またSTOスキーム上で書面確認を行った他の投資家へ出資持分の譲渡も可能です。

従来の不動産投資で得た持ち分は、運用期間が終わるまで譲渡は難しい傾向でした。しかしSTを用いることで譲渡がしやすくなります。

不動産投資型クラウドファンディング

このような不動産賃貸建物へのクラウドファンディングは、既存物件だけでなく新築建物でもミドルリスク・ミドルリターンの投資手段として注目を集めています。そのため「株式投資はややハードルが高いが銀行預金より高い利息を得たい」という人には、魅力ある投資です。1口1万円など少額から投資可能で高い利回りを実現しているファンドもあります。

今後STOが普及するにつれてこうした不動産賃貸建物へのクラウドファンディングもさらに活発化することが期待されるでしょう。

STOの今後の課題

注目されているSTOが今後さらに拡大するためには、以下のような課題を解決していく必要があります。

どれくらい投資先が現れるか

2021年時点でSTOは、枠組みができたばかりの初期段階です。既存の投資先が新たにSTOに適合させるためには、人員の配置やデータ移管が必要になります。そのため「手間やコストをかけてもSTOに参入したい投資先がどれくらい現れるか」といった内容が第1の課題です。また投資先の数も大切ですが「既存の投資先とは差別化された新たな魅力を持つ投資先が現れるか」といった点も注目されます。

国内取引所の運営開始

実際にSTの取引を行う国内の取引所の稼働はこれからです。2021年4月1日にSBIホールディングス株式会社と株式会社三井住友ファイナンシャルグループは、共同でPTS(私設取引システム)の運営を目指す「大阪デジタルエクスチェンジ株式会社」を設立。2021年4月時点では、2022年の春をめどに株式の取り扱い、その後にSTの取り扱いを開始する予定です。

「2022年までにどれくらいのSTOが集まるか」「上場基準や投資家の保護」など検討すべき問題は数多くあります。今後の大阪デジタルエクスチェンジ株式会社の動向に注目しましょう。

不動産取引に新たな風を吹き込む

不動産取引においてSTOが広く浸透すれば権利の小口化で投資資金の限られる若い投資家を集めやすくなるでしょう。これにより個性的な店舗や施設など新たな価値で投資を募る不動産が増え不動産投資が活性化する可能性もあります。また権利のデータ化によって従来の書類を中心とした煩雑な手続きなどが改善されることも期待されるポイントです。

これまで保守的と見られてきた不動産取引に新しい風が吹き込むかもしれません。

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