高騰する暗号資産……どう節税すればいい?ポイントと注意点を解説
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鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

2020年から高騰している暗号資産(仮想通貨)。「最近、取引を始めた」「以前から持っている暗号資産を売却した」という人もいるのではないでしょうか。実は、暗号資産で得た利益には税金が高くなりやすい資産です。今回は、暗号資産の税金を抑える方法について解説します。

暗号資産で課税される主なパターン

個人が購入した暗号資産は買った時点や保有分が値上がり(含み益の状態)しただけでは課税されません。持っている暗号資産を「売却・交換・使用」という形で利益を確定させたり購入以外の形で価格のついた暗号資産を取得したりしたときに所得税や住民税がかかります。

売却・交換・使用したとき

保有している暗号資産を「売却」「交換」「使用」のいずれかで手放した時点で利益が確定するため、課税の対象となります。各定義は、以下の通りです。

  • 売却:保有している暗号資産を売ること(日本円や米ドルに換えるなど)
  • 交換:他の暗号資産を手持ちの暗号資産で購入すること
  • 使用:暗号資産でモノ・サービスを購入すること

マイニングをしたとき

暗号資産は、取引データの連なりです。この取引データの一つのまとまりをブロックと呼びます。ブロックには「いつ、誰(どのアドレス)が、どのくらいの量の暗号資産を取引したのか」という情報が書き込まれており、この情報を第三者が確認し承認するとその報酬として新たな暗号資産が付与される仕組みです。この一連の作業を「マイニング(採掘)」といいます。

この暗号資産の新規取得も「経済的な価値のあるものを取得した」として課税対象です。

エアドロップで付与されたとき

「エアドロップ」とは、暗号資産が無償でユーザーに配布されることです。エアドロップで入手した暗号資産も課税対象となります。なぜならマイニングで取得した暗号資産と同様、経済的な価値のあるものを取得したからです。

レンディングで利息を受け取ったとき

暗号資産を売買するだけでなく取引所を通じて他のユーザーに貸し出す「レンディング」という仕組みもあります。レンディングで得た利息も課税対象です。

暗号資産の税金が高くなる理由

ここまで解説した暗号資産の利益は、すべて「雑所得」として申告します。雑所得に区分されると税金は高くなる傾向です。

雑所得とは

雑所得とは、所得税法上の所得の一つです。給与所得や事業所得、譲渡所得などといった他9つの所得のどれにも当てはまらないのものが「雑所得」となります。

雑所得だと税金が高くなる2つの理由

雑所得は、以下の2つの特徴があります。「暗号資産の利益があると税金が高くなる」といわれるのは、こういった特徴があるからです。

・1.「赤字=0円」として扱う
事業所得や不動産所得で赤字が生じると給与所得など他の所得の黒字と相殺することが可能です。これを「損益通算」といいます。しかし雑所得の場合は、赤字は0円として扱います。そのため他の所得との損益通算はできません。

仮に暗号資産で売却損が100万円、給与所得が1,000万円あったとしても課税のベースとなる所得額は900万円ではなく1,000万円となるのです。

・2.総合課税なので利益が大きいと高い税率になる
株式や投資信託の売却益は、他の所得と区別して計算したうえで課税されます。また税率は一律20.315%です。一方暗号資産の売却益は、他の所得と合算したうえで課税されます。さらに税率も合計した所得額に応じて変わり低い所得であれば低い税率、高い所得であれば高い税率が適用されるのです。もし暗号資産取引で高い利益が生じたら高い税率が適用されます。

【参考】所得税の税率(国税庁)

暗号資産の節税する2つの方法

暗号資産取引があると税金は高くなりがちです。しかし以下の2つの対策をとることで課税額を抑えることが期待できます。

他の雑所得になる取引の赤字と相殺する

暗号資産で損失が生じても他の所得と通算することはできません。しかし以下のような雑所得に区分される利益との相殺はできます。

  • デザイン料、原稿料、メルカリでの売買などの副業収入
  • 公的年金の収入

暗号資産の必要経費を確認する

暗号資産への課税は、売却額そのものにかかるのではありません。雑所得として計算した金額に所得税や住民税がかかります。雑所得の金額は、以下のように計算します。

  • 雑所得=総収入金額-必要経費の額

ここで必要経費となるのは、暗号資産の取得価額だけではありません。以下のようなものも必要経費になります。

  • 暗号資産取引のための借金の利息
  • 暗号資産取引のための書籍代やセミナー代
  • 暗号資産取引のためのパソコン代、通信費
  • マイニング用の機械代、電気代

また暗号資産取引のために支出したものがあるなら列挙して計上もれがないかどうかを確認することで所得額を抑えることが期待できます。ただし必要経費となるものは、暗号資産取引に直接必要となった部分だけです。パソコンをプライベートで使っているなら使用頻度や使用時間などといった合理的な基準で支出額を按分し取引に必要な部分だけを経費に計上します。

暗号資産取引の注意点

暗号資産取引の所得額を計算する際には、以下の点に注意しましょう。

外貨建FXとの相殺はできない

外貨建証拠金取引など金融商品先物取引や商品先物取引の利益も雑所得になります。ただしこちらは暗号資産など他の雑所得と区別し「先物取引等に係る雑所得等」という枠の中で計算します。そのため暗号資産取引と先物取引の損益を通算することはできません。

暗号資産の利益は住民税や国民健康保険税に影響する

暗号資産の利益で納税額が増えるのは、所得税だけではありません。住民税も同じです。また住民税の計算のベースとなった所得額は、国民健康保険税や保育料などにも影響します。つまり暗号資産の取引で多額の利益を出すと翌年以降の公的負担が一気に重くなるのです。日本円で売却したのなら納税資金を確保することができますが使用や交換などで利益の得た場合は、納税資金に困る可能性もあります。

暗号資産を取引する際は、利益確定した際の税金のことまで考えておくと安心です。手持ちの資金と相談しながら取引を行うようにしましょう。

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