不動産オーナーのためのESG入門 今から取り組めば将来大きな差別化に!
(画像=guy/stock.adobe.com)

ESG問題は、大企業や意識の高い人だけが取り組むテーマではありません。アパート経営やマンション経営などの賃貸ビジネスにESG問題はダイレクトに関係しています。本稿の前半では「賃貸経営でESG問題の取り組みが重要な理由」、後半では「ESG/SDGsへの取り組みで融資や経営が有利になる可能性」について考察していきます。

ESGは賃貸経営にダイレクトに関わるテーマ

近年は「ESG問題」「ESG投資」などをテーマにした記事やコンテンツと接する機会が多くなってきました。2021年6月のある週の日経新聞電子版を見るとESGをテーマにする記事は、1日平均数本ペースでアップされています。またテレビなどのメディアでもESGをテーマにした番組や特集が目立ちます。それくらいESGが私たちの身近になってきているということです。ESGとは、以下の3つの頭文字をとった総称を指します。

  • Environment:環境問題
  • Social:社会問題
  • Governance:組織統治問題

もちろん当メディアを読まれているような世の中の流れに感度の高い不動産オーナーであれば「ESGの話題がずいぶん増えてきた」と感じている人も多いかもしれません。ただ「ESGは株式や投資信託に関連すること」「大企業が取り組むべきこと」と思っている人もいるのではないでしょうか。ESG問題は、賃貸経営をする不動産オーナーにダイレクトに関わってくるテーマです。

しかし唐突に不動産オーナーに関係するテーマといわれても実感できない人がほとんどでしょう。なぜESG問題が賃貸経営に深く関わるのかについて確認していきます。

ESG問題の悪化で賃貸経営にこんなに大きな影響がある

賃貸経営でESG問題の取り組みが重要な理由は、このままESG問題が悪化していくと賃貸経営そのものが成り立たなくなる可能性があるからです。例えば「E(環境問題)」「S(社会問題)」「G(組織統治問題)」それぞれで以下のような賃貸経営への深刻な影響が考えられます。

賃貸経営のE(環境問題)

気候変動や温室効果ガス排出、大気汚染などの環境悪化が挙げられます。環境悪化が進むことで賃貸経営の長期的なコストが増大する点はリスクです。例えばこのまま環境悪化が進み風水害や雪害が頻繁に起こると不動産オーナーの修繕コスト負担が増大しかねません。また環境悪化などが原因の山火事が多発して森林資源が減ってしまえば木材の高騰などによって新築やリフォームのコスト増大につながります。

賃貸経営のS(社会問題)

社会問題や人権問題、労働基準、ダイバーシティ、地域社会の弱体化などが挙げられます。賃貸経営の観点で見ると社会問題が悪化することで空室や家賃滞納のリスクが高まる可能性があるでしょう。例えば社会全体の雇用環境が悪化して収入が不安定な人が増えれば滞納リスクは高まります。また収益物件のある地域社会の活力がなくなれば賃貸経営そのものが成立しません。

賃貸経営のG(組織統治問題)

企業統治や法律の遵守、経営の透明性などです。これらも賃貸経営と無縁に感じてしまいがちですが実は深く関係しています。例えば賃貸経営の世界で不正が相次げば法規制や金融機関などの目が厳しくなって商売がしにくくなるでしょう。2017~2018年にかけて起こった「かぼちゃの馬車問題」は、その代表的な事例の一つです。

意識の高いオーナーだけがやればいいという考え方はNG

賃貸経営のESG問題への取り組みは「意識の高い不動産オーナーだけがやればよい」というわけではありません。例えば一部の不動産オーナーが賃貸経営を通して温室効果ガス削減の取り組みをしても大半のオーナーが環境問題を無視する経営をしていけば焼け石に水で気候はどんどん悪化していくでしょう。それに伴い未曾有の台風や大雪が毎年のように起これば計り知れない修繕費用が発生することになります。

「大災害のダメージは保険でカバーできる」と考えているオーナーもいるかもしれません。しかし大災害が常態化して保険会社の負担が急増すれば保障内容や保険料が見直されて不動産オーナーのコスト負担につながります。このようにESG問題は巡り巡って最終的に不動産オーナーの負担を増やすものとなりかねません。賃貸経営関係者全体でESG問題を共有していくことではじめて大きな力になります。

結局、ESG問題に取り組む不動産オーナーが得をする

ここまでの内容を読んで理屈はわかるけど「ESG に取り組む余裕がない」「キレイごとでは?」という不動産オーナーもいるかもしれません。ただこういった消極的な不動産オーナーも含めてESG問題に取り組んでいったほうがよいでしょう。なぜならESG問題への取り組みは「地球環境や社会への貢献」という視点を外しても賃貸経営において重要だからです。

近年は、金融機関のESG問題に対する意識が急速に高まっています。そのため以下のような流れが顕著です。

  • ESGやSDGs(持続可能な開発目標)に逆行する経営をしている企業には融資できない
  • ESGやSDGsを進める企業には積極的に融資する

一例では、2021年6月に開催された三菱UFJフィナンシャル・グループの投資家向け説明会で約200人から脱炭素関連の質問が相次いだことが話題になりました。各行にとってESG問題への取り組みは、最重要な経営課題になりつつあります。この流れがさらに強まってくると「ESG問題に取り組む賃貸経営をしていることで融資が有利になる」といった時代がやってくるかもしれません。

例えば賃貸経営の計画書を作成する際、「SDGsを意識した収益物件の建築」「ESGを意識した物件管理」といった内容だと金融機関の反応が変わってくる可能性もあります。

若い世代向けの収益物件はESGやSDGsをテーマにすると効果的?

入居者目線で見ても「ESGやSDGsを重視した収益物件か否か」で入居率や設定家賃が変わってくる可能性もあります。企業広報戦略研究所が実施した「2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査」によると若い世代ほどESGの認知率が高い傾向です。例えば20代男性の認知率は41.6%でしたが60代男性の認知率は24.9%となっており約16.7ポイントも違います。

不動産オーナーのためのESG入門 今から取り組めば将来の大きな差別化に!
出所:企業広報戦略研究所「2020年度 ESG/SDGsに関する意識調査」

ちなみにSDGsの認知率は、ESGを上回っています。こちらも若い世代ほど認知率が高い傾向です。

不動産オーナーのためのESG入門 今から取り組めば将来の大きな差別化に!
出所:同上

このような「若い世代ほどESGやSDGsに関心を示す」という傾向を見ると若い単身者向けのワンルームマンションや若いファミリー層向けのアパートなどでESGやSDGsをテーマにすると差別化にプラス効果と考えられます。

ESGやSDGsに取り組む賃貸経営の具体例

最後に「ESGやSDGsにどう取り組んでいくか」について解説します。どちらのテーマも「これをすれば正解」というものはありません。経営規模や物件の種類、地域特性などを考慮して各不動産オーナーが考え実行していくものです。あくまでも一例ですが以下のような内容を検討してみることも選択肢の一つといえるでしょう。

  • エネルギー効率のよい収益物件を建てる(太陽光発電システムや高断熱構造など)
  • 入居審査で高齢者や障害者などの差別をしない
  • 利益の一部を環境活動や地域貢献に寄付をする
  • 法令を守る形で確定申告や決算を行う
  • SDGsを重視する不動産会社や管理会社を選ぶ など

現段階でESGやSDGsを意識した賃貸経営をするオーナーは、ごく一部です。業界全体のESGやSDGsへの取り組みが本格化する前に取り組めば大きな差別化につながります。特に付加価値のある賃貸経営を展開したいと考えている不動産オーナーの場合は、ぜひ検討してみてください。

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