「不動産投資が節税になる」のはなぜ?注意点も解説
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鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

「不動産投資は節税になる」と言われます。それは所得計算が給与所得などと異なる特徴を持つからです。今回は、不動産所得が節税になる理由と注意点について解説します。

不動産投資は「不動産所得」に税金がかかる

不動産投資は税法上、どういう扱いになるのでしょうか。また、どんな税金がかかるのでしょうか。最初に確認しましょう。

不動産所得とは

不動産所得とは、土地や建物といった不動産の貸付によって生じた所得をいいます。アパートやマンションだけでなく、戸建てや土地そのものの貸付も不動産所得に該当するわけです。ただし、駐車場業は貸付の方式によって不動産所得になったりならなかったりします。

かかる税金は2つ

不動産所得にかかる税金は「所得税」「住民税」の2つです。

所得税は国に対して納付する税金です。実際には、ご自身が住んでいる地域を管轄する税務署に申告・納税を行います。不動産所得の場合、他の所得と合算した上で課税額を計算します。5~45%の税率を乗じて算出するわけですが、課税される所得額が多ければ多いほど、高い税率が適用され、納税額が大きくなる累進課税制です。

【参考】 No.2260 所得税の税率(国税庁)

一方、住民税はほぼ全国一律10%となっています。こちらも他の所得と合算した上で納税額を計算します。「10%なら安いもの」と思いたいところですが、住民税は所得税よりも所得額が小さく設定されているので、「少ない負担で済む」とは言い切れません。

不動産所得の計算方法

不動産所得は次の式で計算します。

総収入金額-必要経費

総収入金額には、家賃収入の他、名義書換料や礼金、更新料、共益費の他、敷金・保証金のうち返還しないこととなったものが当てはまります。

必要経費には、管理会社に支払う管理料や共益費、水道光熱費、駐車場の他、次のようなものが挙げられます。

  • 固定資産税
  • 損害保険料
  • 修繕費
  • 不動産ローンの利子
  • 減価償却費

この他、通信費なども経費に計上できますが、不動産投資に直接必要な部分に限られます。

不動産投資が節税になる理由

「不動産投資は節税になる」と言われるのは、不動産所得に次のような特徴があるからです。

経費が大きいと不動産所得の額を圧縮できる

不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算します。つまり、必要経費の金額によって課税される所得額が変わるのです。特に建物の減価償却費は金額が大きいため、かなり所得額を圧縮することになります。

見方を変えると、先ほどお伝えした必要経費を漏らさず正確に計上できれば、不動産所得を下げ、節税につなげることができます。

不動産所得の赤字で損益通算

不動産所得、事業所得、山林所得そして譲渡所得の一部は、赤字になると他の所得の黒字と相殺できます。これを「損益通算」と言います。損益通算ができると、課税される所得の合計額が下がります。結果、課税額も減るのです。

青色申告をする

不動産所得で青色申告の承認を受けると、青色申告ができるようになります。青色申告ができるようになると、主に次のような恩恵を受けられます。

  1. 特別控除が受けられる
    65万円、55万円、10万円とあります。不動産所得は「5棟10室」といった基準をクリアする規模なら65万円か55万円、それ以外だと10万円です。

  2. 不動産所得の損失を翌年以後3年間繰り越せる
    翌年以後に生じた不動産所得の黒字と相殺できます。

  3. 不動産所得の損失を前年に繰り戻せる
    前年の不動産所得の黒字と相殺し、税金の一部還付が受けられます。

  4. 30万円未満の固定資産を一括で必要経費にできる

通常、10万円以上の固定資産はすぐに必要経費にできません。「工具器具備品」などの固定資産に計上した後、数年以上に渡って減価償却を行い、経費に計上していきます。

しかし、青色申告をしている人が30万円未満の固定資産を事業用にすると、使い始めた年において全額を経費に計上できます。

不動産投資の節税の注意点

不動産投資は節税効果が高いものですが、その反面、次のような注意点があります。

青色申告は記帳が大前提

青色申告を行うには、会計記帳が前提です。「損益計算書と貸借対照表が作れるよう、複式簿記で記帳する」が原則ですが、現金出納帳など一定の帳簿を備え付けているなら、Excelなどによる簡易な記帳でもよいとされています。

この他、領収書や請求書といった証拠書類も5~7年、保管しなくてはなりません。帳簿付けや領収書等の保管は必ず行いましょう。

不正をしないこと

誠実に申告・納税をしないと、本来納めるべき税金以外に次のようなペナルティが科されます。

  • 無申告加算税:申告そのものが期限に間に合わないときにかかる
  • 過少申告加算税:申告した税額が本来あるべき金額より少ないときにかかる
  • 延滞税:納税が法定納期限より遅れたにかかる
  • 重加算税:所得や税額計算において偽装または隠蔽があったとき

節税は確かに気になります。しかし正しく申告するのが、もっとも合理的でムダがありません。

資金繰りに注意

経費を積み上げると確かに節税になりますが、同時に現金を失ってもいることを忘れてはいけません。「現金支出を伴わない」と言われる減価償却も同じです。最初に建物を購入する段階で多額のお金を支出しています。

「納税額が少ない、あるいは0円」なのは、利益が少ないか、赤字であることが原因です。逆に「納税額が多い」ということは、その分、不動産所得がしっかり黒字になっていることを意味します。

投資は儲かって初めて意味をなします。節税よりも資金繰りに意識を向けましょう。

以上が不動産投資と節税の関係ですが、いざ所得や税額の計算をすると分からないところが出てきます。不安を感じたら、早めに税理士などの専門家に相談しましょう。

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