慶應義塾大学法学部・同大学法務研究科卒業。弁護士法人Martial Artsにて不動産関係の問題に多数関与。(法律相談、交渉、訴訟、講演等)。不動産投資DOJOにてコラム執筆中。
相場よりも安い!と思った不動産を見つけたけど、「市街化調整区域」と書いてあった…という経験はありませんか?
実は市街化調整区域の不動産は、相場よりも安いことが多いのです。
なぜ安いかというと、市街化を抑制すべき区域という制限がかかっているからとなります。
では必ずしも買ってはいけないのかというと、そういうわけではありません。しかし、購入するにあたっては知っておかないといけない注意点があります。
この記事では市街化調整区域の不動産投資物件を購入する場合の注意点を弁護士の観点から解説させていただきます。
市街化調整区域とは?
市町村の地方自治体は都市計画法に沿って街を開発しています。
無計画に都市開発してしまうと、水道や電気や道路などのインフラを整備する費用が跳ね上がってしまうため、
ア 市街化区域
今後も街を発展させていくエリア
「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」(都市計画法7条2項)
イ 市街化調整区域
今後、街を発展させていかないエリア
「市街化を抑制すべき区域」(都市計画法7条3項)
を設けています。
このように、都市計画法は、区域区分を定めることによって計画的に市街化を進め、都市の健全な発展と秩序ある整備を行うことを目指しています。
今回は、市街化調整区域の不動産を投資の対象として購入する際のポイントを簡潔にご説明いたします。
※お目当ての不動産が市街化調整区域にあるか否かは、検索などにより、インターネットで簡単に確認することができます。
例えば、横浜市については、iマッピーという横浜市行政地図情報提供システムという便利な機能があります。このiマッピーを利用すれば市街化調整区域にあるか否かを確認することができます。
以下は、iマッピーで表示された東戸塚駅の近辺の都市計画情報ですが、駅のすぐ北部(地図の上のほう)で市街化調整区域に設定されています。山などがあることから市街化を抑制したいということだと思われます。
■市街化調整区域
市街化調整区域の不動産を購入する際の注意点
市街化調整区域は、市街化を抑制されているため、区域内の不動産の価格が安くなる傾向にあります。市街化区域の不動産と比較すると、10分の1程度になる場合もあります。
また、市街化調整区域の不動産の課税評価額は低いため、支払わなければならない固定資産税も安く抑えることができます。
加えて、市街化調整区域は、都市計画の対象となっていないことから、市街化調整区域の不動産について都市計画税を払う必要がありません。
◆市街化調整区域の不動産の特徴
・市街化が抑制されて今後の発展が見込めない
・価格が安い
・固定資産税評価も安い
このように市街化調整区域の不動産を投資の対象とする場合、イニシャルコストもランニングコストもかかりにくいというメリットがあるようにも思えます。
しかしながら、次のような点には十分に注意する必要があります。
不動産投資で失敗しないためにも、以下にあげた市街化調整区域の物件における5つの注意点を必ず理解しておきましょう。
① 建物を建築できない可能性がある
市街化調整区域では、原則として建物を建築することができません。そのため、土地を購入したとしても、その土地で建物が建築できないという事態になりかねません。
仮に購入する土地に既に建物が建っていたとしても安心はできません。建物の再建築や増築についても原則として許可が必要となるからです。
購入前に、建築の可否等について都道府県に必ず確認をとるようにしましょう。
② 金融機関からの融資を引きづらい
市街化調整区域内の不動産投資物件には、そもそも融資しないという銀行が多いです。
融資をしてくれる場合でも、
・再建築ができない
・市街化が抑制されている
・売却が難しい
という理由から、担保評価も融資金額も伸びにくいです。
仮に融資を受けられる場合でも、金融機関側のリスクを軽減するべく、通常よりも高い金利が設定されてしまう可能性もあります。
③ インフラが整っていない可能性がある
市街化調整区域は、都市部から離れていることが多いため、電気・ガス・水道などのインフラが十分に整備されていないこともあります。
この場合、自身でインフラの整備をする必要がありますので、コストがかさむことになります。
④ 空室リスクがあり、賃料も低くなりがち
市街化調整区域は、市街化が抑制されているため、当然ながら、生活する際の利便性は、市街化区域と比較して劣る(交通の便が良くない、近くに商業施設が少ない等)部分が多いと言わざるを得ません。
そのため、需要が高いとはいえず、一定程度の空室リスクがあることや賃料が低くなりがちであることを念頭に置いておく必要があるでしょう。
⑤ 売却が容易ではない
自身が市街化調整区域の不動産のオーナーになった後、当該不動産を売却することも容易ではありません。上記①、②、④の点から、このことは明らかです。
まとめ
以上のように、市街化調整区域の不動産を投資の対象とする場合には、様々な注意点があります。
①建物を建築できない可能性がある
②金融機関からの融資を引きづらい
③インフラが整っていない可能性がある
④空室リスクがあり賃料も低くなりがち
⑤売却が容易ではない
単に安いからというので安易に購入してしまうと、思いもよらぬ失敗につながる可能性があるのでご注意ください。
もっとも、市街化調整区域の不動産であっても、インフラに問題がなく、魅力もある物件が、たまたま安く売りに出されている場合(例えば、相続絡みで売主が早期売却を希望している場合)もございます。
デメリットがあることを考慮したうえでも、将来的に空室の需要や売却も可能であり割安な場合には、投資を行う価値があるといえる可能性もあります。
そのため、市街化調整区域の不動産が投資の対象として一概に不適切とはいえません。
ご自身でしっかりと調査をしたうえで、メリット・デメリットを慎重に検討し、投資の判断を行うようにしましょう。
本記事は不動産投資DOJOの転載記事になります。
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