不動産投資で成功するには、キャッシュフローに関する知識が欠かせません。手元に残る現金を正確に把握できなければ予期せぬ出費に対応できず不動産投資を続けられなくなることもあるため、注意が必要です。そこで今回は、不動産投資におけるキャッシュフローの重要性や具体的な計算方法、キャッシュフローをよくするコツなどについて詳しく解説します。
目次
不動産投資におけるキャッシュフローとは?
不動産投資におけるキャッシュフローとは、「家賃収入から経費を差し引いて残る現金」を指します。計算式は、以下の通りです。
不動産投資のキャッシュフロー=家賃収入-諸経費
金融機関から融資を受けて不動産投資を行っている場合は、延滞しないように家賃からきちんと返済することが大切です。また諸経費は、ローンの返済だけではなく管理会社の委託費や固定資産税など物件を運用・維持するための費用がすべて含まれます。
「新築投資マンション」キャッシュフローの具体例
ここでは、新築マンションのキャッシュフロー計算例を見てみましょう。
<物件の条件>
・物件価格:3,400万円
・頭金:500万円
・融資期間:35年
・金利:2%
・家賃収入(年間):192万円
<年間の経費>
・管理費・修繕積立金:19万円(家賃の約10%)
・固定資産税・都市計画税:約40万円「(3,400万円☓70%☓(1.4%☓0.3%))」
・ローン返済:約115万円
・その他費用:約10万円(賃貸管理費、交際費、税理士報酬など)
・経費の合計:184万円
このケースの場合は、年間の家賃収入(192万円)から諸経費の合計(184万円)を差し引いて8万円が年間キャッシュフローです。
不動産投資におけるキャッシュフローの重要性
キャッシュフローが残る投資をしていれば運用中のさまざまなトラブルを回避することができます。手元にキャッシュが残ることの重要性について詳しく見ていきましょう。
空室など突発的な出費に備えることができる
不動産投資では、さまざまなリスクを考慮しなければいけません。例えば「災害リスク」を考える場合、火災保険や地震保険に加入することである程度回避することが可能です。しかし入居者がなかなか決まらず家賃収入が途絶える「空室リスク」は、手元のキャッシュで対応する以外に方法がありません。キャッシュフローが出ない投資を続けていた場合は、銀行への返済ができなくなってしまいます。
また物件や設備の修繕といった突発的な出費にも備えなければいけません。不動産投資において物件購入後も多くの出費の可能性がある点は認識しておく必要があります。
返済期間中に金利が上昇したときの対応ができる
ローンの金利が上昇して金利分の支払いが増える「金利上昇リスク」も不動産投資で考慮しなければいけないリスクの一つです。ローンの借り換えによって一時的に回避することはできますが、借り換え手数料がかかるため、手元にキャッシュがなければ対応できません。
買い増しなど事業の拡大がしやすくなる
キャッシュフローが出る物件は、収益率が高い物件とみなされます。次に購入する物件の融資審査を受ける際に黒字経営だと高く評価され融資審査が通りやすく、さらにいい条件で融資を受けることが期待できるでしょう。将来的に事業の拡大を検討しているならキャッシュフローの重要性は高いといえます。
キャッシュフローと帳簿上の利益に相違がある
キャッシュフローとは、実際に手元に残るキャッシュの流れのことです。一方で利益とは、会計のルールに従った帳簿上の儲けのことを指します。 不動産投資においては、物件の購入費用を「減価償却費」として計上することができるため、キャッシュフローと帳簿上の利益には違いが生じてしまうのが大きな特徴です。
減価償却費は、不動産を購入時にかかった費用を一度に全額を経費として計上するのではなく耐用年数に応じて分割しながら計上します。つまり毎年実際にキャッシュを支出していないにもかかわらず耐用年数に応じて減価償却費という勘定科目で経費計上することが可能です。なお減価償却費の計上ができるのは建物だけで土地は対象外となるので、減価償却の仕組みを有効に活用して、キャッシュフローを確保するようにしましょう。
キャッシュフローを良くするための運用コツ
不動産投資において少しでもキャッシュフローをよくすることが重要ですがどのようにするとよいでしょうか。ここでは、キャッシュフローをよくするため、以下の4つの観点から運用するコツについて紹介します。
- できるだけ融資の金利を抑える
- 融資期間を長期にする
- 無理のない頭金を入れる
- 賃貸ニーズが高いエリアの物件を選ぶ
できるだけ融資の金利を抑える
ローンの金利を低く抑えられれば毎月の返済額を減らしてキャッシュフローを増やすことができます。できるだけ融資の金利を抑える主なポイントは、以下の2つです。
・金融機関の提携先が豊富な不動産投資会社を選ぶ
不動産投資会社は、基本的に金融機関と業務提携をしていることが多い傾向です。はじめて融資を受ける人は、自分で金融機関を開拓することが難しいため、不動産投資会社の提携金融機関から融資を受けるといいでしょう。不動産投資会社の提携金融機関の場合は、その不動産会社の取引実績を基準に金利などの融資条件を決めています。
提携する金融機関から高評価を得ている不動産投資会社から紹介を受けた場合は、金利が低くなるなど条件が優遇されることもあります。また実績が豊富な不動産会社であれば提携先の数も多くなります。金融機関によって評価する基準が異なるため、提携先が多ければその中から自分にとって最もよい条件の金融機関を選ぶことができるでしょう。そのため物件を購入する前に不動産会社の提携金融機関数も必ず確認するようにしてください。
融資期間を長期にする
ローンの返済期間を長くすれば毎月の返済額を少なくできます。ここでは、借入金額2,500万円、金利2%、融資期間20年・25年・30年で借り入れした場合の返済額の例を見てみましょう。
- 返済期間20年:毎月の返済額12万6,470円
- 返済期間25年:毎月の返済額10万5,963円
- 返済期間30年:毎月の返済額9万2,404円
返済期間が長くなる分、毎月の返済額は少なくなりますが完済までの期間が長くなればなるほど金利分が上乗せされるため、総返済額は増えます。そのため最初は最長期間を選びその後の運用状況に合わせて繰上返済するなど返済期間を短縮するといいでしょう。
無理のない頭金を入れる
頭金なしのフルローンを組めば自己資金が少なくても不動産投資を始めることはできます。しかしフルローンは、借入額だけではなく返済する利子の金額も大きくなるので注意が必要です。借入期間30年、元利均等返済、金利2%の借入額別返済額を比較してみましょう。
借入金額 | 返済総額 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
3,000万円 | 3,991万8,600円 | 11万885円 |
2,800万円 | 3,725万7,480円 | 10万3,493円 |
2,600万円 | 3,459万6,360円 | 9万6,101円 |
2,400万円 | 3,193万4,880円 | 8万8,708円 |
例えば物件価格が3,000万円の場合、フルローン3,000万円と頭金600万円の借入額2,400万円を比較すると総返済額で約798万円、毎月の返済額に約2万円の違いがあります。しかし不動産投資をする中で、設備が壊れたなど突発的な出費もあるため、手元にある程度まとまったキャッシュを持っておくことが必要です。
そのため頭金は出したほうが望ましいですが無理のない範囲内にすることが重要といえます。
賃貸ニーズが高いエリアの物件を選ぶ
不動産投資には「空室リスク」があります。安定した家賃収入を得るには、以下のような賃貸ニーズの高い物件を選ぶようにしましょう。
- 人口が増えるエリア
- 駅から徒歩10分圏内
- 複数路線が利用できる
- 賃貸ニーズにあった間取り
これから日本の人口が減少するといわれていますが日本全体の人口が減る一方で人口が増えているエリアもあります。そのため気に入った物件があった場合は、事前に対象エリアの人口動態について確認するようにしましょう。また販売図面に記載された情報だけで判断するのではなく実際に物件の立地や周辺環境、最寄り駅までの道のりなど現地調査もすることも大切です。
まとめ
今回は、不動産投資におけるキャッシュフローの重要性やキャッシュフローをよくするコツなどについて解説しました。黒字経営は理想的ですが空室が続くなどキャッシュフローがマイナスに転じるときもあります。そのようなときに備え、程度まとまったキャッシュを手元に準備しておくことが重要です。
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