安定した不労所得や老後資金の確保、相続税対策などの理由から不動産投資を検討している人が多くなりました。その中でも、マンション投資は安定的な収入が得られることから人気の投資方法です。
マンション投資は何からはじめるとよいのでしょうか。
マンション建築の流れから、建築費用、収益化のポイントについて紹介します。
マンションの設計期間
マンションを建築しようと思ってから竣工までにかかる期間は、一般的に階数+10カ月程度です。大まかには設計で半年、建築で半年~1年といったイメージです。
具体的にどのような工程があり、どのくらいの期間がかかるか紹介します。ここで紹介する期間はあくまで目安であり、施工会社や土地の形状などによって期間は大きく変動する場合があります。
地下1階地上5階建てのRC造マンションの工期はどのくらい?
こちらのデザイナーズコンパクトマンションを例にどのくらいの工期がかかるか見ていきましょう。
- デザイナーズコンパクトマンション
- 地下1階・地上5階建て
- RC造
まず、打ち合わせから実際に工事に入るまでの期間を半年とします。
次の基礎工事が階数×1カ月なので、地下1階地上5階のマンションは合計6カ月必要です。
あとは、内装・外壁工事が2カ月、完了検査が1カ月です。
上記のとおり、地下1階地上5階建てのマンション建築期間は工事までに6カ月、工事以降が9カ月かかり、合計で15カ月程度必要だと考えておきましょう。
では各工程をより詳細に見ていきましょう。
事前打ち合わせ 1カ月目
設計事務所にどのようなマンションを作りたいのか相談します。
早い段階から相談することで、自分では思いつかなかった可能性を提案してもらえる可能性があります。
敷地が決まっていない場合は、敷地探しから相談できるので、具体的な計画がなくても相談してみるとよいでしょう。
敷地が決まっている場合は、土地の図面を持って行くと具体的な話をしやすくなります。
基本設計 2~3カ月目
事前打ち合わせの内容をもとに大まかな設計をしていきます。
はじめは、マンション全体の形状や空間の構成、間取りがわかるような図面等を作成して、情報を共有します。
具体的な形を見ることで、より具体的な要望も出てきます。
要望や改善点を修正しながら、基本設計を仕上げていきます。
実施設計 3~5カ月目
基本設計で納得できるものができたら、次は具体的にどのような材料を使っていくかなどの実施設計を行います。
見た目や機能、強度、メンテナンス性などを加味してどこにお金をかけ、どこで手間をかけるのかなどを決めていきますので、この実施設計によって見積もりの金額が大きく変わります。
見積もり 5~6カ月目
実施設計の内容をもとに施工会社より見積もりを作成してもらいます。
予算オーバーであれば、見積もり内容を精査して、価格交渉をしたり、設計の内容を変更したりして目標金額に近づけていきます。
見積もり金額と工事内容が決まったら、いよいよ工事に入ります。
準備工事 7カ月目
マンションを建築するためには、地盤をしっかり固める工事が必要です。地盤調査を行い、地盤が悪い場合には改良工事を行う場合もあります。
すでに建物が立っている土地であれば、建物の解体工事も必要です。
基礎工事 (階数×1カ月)~13カ月目
マンションの基礎となる部分の工事を行います。
基礎部分の工事とは、建物の支柱になる杭の埋め込み工事や、鉄筋の型枠にコンクリートを流し込んで建物の土台を整える工事のほか、各階の床の施工や配筋なども含まれています。
階数が多ければ多いほど基礎工事には時間がかかります。地下1階・地上5階建てのマンションを建築していると仮定し、6カ月かかったことを想定して次に進みます。
内装・外装工事 14カ月目
基礎工事がある程度進んだら、同時進行で内装工事もスタートします。
内装工事の主な内容は下記のとおりです。
- 電気の配線
- お風呂の据え付け
- 空調工事
- 天井や壁の施工
- 断熱材や吸音材の備え付け
- クロス張り
内装工事が終わったら外装工事も行います。
外装工事は希望した外観によって工期が異なります。外観を決定する際には、工期も確認しておきましょう。
完了検査 15カ月目
外装工事まで完了したら最後に外構工事を行います。
外構工事とは、駐車場の設置や植木の植樹など外観に関係する所の工事です。
その後、完了検査を行います。
完了検査はマンション建設が完了した際に行うことが建築基準法で定められています。
この検査をクリアすればマンション建設の完了です。
マンション建築において重要なチェックポイント4選
マンションを建築するにあたってのチェックポイントは、以下の4つです。
・マンションの建築プランは合理的か?
・間取りや構造、ターゲットとなる入居者の想定が適切か?
・どのような設備を導入するか?
・管理プランをどうするか?
マンションの建築プランが合理的か?
マンションの建築プランとは、マンションを建築するために建設業者が設計した計画のことです。建築プランを見る際は、以下の3つの項目に注目しましょう。
- 建築コスト
- 建物が完成する時期
- 賃貸する部分の面積
1.建築コスト
いかに高品質のマンションを低い建築コストで建てるかが、マンション経営の収支を大きく左右します。そのため複数の建設業者から相見積もりを取って比較検討することが重要です。建築コストは、マンションの構造や間取りなどによって変動します。
マンションの構造は大別すると「ラーメン構造」「壁式構造」があり、一般的にラーメン構造のほうが一定面積あたりの建築コストが高い傾向です。
ラーメン構造とは、柱(垂直方向の骨格)と梁(水平方向の骨格)のフレームで長方形を構成して建物を支える構造のことで低層から高層建築物まで幅広い建築物に用いられます。
壁式構造とは、床・天井・側壁4枚の計6枚の壁で空間を構成する構造のことです。ラーメン構造よりも自重が重くなりやすいため、高層建築物には適していません。マンションの場合は、5階建て以下の低層マンションに多く用いられる構造です。建築コストを抑える観点からは、5階以下の低層マンションであれば壁式構造のプランのほうが合理的かもしれません。
間取りと建築コストの関係においては、ファミリータイプよりもワンルームタイプのほうが一定面積あたりの建築コストが高い傾向があります。なぜなら同じ延床面積の場合、ファミリータイプよりもワンルームタイプのほうが総戸数としては多くなりやすく、それに伴い必要な住宅設備(トイレ、キッチン、浴室等)の数も増えるからです。
2.建物が完成する時期
マンション経営においては、入居者が長期的に存在し続けることが重要となります。そのため間取りを決める際は、建築コストよりもそのエリアにおける賃貸需要を基準にするのが適切でしょう。建物が完成する時期(竣工時期)は、2~3月に合わせるのが最も理想的といえます。なぜなら3~4月は、1年を通して最も賃貸住宅のニーズが高まりやすい時期(繁忙期)で入居者募集に最適な時期だからです。
繁忙期は、オーナーに有利な条件で空室を埋めやすいため、好調な滑り出しでマンション経営をスタートさせることが期待できるでしょう。管理プランで家賃保証型サブリースを選択した場合は、特に竣工時期を意識する必要性が高まります。なぜなら家賃保証型サブリースの契約では、サブリース契約開始直後に一定期間の免責期間が設けられていることがあるからです。
※家賃保証型サブリース:管理会社がその物件を借り上げ、入居者の有無に関わらず一定の家賃をオーナーに送金するプラン
※免責期間:入居者募集期間として、管理会社からオーナーへの家賃保証が免責される期間
免責期間の長さは、サブリース契約を開始する時期によって異なることがあり、繁忙期以外の時期は長く設定されることもあります。免責期間中は、家賃保証がなく空室リスクをオーナーが背負うことになるため、空室リスクを軽減するためにも竣工時期の確認は必須です。
3.賃貸する部分の面積
賃貸する部分の面積(賃貸面積)は、入居者に貸し出す部分で家賃収入に直結する項目となります。そのため可能な限り広くすることがマンション経営上は合理的です。
賃貸面積が最大化されているかは「容積率」という数値を参照しましょう。容積率とは、地域ごとに定められている敷地面積に対する延べ床面積の割合のことで「敷地面積の何倍まで建物の延床面積とすることができるか」という数値です。容積率と延床面積の関係について、具体例を用いて説明します。
例えば、容積率が150%と定められている地域にある500平方メートルの敷地にマンションを建築する場合、延床面積の上限は750平方メートル(500平方メートル×150%)です。本事例において建築プラン上の延床面積が750平方メートルに近ければ賃貸面積を最大化できているといえます。建設業者によっては容積率の消化率(※)が明示されていることもあるので、確認しておきましょう。
※延床面積の上限のうちどの程度の面積を消化できているかの割合
賃貸面積を最大化させたいからといって狭い敷地に高いマンションを建てるとエレベーターを設置する法律上の義務が生じます。建築コストや維持管理コストがかさむ可能性があるため、容積率を消化しきることが必ずしも合理的ではない点には注意が必要です。建築や維持管理にかかるコストと家賃収入のバランスを見て賃貸面積をどう設定するかを考えるようにしましょう。
間取りや構造、ターゲットとなる入居者の想定が適切か?
住戸部分の間取りやマンション全体の構造、ターゲットとなる入居者の想定が適切かを見る際は、以下の3つの項目に注目しましょう。
1.住戸の方角と眺望
2.間取りが賃貸需要とマッチしているか
3.店舗テナントがターゲットになり得るか
1.住戸の方角と眺望
住戸のベランダや窓が東西南北のどの方角を向いているかは、日当たりに関わります。一般的に南向きは、日当たりが良好なため人気が高く、北向きは日当たりがあまり良くないため、好まれにくい傾向です。日当たりの良し悪しは、室内の明るさや湿度などに影響するため、住環境の質を左右する項目といえるでしょう。
また方角と並んで重要なのが住戸内からの眺望です。例えば、窓から墓地や火葬場などの施設が見えたり隣の建物と向かい合っていたりする場合などは、住戸内からの眺望が悪くなり入居者から敬遠される可能性があります。また、交通量や人通りの多い道路や高速道路、線路などに面している場合も注意が必要です。
振動や騒音、セキュリティ面での懸念も入居者から敬遠される要因になりえます。方角だけでなくその方角にベランダや窓を設置した場合「そこからの眺望がどうなるか」「総合的に住環境が最も良くなるのはどのようなプランか」について建設業者や不動産会社と相談しながら判断することが大切です。
実際に土地を視察したり航空写真を見たりして、対象となる土地の周辺環境をよく理解したうえで建築プランに反映させるようにしましょう。子育てをするファミリー世帯はもちろん在宅ワークをする単身者も自宅で過ごす時間が長くなることが想定されるため、日当たりや眺望などを加味して建築プランを立てることが大切です。
2.間取りが賃貸需要とマッチしているか
住戸の間取りを決める際には、「そのエリアの賃貸需要とマッチしているか」が重要となります。マンション経営は、入居者がいてはじめて成り立つ事業です。そのため「対象エリアにおいて最も賃貸住宅を求めているのはどのような世帯なのか(単身者かファミリーか)」についてしっかりとリサーチしてから建築プランを立てるようにしましょう。
対象エリアの賃貸需要を判断するための具体的な方法は、以下の2つが挙げられます。
- 地場の不動産会社にヒアリングをする
- 周辺の賃貸マンションの供給状況および空室率をリサーチする
・地場の不動産会社にヒアリングをする
最も迅速かつ手軽に情報を仕入れることができるのは、不動産会社へのヒアリングです。物件周辺にある不動産会社の数社に訪問したり電話したりしてアプローチしてみましょう。不動産会社へのヒアリングで注意が必要なのは、現場レベルの個人的な主観となる可能性があることです。ヒアリングをする不動産会社や担当者によっては、エリア全体のマクロな視点が期待できません。
例えば、その人の所感での回答の可能性もありえるため、すべてを鵜呑みにしないほうが良いでしょう。
・周辺の賃貸マンションの供給状況および空室率をリサーチする
周辺の賃貸マンションの供給状況をリサーチする際は、SUUMOやhome’sといった一般的なポータルサイトで間取りを絞らずに検索するとその時点で供給されている物件情報の取得が可能です。空室率については、その物件の管理会社に空室数を確認することで回答が得られる可能性があります。
例えばファミリータイプ物件の供給数が多く空室率が低い場合は、対象のエリアで賃貸需要が旺盛なのはファミリータイプです。また単身者向けの物件の供給数が少なく空室率が高い場合は、対象エリアの単身者からの賃貸需要は少ないと推測できるでしょう。
3.店舗テナントがターゲットになり得るか
マンションの1階部分において店舗や事務所のテナントを誘致できればマンション経営の収益性に大きなプラスとなる可能性があります。
店舗や事務所のテナントがマンション経営の収益性向上に寄与し得るのは、以下2つの理由からです。
- 住宅よりも賃料単価が高い
- 長期入居が見込める
・住宅よりも賃料単価が高い
店舗や事務所が同じ面積でも賃料が高い傾向があるため、住宅として貸し出す場合よりも高い家賃収入を得られる可能性があります。店舗や事務所の賃貸では、入居時に室内の造作やレイアウトの設計といった工程があるだけでなく退去時に大がかりな原状回復が必要になる場合もあります。入退去に住宅よりも多くの手間・時間・資金がかかる場合は、住宅よりも転居のハードルが高いといえるでしょう。
・長期入居が見込める
一度入居したテナントは、そこでの事業が継続する限り入居し続けてくれる可能性も見込めます。一方で店舗や事務所は、住宅よりも入居者募集の難易度が高かったり契約内容が複雑であったりするため、テナント対応に強い管理会社のサポートが必要な点は注意が必要です。大通りに面している場合や視認性が高い場合などは、店舗や事務所テナントの誘致も検討してみると良いでしょう。
どのような設備を導入するか?
マンションにどのような設備を導入するかは、グレードや印象、住み心地を左右するため、以下の4つの項目を中心によく吟味しましょう。
1.エントランスおよびセキュリティ関連の設備
2.郵便受け、宅配ボックス、ゴミ置き場
3.バイク置き場
4.エレベーター
1.エントランスおよびセキュリティ関連の設備
エントランスは、建物の出入り口の部分となるため、マンションの第一印象に関わる重要な箇所です。そのため「メインターゲットがどのような世帯か」という視点から考えて床・壁の素材や照明の位置・明るさなどを選定しましょう。メインターゲットに合わせたエントランスの仕様の一例を紹介します。
メインターゲット | 向いている仕様 |
単身男性 | モノトーンでシンプルかつシックな仕様 |
単身女性 | ビビッドカラーで明るい仕様 |
ファミリー | アースカラー(グリーン、ブラウン、ブルー系統の色味)を用いた温かみと落ち着きのある仕様 |
エントランスの仕様を考えるうえで重要なポイントは、マンション全体のコンセプトに合わせ統一感を持たせることです。外観がビビッドカラーで明るいデザインにもかかわらずエントランスがモノトーンでシックな仕様ではマンション全体の統一感が損なわれてしまいかねません。エントランス単体で考えずに他の共用部分や外観の雰囲気との調和を考え全体でバランスの取れたデザインにしましょう。
セキュリティ関連の設備には、オートロックやカメラモニター付きインターホン、防犯カメラといった設備が含まれます。単身女性やファミリーをメインターゲットとするのであれば、特にセキュリティ関連の設備は充実させたほうが良いといえるでしょう。セキュリティ設備を導入すると建築コストが増える点はデメリットです。
しかし入居者募集をする際にマンションのセキュリティの高さを訴求できたり、マンションにおける空き巣被害を防止できたりする点はメリットとなります。そのため中長期的な視点で考えれば導入しておくと安心な設備といえそうです。
2.郵便受け、宅配ボックス、ゴミ置き場
主に1階部分に設置する郵便受けや宅配ボックス、ゴミ置き場などの共用設備の配置を考える際は、入居者の動線がスムーズになるようにしましょう。
郵便受けと宅配ボックスの位置が遠い場合は、郵便受けで不在票を受け取ってから荷物を宅配ボックスに取りに行くまでに時間がかかる点はデメリットです。またゴミ置き場に出入り口がなくエントランスから遠い場合は、外出する前にゴミを捨てにくくなるでしょう。ゴミ置き場の配置を考える際は、エントランスまでの動線やゴミ回収事業者がゴミを回収する動線も考慮することが大切です。
また「雨風をしのげるか」というポイントも重要なポイントの一つでしょう。郵便受けや宅配ボックスは、屋根があり外から離れた場所に設置するのが適切です。郵便物を投函する際や荷物を宅配ボックスに入れる際に雨に濡れたり風で飛ばされたりしないようにしましょう。
3.バイク置き場
駐輪場や駐車場と並んで設置を検討すると良い設備がバイク置き場です。
駐輪場および駐車場は、建築条例で一定の条件を満たす物件において設置義務が課されることがあります。しかしバイク置き場については、設置義務が課されていません。設置義務がないため、バイク置き場を設置されていないマンションも多くあります。バイク置き場があるだけで周辺の競合物件との差別化を図れる可能性もあるため、設置を検討する価値は大いにあるでしょう。
ただしバイク置き場は、駐輪場よりも広いスペースが必要です。竣工後は、新設しにくくなるため、建築プランを立てる段階で設置を検討しておくと良いでしょう。バイク置き場を設置するか否かを検討する際は、そのエリアにおいてバイク置き場のニーズがあるかをリサーチしておく必要があります。駅やバス停から遠いエリアには、バイクを主な移動手段にする人が多くいるかもしれません。
4.エレベーター
「エレベーターを設置するか」「設置後のメンテナンスをどのようにするか」は、マンション経営において非常に大きなポイントです。エレベーターがあったほうが入居者により良い住環境を提供することができます。しかしエレベーターは設置・メンテナンス・交換に多額の費用がかかるため、マンション経営の適正化と合理化を図るうえで難しい考慮要素の一つです。
高さが31メートルを超えると、建築基準法によってエレベーターの設置義務が課されます。しかしそれ未満の場合、設置するか否かは原則オーナーの判断に委ねられるため、設置義務がない場合はマンションの階数などを勘案して設置するか否かから検討すると良いでしょう。エレベーターの保守メンテナンスには、以下の2種類の契約形態があります。
FM契約(フルメンテナンス契約) | メンテナンスの基本料金のほか部品代や修理代をすべて含んだプラン |
POG契約(パーツ・オイル・グリス契約) | 機器の点検、給油、調整などを含み部品代や修理費用は別料金のプラン |
毎月の固定コストは、POG契約のほうが割安です。しかし大がかりな修繕が発生した場合のコストは、別料金となるため、突発的に大きなコストが発生するリスクを加味するとFM契約のほうが安心かもしれません。
管理プランをどうするか?
マンションの管理には、大きく以下3種類のプランがあります。
・管理委託
・パススルー型サブリース
・家賃保証型サブリース
いずれを選択するかによってオーナーが負う空室リスクの大きさや収益性が変わるため、よく理解して検討しましょう。
・管理委託
管理委託は、管理会社と業務委託契約を締結してマンションの管理や入居者対応といった実務全般を委託する形態の管理プランです。各住戸の入居者とはオーナーが貸主としてそれぞれ個別に賃貸借契約を締結します。家賃保証はないため、空室リスクはオーナーが負担します。
・パススルー型サブリース
管理会社がマンションをまるごと借り上げる形態の管理プランです。オーナーと管理会社は、賃貸借契約を締結し、管理会社も入居者と賃貸借契約を締結する転貸の形を取ります。オーナーから借りたマンションを管理会社が入居者に又貸しする形態です。入居者から見た貸主は、管理会社のため、入居者との賃貸借契約は都度管理会社が締結することになり契約にかかるオーナーの手間は減るでしょう。
管理委託と同様に家賃保証はないため、空室リスクはオーナーが負担します。マンションの場合は、入居者の数が多いため、契約手間の観点からはパススルー型サブリースのほうが合理的かもしれません。
・家賃保証型サブリース
管理会社がマンションをまるごと借り上げる形態の管理プランです。しかし「家賃保証がある」という点でパススルー型サブリースと異なっています。家賃保証があるということは、空室の有無に関わらず管理会社から一定の家賃が支払われるということです。そのためオーナーが負う空室リスクは大きく減ります。ただし家賃保証型サブリースでは、以下の2点に注意が必要です。
- 空室リスクがゼロにはならない
- 満室稼働時の収益性は家賃保証がないプランよりも悪くなる
周辺の賃貸マーケットが変化した場合などは、家賃保証を外されたりサブリースを解約されたりする可能性があります。そのため安易に家賃保証型サブリースを選択するのは避けたほうが良いでしょう。
【もっと詳しく知る】
マンション建築に必要な諸費用の内訳
マンションの建築に必要な費用や諸費用について紹介していきます。
建物費用【構造による違い】
マンションの構造は大きく分けて以下の3種類があります。
・鉄筋鉄骨コンクリート造
・鉄筋コンクリート造
・鉄骨造
分譲マンションや超高層マンションでは「鉄筋鉄骨コンクリート造」、中低層の賃貸マンションでは「鉄筋コンクリート造」や「鉄骨造」が一般的です。
2022(令和4)年4月に国土交通省から発表された「建築着工統計調査報告」によると、鉄筋鉄骨コンクリート造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造のマンション建築における坪単価の平均は、下記の通りでした。
坪単価 万円/坪 | |
---|---|
鉄筋鉄骨コンクリート造 | 116 |
鉄筋コンクリート造 | 95 |
鉄骨造 | 75 |
費用の中で一番大きな比率を占めるのが建物費用です。
建物の形状や間取り、立地などにも左右されますので、坪単価は上記の平均より安くなる時もあれば高くなる時もあります。ただし、建物費用を抑えることだけを重視すると、入居率が低かったり、低い家賃収入しか得られなかったりして、賃貸経営が厳しくなる可能性があります。それを回避するためにも、ノウハウのある建築会社に相談することをおすすめします。
上記の3つの各構造で建物費用がどの程度になるかをシミュレーションしてみましょう。各種条件は、いずれの場合も以下のようにシミュレーションします。
- 敷地:50坪
- 建蔽率:50%
- 階数:5階
・鉄筋鉄骨コンクリート造の場合
以下の計算式により約1億4,500万円と想定されます。
・50(坪)×50(%)×5(階)×116(万円/坪)=1億4,500万円
鉄筋鉄骨コンクリートは、高層マンションや大型商業施設で多く用いられる構造です。工程が複雑なため、時間とともにコストもかかりやすい傾向があります。
・鉄筋コンクリート造の場合
以下の計算式により約1億1,875万円と想定されます。
・50(坪)×50(%)×5(階)×95(万円/坪)=1億1,875万円
鉄筋コンクリート高層は、マンション以外の小中規模のマンションで多く用いられる構造です。鉄筋鉄骨コンクリート造の場合よりもコストを抑えることができます。
・鉄骨造の場合
以下の計算式によりおおよそ9,375万円と想定されます。
・50(坪)×50(%)×5(階)×75(万円/坪)=9,375万円
鉄骨造は、鉄筋鉄骨コンクリート造・鉄筋コンクリート造よりも早く・安くマンションを建てられるのが特徴です。しかし鉄筋鉄骨コンクリート造・鉄筋コンクリート造と比べると防音性で劣る可能性があります。
建物費用【物件規模による違い】
各物件規模で建物費用がどの程度になるかをシミュレーションしてみましょう。物件規模は、以下3パターンを想定します。
・小規模物件(50戸未満)
・中規模物件(50戸以上100戸未満)
・大規模物件(100戸以上)
小規模物件の場合、以下3つの理由から建築費用を抑えることができる可能性があるでしょう。
・エレベーターを設置する必要がないことが多い
・共用設備がシンプルであることが多い
・鉄筋コンクリート造または鉄骨造であることが多い
建築面積(建物を真上から見たときの面積)が30坪・3階建のマンションの場合、建築費用の目安は以下の表の通りです。
構造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 |
---|---|---|
建築費用 | 約8,550万円 | 約6,750万円 |
※建築面積×階数×建築費用の坪単価で算出
※建築費用の坪単価は、鉄筋コンクリート造が95万円/坪、鉄骨造が75万円/坪と想定
(2022年4月に国土交通省から発表された「建築着工統計調査報告」より)
中規模物件の場合、住戸数および物件規模が大きくなることに加え、以下3つの理由から小規模物件よりも建築費用が割高になるでしょう。
・エレベーターの設置義務が生じる可能性が高まる
・機械式駐車場が必要な場合がある
(駐車場需要に対して敷地面積が不足している場合)
・鉄筋鉄骨コンクリートで建築される場合がある
建築面積(建物を真上から見たときの面積)が50坪・8階建のマンションの場合、おおよその建築費用は以下の表の通りです。
構造 | 鉄筋鉄骨コンクリート造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 |
---|---|---|---|
建築費用 | 約4億6,400万円 | 約3億8,000万円 | 約3億円 |
※建築面積×階数×建築費用の坪単価で算出
※建築費用の坪単価は、鉄筋鉄骨コンクリート造116万円/坪、鉄筋コンクリート造が95万円/坪、鉄骨造が75万円/坪と想定
(2022年4月に国土交通省から発表された「建築着工統計調査報告」より)
大規模物件は、タワー型のマンションや複数棟からなる団地型のマンションなどの形態が多く、以下3つの理由から建築費用は相当な高額であることが想定されます。
・エレベーター設置義務があり、複数台の設置が求められる物件規模
・共用部分の面積が増える(エレベーターホール、エントランス、駐車場等)
・鉄骨造には適さないことが多い
建築面積(建物を真上から見たときの面積)が60坪・15階建のマンションの場合、おおよその建築費用は以下の表の通りです。
構造 | 鉄筋鉄骨コンクリート造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|---|
建築費用 | 約10億4,400万円 | 約8億5,500万円 |
※建築面積×階数×建築費用の坪単価で算出
※建築費用の坪単価は、鉄筋鉄骨コンクリート造116万円/坪、鉄筋コンクリート造が95万円/坪、鉄骨造が75万円/坪と想定
(2022年4月に国土交通省から発表された「建築着工統計調査報告」より)
別途工事費
別途工事費は建物費用の約15~20%です。
別途工事費の主な内容は、下記の通りです。
- 屋外給排水
- 電気・ガス工事費
- 外構工事費
- 地盤改良工事費
- 空調設備等の付帯工事費
道路から建物までの距離が長いと屋外給排水管の費用が上がったり、地盤が弱いと地盤改良工事費が上がったりします。
諸費用
諸費用は建物費用の約5%必要です。
諸費用の内容は、下記の通りです。
- ローン手数料
- 火災保険料
- 印紙税
- 不動産取得税
- 登記費用
マンションの建築費と別途工事費は、不動産投資ローンを利用するのが一般的ですが、諸費用は自己資金で賄ったほうがローンに通りやすいため、諸費用分である建築費用の5%程度は事前に用意しておく必要があります。
マンション建築後、収益を最大化させるポイント
マンションの建築期間や費用を紹介してきましたが、マンションを建築する最終目的は収益を得ることです。その収益を得るためにはいくつかのポイントがありますので、紹介します。
どのような収益を狙うか
マンションでの収益には、売却益と家賃収入の二つの収益があります。
売却益は、購入金額より高い価格でマンションを売却することで得られる利益ですが、初心者にはおすすめしません。初心者は家賃収入からの収益を得るほうが確実です。
ローン金利を低くする
マンション購入はローンの活用が一般的です。ローンを利用すると元本のほかに利息を払う必要があります。支払利息は金利によって決まるので、なるべく金利が低い金融機関を選択することで、毎月の支払額が減少し利益が出ます。
金利を低く抑えるには、年収や職業、頭金の割合などを総合的に判断されますが、不動産会社からの紹介も大きな要因です。
入居者募集と管理業務
マンションの運営と管理は委託するのが一般的です。マンション経営は契約の締結から清掃までさまざまな業務があり、これらを委託先と相談しながら決めていきます。
管理不足による資産価値の低下や、それに付随して空室が発生し空室による家賃収入減少や、管理費の増加に悩まされないため、信頼できる委託先を見つけることが重要です。
経費を計上する
マンション経営に必要な経費を計上するとともに、マンションの建物部分を減価償却することで、実際に支出がなくても経費として認められます。
経費を多くすることにより利益を少なく申告できるので納める税金が少なくて済みます。
信頼できるパートナーを見つける
不動産投資では大きな金額を、長い期間運用する必要があります。
不動産は状況によって千差万別で、自分1人ではわからないことも多いため、専門家のアドバイスを早いうちから取り入れることが成功の近道です。
専門家の中で一番身近なのが不動産会社ですが、不動産会社の中には、販売しかしていない不動産会社もありますので、そのような会社では物件が売れることが優先され、収益性がおろそかになりがちです。
賃貸管理まで請け負っている不動産会社なら、空室やトラブルが発生すると自社が苦労するため、そのような物件の取り扱いが少ない傾向があります。
不動産投資をするなら、賃貸管理まで請け負ってくれ、信頼できる不動産会社を選択する必要があります。
マンション建築に関するよくある質問
Q.どれくらいの期間かかるのか?
マンション建築に要する期間は、物件規模や構造によって大きく異なりますが、以下のような物件の場合、約15ヵ月です。
- デザイナーズコンパクトマンション
- 地下1階・地上5階建て
- RC造
工程の内訳は、打ち合わせ、設計(基本設計、実施設計)、見積もり、工事(準備工事、基礎工事、内装・外装工事)、完了検査があります。本例の場合、工事までに6ヵ月、工事以降が9ヵ月の期間がそれぞれかかるという内訳です。
Q.費用はどれくらいかかるのか?
マンション建築に要する費用は、物件規模や構造によって大きく異なります。
物件規模 | 内容 |
小規模物件(50戸未満) | 住戸数が少なく共用部分もシンプルなことが多く1億円以内に収められることもある |
中規模物件(50戸以上100戸未満) | エレベーターや機械式駐車場の設置が求められる可能性があるため、数億円規模の建築費用がかかる可能性が高い |
大規模物件(100戸以上) | エレベーターの台数や共用部分の面積が大きく増えるため、10億円以上の建築費用を想定しておく必要がある |
Q.収益を最大化させるポイントは?
マンション経営において収益を最大化させるポイントは、大きく以下の3つです。
- 信頼できる管理会社をパートナーにする
- 収入を最大化する
- コストを最小限に抑える
実務上の知識や経験がない場合、管理会社の質が収益を大きく左右する可能性があります。そのため管理実績や対応の質、専門知識の豊富さ等を勘案して管理会社を厳選することが重要です。市況を見て家賃アップや礼金収受を積極的に狙い、ローン金利や管理費用など調査と交渉で削減できるコストはカットして収益の最大化を図りましょう。
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