少額でできる不動産投資の種類・リスク・投資額の目安などをわかりやすく解説
(画像=SomjaiJaithieng/stock.adobe.com)

本記事では、少額からできる不動産投資の種類や特徴をわかりやすく紹介します。

目次

  1. 少額からできる不動産投資のメリット、デメリット
    1. 少額からできる不動産投資のメリット
    2. 少額からできる不動産投資のデメリット
  2. 少額の不動産投資が向いている人の特徴
    1. これから不動産投資を始めたい人
    2. 投資の元手が少ない人
    3. 多忙で時間がない人
  3. 少額からできる不動産投資の種類
    1. 不動産投資クラウドファンディング
    2. 国内REIT
    3. 海外REIT
    4. 投資金額と利回り
    5. 低予算の賃貸物件
  4. 少額の不動産投資をいくつか組み合わせるのも手

少額からできる不動産投資のメリット、デメリット

少額からできる不動産投資の一番のメリットは「手軽に始められること」です。しかし他にも以下のようなメリットがあります。デメリットとともに確認しましょう。

少額からできる不動産投資のメリット
通常の不動産投資と同様に5〜10%程度の利回りを狙える
専門家が運用するので手間がかからない
初心者が自分で行うよりリスクを低減できる
金額・運用の面で初心者でも始めやすい
少額からできる不動産投資のデメリット
大きなリターンを狙いづらい
元本割れのリスクがある
投資先の選択肢が限られる

少額からできる不動産投資のメリット

メリット1.預金よりも高利回りを得られる

不動産投資の期待利回りは預金金利を大きく上回ります。例えば、「不動産投資クラウドファンディング」の場合なら5~10%の利回りを設定している案件(ファンド)が多い傾向です。

一方、メガバンクの普通預金の金利は0.001%程度でしかありません(2023年7月時点)。仮に少額からできる不動産投資の利回りが5%だとしたら、メガバンクの金利の5,000倍ということになります。

メリット2.運用の手間がかからない

現物の不動産投資と違い、不動産投資クラウドファンディングやREITは専門家が物件の購入から運営、売却などを行うため、物件管理などの手間がかかりません。投資前に案件の選択や契約(購入)だけを行えば、あとは満期日に元本とリターンを受け取るだけです。

メリット3.空室などのリスクを抑えやすい

不動産の知識と経験豊富な専門家が物件の売買や運営を行うことにより一般の人が不動産投資をするよりも空室や価格下落、災害などのリスクを大幅に軽減することが可能です。ただし少額からできる不動産投資といえどもリスクがゼロではありません。空室が発生して家賃収入が得られなければ、想定していたリターンを回収できない可能性もあります。

リスクが気になる人は、投資による損失をファンド組成会社が優先して負担してくれる「優先劣後出資」を採用した不動産投資クラウドファンディングが向いています。

関連記事:優先劣後方式とは?不動産クラウドファンディング選びで重視すべき理由

メリット4.不動産投資の初心者でも始めやすい

一棟マンションやアパート経営などの現物不動産投資では、物件価格が千万単位や億円単位となります。そのためローンを組んで物件を購入する場合でも、まとまった金額の頭金が必要です。一方、少額の不動産投資なら一口の投資金額の設定が1万円や数万円などのため、初心者でも無理なく始めやすいでしょう。

なお「投資金額がどれくらい必要か」は、少額の不動産投資の種類によって異なります(詳しくは後述)。

少額からできる不動産投資のデメリット

デメリット1.大きなリターンを狙いづらい

投資金額が少ない分、大きなリターンは狙いづらいです。例えば、利回り5%の場合、1億円の一棟マンションなら年間のリターンは500万円ですが、10万円の不動産投資クラウドファンディングなら年間のリターンは5,000円です。

ただし少額の不動産投資は、口数や物件数を増やすことでリターンを増やすことができます。まとまったリターンを得たい人は、目標に合わせて適切な口数や物件数を設定しましょう。

デメリット2.元本割れのリスクがある

専門家が運営するためリスクを抑えやすいとはいえ、ゼロということではありません。場合によっては、専門家でも予想するのが難しい事態によって予定していた収益を上げられず投資家に分配金を払えない可能性もあります。 余剰資金の範囲内で投資をしていくことが大切です。

デメリット3.投資先の数が限られる

上場株式の銘柄数は約3,800(2023年7月19日時点)、投資信託のファンド数(公募投信数)は約6,000(2023年6月末時点)あります。一方でREITや不動産投資クラウドファンディングは、投資先の選択肢が限定的です。例えば国内REIT(J-REIT)の銘柄数は60(2023年6月末時点)です。

少額の不動産投資が向いている人の特徴

ここまで解説してきたメリット・デメリット踏まえると少額の不動産投資に向いているのは、以下のようなタイプの人といえるでしょう。

これから不動産投資を始めたい人

不動産投資をやりたいけれど「物件を買う勇気がない」「頭金が貯まらない」という人は、まず少額の不動産投資から始めるのがおすすめです。大きなリスクをとらない形で不動産投資を実践しながら知識や経験を積み上げることができます。

投資の元手が少ない人

資産形成をしたいけれど元手となるお金があまりない人は、少額の不動産投資に向いています。なかでも1口1万円から投資できる不動産投資クラウドファンディングなら貯蓄がほとんどない人でも始めやすい傾向です。
※1口あたりの金額は案件によって異なります。

多忙で時間がない人

仕事や私生活が忙しく「マーケットの動向を常にチェックするのは難しい」「こまめな売買をするのが難しい」といった人は、少額の不動産投資が向いています。特に手間がかからないのは、REITや不動産投資クラウドファンディングです。

少額からできる不動産投資の種類

主に以下の4つの種類があります。

1. 不動産投資クラウドファンディング
2. 国内REIT(J-REIT)
3. 海外REIT
4. 低予算の賃貸物件

種類によって特徴が異なります。内容を把握して自身に合う種類を選択することも大事です。

不動産投資クラウドファンディング

不動産投資クラウドファンディングは、話題性のある少額の不動産投資の一つでさまざまなプラットフォーム(公式サイト)が立ち上げられています。

不動産投資クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングとは、インターネット経由で不特定多数の小口資金を募り、それをもとに募集主がさまざまなプロジェクトを行ったり商品開発をしたりするスキームです。このクラウドファンディングの形態の一つに不動産投資クラウドファンディングがあります。集めた資金を元手にアパートやマンションなどの賃貸物件を購入・運用し利益を投資家に分配していく仕組みです。

不動産投資クラウドファンディングを始める方法

インターネット上には、不動産投資クラウドファンディング事業者の公式サイトがたくさんあります。投資先ファンド選定の際には、以下のポイントを意識しながらお気に入りのファンドを見つけるとよいでしょう。

・利回り
・対象物件の種類や立地
・募集方式、運用期間
・事業者の信用力
・リスク回避の条件 など

また不動産投資クラウドファンディングの運用開始から終了までの一般的な流れは、次の通りです。

  1. プラットフォームへの会員登録(投資家登録)
  2. ファンドの検討、応募
  3. 契約締結、出金
  4. 運用開始
  5. 分配金の入金
  6. 運用終了

投資額と利回り

不動産投資クラウドファンディングの投資額は、1口1万円の少額~、投資期間は約3ヵ月~1年、利回りは約5~10%(年率)程度が多い傾向です。プラットフォームやファンドを比較して魅力を感じるものを選びましょう。

メリットとリスク

次に、メリットとリスクを説明します。

メリット

1万円などの少額から不動産投資ができる
年率5%以上などの高利回りが期待できる
インターネットで申し込みや運用が完結できる
専門家が運用してくれる

リスク

運用物件の空室
運用物件の不動産評価額の下落
ファンドを運用する事業者の倒産

こんな人におすすめ

不動産投資クラウドファンディングはこんな人におすすめです。

少額の不動産投資を手軽にしたい人
高利回りで運用したい人
1年以内の短期間で資産運用したい人
ネットを活用して効率的に資産運用したい人

不動産投資クラウドファンディングが注目されている理由

2022年における不動産投資クラウドファンディングの市場規模や将来への期待、注目されている理由について解説します。

【不動産クラウドファンディングの市場規模】

不動産クラウドファンディングの市場規模

2022年4月に中小企業季報が公表している論文「類型別に見た国内クラウドファンディングの展開」によると、世界の不動産投資クラウドファンディングの市場規模(2020年)は、約27億7,713万米ドルです。1米ドル140~150円で換算すると約3,888億~4,166億円の市場規模があります。

一方で一般社団法人日本クラウドファンディング協会「クラウドファンディング調査報告書 2021年7月」によると日本の不動産投資クラウドファンディングの市場規模(2020年)は、約60億円です。世界の市場規模と比べると物足りないですが、2018年の約21億円と比較して約3倍も伸びています。これらを踏まえると今後も少額でできる不動産投資として市場拡大が期待できるでしょう。

国土交通省が主導、中古市場の活用にもつながるため期待が高い

2022年時点で広がっている不動産投資クラウドファンディングは、国土交通省の主導による法整備によって可能になった仕組みです。2017年に不動産特定共同事業法が改正されクラウドファンディングに対応した仕組みが整備され実現しました。また国土交通省では、不動産投資クラウドファンディングで社会問題を解決するための施策を打ち出したり、検討会を重ねたりしています。

【不動産投資クラウドファンディングを対象にした一例】
・空き家や空店舗を再生する事業者や自治体への専門家派遣
・まちづくり、ヘルスケア施設の活用を考える検討会

このように不動産投資クラウドファンディングは、国が主導やバックアップしている仕組みとなるため、さらなる発展が期待できます。

国内REIT

REITは、ふだんから上場株式の売買に慣れている人であればすぐに売買を始めることができます。
REIT(不動産投資信託)の仕組みは、投資家から集めた資金でオフィス、ホテル、物流施設などを購入し、それを運用することで賃料を得るものです。またこの賃料から管理コストを差し引いた利益を投資家に分配していきます。日本版のREITを「国内REIT(J-REIT)」といいます。

国内REITを始める方法は?

国内REITは、東京証券取引所に上場されているため、一般の上場株式と同じように証券口座を通して売買できます。株式で株価にあたる「投資口価格」がリアルタイムで変動するのも上場株式と変わりません。2022年9月末時点で東京証券取引所に上場されている国内REITの銘柄は61本、全体の時価総額は約16兆1,400億円となっています。

国内REITには、以下のような分類がありますが、今後市場の拡大や安定性が見込まれる分類・銘柄を選ぶと有利に運用しやすいでしょう。

  • ホテル型
  • 物流施設型
  • オフィス型
  • 住居型
  • 商業施設型
  • これらを組み合わせた総合型 など

個別銘柄を選ぶのが難しい人は、全REITの値動きを平均化した「東証REIT指数」と連動する投資信託を購入する手もあります。

投資金額と利回り

国内REITの1口あたりの投資額は、約5万~78万円(2022年10月18日段階)と銘柄によって大きく異なりますが、銘柄によっては100円という少額から投資することが可能です。国内REITの平均的な分配金利回りは、経済や不動産市場の変化などによって変わってきます。2012年8月~2022年8月では、以下の表のように3~5%前後で推移している傾向です。

一般社団法人不動産証券化協会「J-REIT分配金利回り(10年間)」
(出所) 一般社団法人不動産証券化協会「J-REIT分配金利回り(10年間)

メリットとリスク

国内REITのメリットとリスクを解説します。

メリット

証券口座で手軽に売買できる
収益の大半が投資家に還元される
専門家が運用してくれる

リスク

運用する賃貸物件の空室
金利上昇による資金調達への影響
上場廃止や倒産による影響

海外REIT

REITには、海外版を選択する手もあります。2021年1年間の騰落率で見ると国内REITよりもハイパフォーマンスです。
国内REITも海外REITも仕組み自体は変わりません。違う点を挙げるとすれば国内REITが国内不動産を運用するのに対し、海外REITでは海外不動産を運用することです。また国内REITは、個別銘柄・投資信託が選べるのに対し、海外REITは個人投資家が運用しやすいのが投資信託のみという違いもあります。

海外REITを始める方法は?

一般投資家が海外REITを始める方法としては「海外REIT型」の投資信託を買い付けがあります。「先進国株式型」「国内株式型」の投資信託と同様に証券口座を通して手軽に売買が可能です。

投資金額と利回り

「海外REIT型」投資信託は、通常の投資信託と同じように100円の少額から投資が可能です。一方「海外REIT型」投資信託のリターンは、年度によって変動があります。2021年で見ると「海外REIT型」の投資信託は、分類別の年間騰落率で1位の50.4%でした。(QUICK資産運用研究所 調べ)「国内REIT型」投資信託の年間騰落率の約20%と比べると30ポイント以上の開きがあります。

メリットとリスク

国内REITと同様のメリットとリスクに加え、海外REIT特有のリスクとして「カントリーリスク(戦争や経済の不安定など)」と「為替リスク」があります。為替リスクは「為替ヘッジあり」の銘柄を選べば緩和することが可能です。

低予算の賃貸物件

現物不動産でも方法によっては、少額の不動産投資が可能です。
低予算の賃貸物件とは、格安の区分マンションや戸建て住宅を購入し運用することで賃料を得る方法です。入居者・物件の管理は「投資家本人が行う」「管理会社に委託する」といった2つから選べます。

低予算の物件で賃貸経営を始める方法は?

不動産投資サイトや不動産会社の資料などで情報を得て賃貸物件を購入し、入居者を見つけることで賃貸経営が始められます。ただし低予算の賃貸経営は、築古物件やワケあり物件で行うことが多いため、金融機関の融資を受けられないケースが多い傾向です。

投資額と利回り

低予算の賃貸物件における投資額の一例としては、以下のようなものがあります。

  • 地方の戸建て物件:数十万円~
  • 大都市の区分マンション:数百万円~ など

こういった少額で手に入れた物件にうまく入居者付けができれば数十%といった高利回りも可能です。

メリットとリスク

低予算の物件のメリットとリスクについて解説します。

メリット

通常の不動産投資を上回る高利回りが期待できる
通常の不動産投資よりも投資額を少額に抑えられる

リスク

金融機関から融資を受けにくい
空室や家賃下落のリスクがある
修繕費用がかさむケースがある

少額の不動産投資をいくつか組み合わせるのも手

本稿では、不動産投資のなかでも少額で行える注目度の高い金融商品にフォーカスして解説してきました。一番魅力を感じたものに絞って投資をしたり、いくつかの不動産投資クラウドファンディングを組み合わせたりするなど選択肢はさまざまです。各商品を組み合わる場合は、それぞれメリットとリスクが異なるため、分散投資の効果が期待できます。

例えば不動産投資クラウドファンディングと国内・海外REITを組み合わせるといった具合です。どれを組み合わせるとバランスよく少額の不動産投資ができるかを自分の投資方針と照らし合わせて考えてみてはいかがでしょうか。

本間貴志
本間貴志
住宅/不動産ライター。WEBライティング実務士(CPAJ)。ビジネス書の編集会社、アスラン編集スタジオ勤務を経て2016年に独立。自身で賃貸経営、住宅購入の経験あり。税金をテーマにした記事の実績も多数あります。

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