一棟マンションの経営に興味がある人は多いようです。しかし、マンション経営をはじめる前の心配事として、費用面が第一に挙げられます。確かに、建築費用やランニングコストをしっかり把握しておかなければ、一棟マンションの経営で成功するのは難しいでしょう。
この記事では一棟マンションに必要な初期費用やランニングコストを分かりやすく紹介します。これから検討したいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
一棟マンション経営の3つのメリット・5つのリスクを知ろう
一棟マンション経営とは、マンションを一棟丸ごと購入または建築して賃貸経営することです。土地と建物を丸ごと所有するという点で、マンション一室のみを購入して賃貸する区分経営と異なります。
一棟マンション経営のメリットは以下の3つです。
・投資規模を拡大しやすい
・資産性が高い
・空室リスクを分散しやすい
一棟マンション経営は、一件の投資で土地全体および複数の住戸を所有できます。そのため、家賃収入および総資産の規模を拡大しやすく、部屋数が多いほど空室リスクを分散することにもつながります。
一方で、一棟マンション経営の主なリスク要因は以下の5つです。
・空室
・家賃滞納
・各種コスト
・修繕
・天災および人災
入居者に起因するリスク、建物に起因するリスクなど多方面のリスクがあるため、リスク要因を理解して回避策を事前に講じておくことが重要です。
一棟マンションの経営に必要な初期費用
一棟マンションの経営に必要な初期費用は2つあります。
・建築費用
・諸費用
これらの相場を知っておくことで、実際に提示される見積の内容について的確に理解できます。
ここでは、一棟マンションを建築するために必要な初期費用について紹介します。
建築費用
マンションの建築費用は、以下に分けられます。
・マンション本体の建築にかかる「本体工事費用」
・建築に付随して生じる「付帯工事費用」
ただし、業者によっては、この2つを区分しない場合もあるため、見積で比較するときには、見積の内容を理解することが重要です。
本体工事費用
本体工事費用はマンションの構造や地域によっても異なりますが、国土交通省の「建築着工統計調査 住宅着工統計 (2022年2月度)」によると、全国と東京都の㎡あたりの平均建築単価はそれぞれ以下のとおりです。
鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | |
全国の㎡あたりの 平均建築単価 | 27万円 | 37万円 |
東京都の㎡あたりの 平均建築単価 | 33万円 | 39万円 |
坪単価に換算すると下記のとおりです。なお、1坪は約3.3057㎡です。
鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | |
全国の坪あたりの 平均建築単価 | 27万円×3.3=約89万1,000円 | 37万円×3.3=約122万1,000円 |
東京都の坪あたりの 平均建築単価 | 33万円×3.3=約108万9,000円 | 39万円×3.3=約128万7,000円 |
しかし、統計調査のデータは工事費予定額であり、実際の建築費は予定額よりも上がることが多いです。
付帯工事費用
マンションの建築時には、本体工事のほかにも水道やガスを設置する費用であったり、敷地を整地する費用であったりと、さまざまな付帯工事費用が必要です。
この付帯工事費用は、敷地の状況やプランによって金額が大きく異なりますが、本体工事費用の約20%です。
諸費用
一棟マンションの経営には、下記のような諸費用が必要です。これら諸費用は、マンションの規模や依頼する業者などによって差異がありますが、一般的には本体工事費用の約5%かかると言われています。
ローン関係 | ローンを組む際の事務手数料、保証料、団体信用生命保険料など |
---|---|
登録免許税 | マンション完成後に、法務局へ登記申請する際、所有権保存登記・抵当権設定登記にかかる税金 |
司法書士・ 土地家屋士報酬 | 法務局への登記申請を依頼する時にかかる手数料 |
印紙税 | 契約書や領収書などの文書を作成した場合に、課税される税金 |
不動産取得税 | マンションの建築(不動産取得)によりかかる税金 |
火災保険・地震保険 | 火災保険や地震保険に入る際にかかる費用 |
仲介手数料 | 土地購入時など、不動産会社を介して購入した場合にかかる費用 |
・ローンを組む際の事務手数料、保証料、団体信用生命保険料
【事務手数料】
融資を行う際の各種手続に対する手数料です。事務手数料には以下の2種類があります。
「定額型」:借入額を問わず金額が一律
「定率型」:借入額に手数料率を乗じて金額が決まる
借入金および借入期間によってどちらの方がコストを抑えられるかが異なります。双方の「総支払額」をシミュレーションして安い方を選ぶと良いでしょう。
【保証料】
保証会社(契約者がローンを返済できなくなった場合に契約者の代わりにローンの返済を行う会社)に対して支払うコストです。保証料の料金体系には以下の2種類があります。
「外枠方式」:借入金額と融資期間に応じて金額が決まり、一括前払いで支払う
「内枠方式」:金利に上乗せする形で毎月保証料を支払う
利用する金融機関の商品が保証会社の利用を必須としているか、どの保証会社の利用を指定しているかによって、保証料の料金体系および金額が変わるため、融資を受ける前に確認しておきましょう。
【団体信用生命保険(団信)】
住宅ローン返済中に契約者の死亡等により返済ができなくなった場合に、それ以降の返済が保険金によって相殺される仕組みの保険です。
団信への加入が融資の要件とされていることも多くありますが、常に加入必須ということではありません。団信以外の生命保険やその他の資産等で万が一の備えが十分にできており、団信への加入が必須でないならば保険料を削減するためにあえて加入しないというのも選択肢の一つです。
・登録免許税
マンションを建築した、または購入したことで所有権が自分のものになった際や融資を受けるために抵当権を設定する際には、各種登記をする必要があります。
建築した場合に必要な登記:「建物表題登記」「所有権保存登記」
購入した場合に必要な登記:「所有権移転登記」
抵当権を設定する場合に必要な登記:「抵当権設定登記」
各種登記をする際には登録免許税というコストがかかり、金額はその不動産の価格に応じて決まります。税率は原則として以下のとおりです。
所有権保存および抵当権設定の場合:0.4%
売買による所有権移転の場合:2%です(条件を満たせば軽減される場合あり)
・司法書士・土地家屋士報酬
登記をする際の各種手続を司法書士や土地家屋調査士に依頼する場合には報酬が発生します。登記手続をオーナー自身で行うこともできますが、専門的な知識が求められるため、一般の個人オーナーは司法書士や土地家屋調査士等の専門家に依頼するのが得策といえそうです。
いずれも数万円ないし10万円程度はかかるため、相見積もりを取って金額を比較したうえで依頼をしましょう。
・印紙税
印紙税とは、契約書(工事請負契約書や売買契約書、金銭消費貸借契約書等)の課税文書に対する税金で、法定された金額の印紙を契約書状に貼って消印(印鑑などによる割印のこと)する形で納税します。
不動産の売買契約書に課される印紙税は以下の表の通りです。
成約価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超・50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超・100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超・500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超・1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超・5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超・1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超・5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超・10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超・50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
・不動産取得税
不動産取得税は土地や建物を新たに取得(購入、建築、相続等)した際に課される税金です。固定資産税や都市計画税のように毎年課税されるものではなく、取得した際に単発で課税されます。
不動産取得税の税額は、取得した不動産の価格(課税標準額)に税率を乗じて算出されます。標準税率は4%です。
【例】
課税標準額3,000万円の場合:不動産取得税120万円(3,000万円×0.04)
課税標準額1億円の場合:不動産取得税400万円(1億円×0.04)
このように、まとまった金額の税金を支払うことになる可能性もあるでしょう。
・火災保険・地震保険
自然災害によって建物が損傷して修繕費がかかったり、修繕工事中に家賃収入が途絶えてしまったりするリスクに備えて、火災保険・地震保険に加入しておくのが得策です。保険料の支払いは発生しますが、建物の修繕費用や賃貸できない期間の逸失家賃分の金額をカバーできることを考えれば、合理的なリスクヘッジといえます。
損害保険会社や加入するプランを選ぶ際には、その物件が所在する地域や物件構造等を加味して、不要な特約には加入しないなど、加入内容の最適化に努めることが重要です。
・仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社等が媒介する形で物件を購入または売却した際に発生するコストです。売買における仲介手数料の金額は、物件価格(実際に取引が成立した価格)が400万円を超える場合、「成約価格×3%+6万円」(税別)が上限と法定されています。
【例】
成約価格3,000万円:仲介手数料105万6,000円(3,000万円×0.03+6万円+消費税10%)
不動産会社によっては仲介手数料を割り引いてくれるところもあるため、サービスの質や担当者のレベルを落とさない範囲で安い不動産会社を探しましょう。
建築確認申請等手数料
マンションを建築する場合、建物の設計が建築基準法に適合しているかを確認するために専門機関の確認を受ける必要があります。
建築主(オーナー)は、「建築確認」「中間検査」「完了検査」という3つのタイミングでそれぞれ申請手数料を支払います。手数料の金額は建物の床面積によって異なり、床面積が500〜1,000平方メートルのマンションの場合、申請1件あたり15万円ほどがかかるでしょう。
入居者募集費用
空室に入居者を募集するにあたり、広告料というコストがかかる場合があります。広告料とは、空室に入居付けさせた不動産会社(賃貸仲介会社)に対して、その物件の広告に係る費用という名目で支払う成果報酬です。
広告費はエリアや時期によって異なりますが、月額賃料の1〜3ヵ月分であることが一般的な水準です。繁忙期や人気の物件では、広告費ゼロで入居者を見つけられることもありますが、不動産会社に対してより強く訴求するためには広告費を出した方が入居者募集はしやすくなるでしょう。
その他
その他のコストには、入居者募集をしやすくしたり、家賃を上げたりするために、室内や共用部分の設備を充実させるための設備投資等が含まれます。
具体的には、以下のような入居者の生活利便性を向上させるための設備です。
・オートロック
・テレビモニター付きインターホン
・宅配ボックス など
設備投資を行う際には、導入にかかるコストと導入による効果というコストパフォーマンスの視点を持って、賃貸経営者としての判断を行いましょう。
実際に建てられたデザイナーズコンパクトマンションの概算費用
ここでは、実際に建てられたデザイナーズコンパクトマンションを例に必要な初期概算費用を紹介します。マンションの条件は下記のとおりです
東京都23区(所在地)
鉄筋コンクリート造
地下1階地上5階
延べ床面積約300㎡(約90坪)
本体工事費用:約1億3,800万円
付帯工事費用:約2,750万円(本体工事費用の約20%)
諸費用:約750万円(本体工事費用の約5%)
初期概算費用:1億7,300万円
【1億3,800万円+2,750万円+750万円】
こちらの初期概算費用は東京都の平均より少し高いですが、デザイナーズマンションは他の一般マンションとの差別化により、平均よりも高い賃料収入を得られることが多いため、そういった要素も含めて総合的に検討することが大切です。
【もっと詳しく知る】
一棟マンションの経営で発生するランニングコスト
一棟マンションの経営には、年間を通して、さまざまなランニングコストがかかります。
以下のマンションにおいて、各ランニングコストがどの程度になるか見積もってみましょう。
・物件価格:1億円
・固定資産税評価額:土地3,500万円、建物3,500万円
・年間家賃収入:1,000万円
・年間不動産所得:700万円
・融資条件:自己資金2,000万円・融資期間25年・金利2%
ローン返済
マンション経営にあたり、ローンを利用した場合は、毎月のローン返済が必要です。このローン返済は元本分と利息分に分けられますが、利息分のみが確定申告で経費計上が可能です。
ローン返済は、ランニングコストの中でも大きなウエイトを占めるため、収支シミュレーションするなどして、無理のない返済額を設定することが大切です。
本設定の物件では、ローン返済の金額は以下のように見積もられます。
月間ローン返済額:33万9,000円
年間ローン返済額:406万9,000万円
税金
固定資産税および都市計画税を納める必要があります。
毎年1月1日時点で所有している不動産に対して課税され、マンションが所在する市町村から納付書が送付されます。
税額は原則下記のとおりです。
固定資産税:固定資産評価額×1.4%
都市計画税:固定資産評価額×0.3%
本設定の物件では、固定資産税・都市計画税はそれぞれ以下のように見積もられます。
固定資産税:3,500万円×0.014=49万円/年
都市計画税:3,500万円×0.003=10万5,000円/年
また、マンション経営の家賃収入から固定資産税や諸経費を差し引いた利益には所得税が課せられ、住民票の住所地を管轄する税務署へ確定申告する必要があります。
不動産所得(家賃や礼金等から各種経費や控除を差し引いた所得)も給与所得や事業所得と同様に累進課税制度が採用されており、所得が高いほど税率および税額も高くなります。具体的な所得金額と税率の関係は以下の表の通りです。
課税所得の金額 | 税率 | 合計税率 | 控除額 | |
---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | |||
695万円〜899万9,000円 | 23% | 10% | 33% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 43% | 153万6,000円 | |
1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 50% | 279万6,000円 | |
4,000万円〜 | 45% | 55% | 479万6,000円 |
本設定の物件では、所得税(所得が不動産所得のみの場合)は以下のように見積もられます。
所得税97万4,000円/年=年間不動産所得700万円 × 所得税率23% − 控除額63万6,000円
所得金額は家賃や礼金等の収入ではなく、それらの収入から各種経費や控除を差し引いた金額のことであり、収入に対して直接課税されるわけではないという点は認識しておきましょう。
同じく住民税については、住所地の市町村役場へ申告書を提出しますが、確定申告することで住民税の申告書を提出したものとみなされるため、住民税の申告を省略できます。
委託管理費
委託管理費は、一棟マンションの管理を管理会社に委託する場合に支払う経費です。支払う費用は、管理会社や委託する内容によって異なりますが、一般的には家賃の5%程度が相場です。
本設定の物件では、委託管理費の金額は以下のように見積もられます。
年間家賃収入1,000万円×5%=50万円/年
修繕費
一棟マンションの経営では、室内の原状回復以外に屋根や外壁といった外装についても定期的な修繕費が必要です。
また、給湯器やエアコンなどの設備が経年劣化により故障したときの費用は、経営者負担となるため修繕費が発生します。
共有部の共益費
一棟マンションの玄関や廊下、階段、エレベーターといった共有部の光熱費は、通常はマンションの経営者負担です。
入居者から共益費を集金する契約の場合は、集金額を共益費に充てられますが、不足分についてはマンションの経営者が負担します。
損害保険料
損害保険料とは、火災保険および地震保険、それに付す特約に加入するに当たってのコストです。
損害保険に加入しておくことで、災害や事件事故による修繕や逸失賃料、入居者への損害賠償といった多方面のリスク要因をカバーすることができます。保険料は年間1万円ほどであることが多いため、必要な保険および特約には加入しておくことでリスクヘッジをしておきましょう。
マンション経営の費用を抑えるためにできること
マンション経営の収益を上げるためには、どのような対策をすべきなのでしょうか。
ここでは、マンション経営の費用を抑えるためにできることについて紹介します。
建築費用を見直す
建築費用を見直すことは、一番わかりやすい費用の抑え方です。上述した、鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造の全国の㎡あたりの平均建築単価は10万円もの差がありました。鉄骨鉄筋コンクリート造を検討する場合は、本当に必要かどうか見直してもよいでしょう。
また、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造を得意とする業者であれば、比較的リーズナブルな単価で提供してくれることもあります。業者によっても建築費用は大きく左右されます。
資金計画を立ててキャッシュフローを確認する
キャッシュフローとは、家賃収入から各種コスト(ローン返済、支払金利、管理委託費用、税金等)を差し引いて最終的に手元に残るお金のことです。
マンション経営におけるキャッシュフローは、経営のパフォーマンスを測る重要指標の一つであり、キャッシュフローを最大化することがマンション経営の至上命題ともいっても過言ではありません。
綿密な資金計画を立てることで、どれだけのキャッシュフローが出せるか、キャッシュフローを改善させる余地があるのはどの部分かが見えやすくなります。
ランニングコストはもちろん、空室率や入居者募集費用、修繕費といった要素も想定値で織り込むことで、より詳細な資金計画を立てることができるでしょう。
ランニングコストの圧縮
ランニングコストの圧縮は、すぐ目に見える効果ではありませんが、長い目で見れば大きなコスト削減が可能です。特に年間を通して発生する共有部の光熱費や税金については、対策を講じる必要があります。
ほかにも、設備のメンテナンス費用を抑えることで大きなコスト削減につながります。単身者向けの低層マンションであればエレベーターを除くことも有効な手段です。エレベーターのメンテナンス費用は依頼先や内容によって異なりますが、年間で約50万円が必要といわれています。
満室をキープする
安定したマンション経営のためには、満室をキープすることが不可欠で、そのためには、入居希望率を上げる取り組みが重要です。
入居者のニーズに応える機能やデザイン性にこだわることは、入居率や賃料を上げるために必要です。また長期経過後も、他の物件とは違う付加価値が空室リスクを防いでくれます。
入居者のニーズに応えるためには、そのエリアの賃貸需要を把握し、入居者のターゲット像を設定して、彼らが求めるものを客観的に分析するということが重要です。
働き方やライフスタイルの多様化とともに、賃貸マンションに求められる設備も変化し得るため、満室をキープするためには時代の流れとニーズの変化のトレンドを早期に察知することが求められます。
マンション経営の主な収入源は家賃収入であるため、いかにして物件に高い家賃水準で満室をキープするかということを考えましょう。
信頼できるパートナーを見つける
マンション経営を成功させるために大切なことは、信頼できるパートナーを見つけることです。
入居者の確保から経営についてのサポートまで、安心して任せられるかどうかは、パートナーの力量によるところが大きいです。
信頼できるパートナーを見つけるためには、マンション経営について確かな実績がある不動産会社に相談することをおすすめします。信頼できるパートナーは、マンション経営するうえで欠かせない存在です。
マンション経営の3つの収入源
マンション経営における主な収入源は以下の3つです。
・家賃(共益費込み)
・礼金
・更新料
礼金、更新料は一時的な収入であるのに対し、家賃は毎月得られる継続的な収入源であるため、上記3つの中でも特に中心的な収入は家賃収入です。
裏を返すと、一般的なマンション経営における継続的な収入源の大部分は家賃であり、ローン返済や修繕費、税金といった全てのコストを家賃収入から支払わなければいけないということもできます。
建物の経年劣化で家賃が下落したり、空室率が上昇して家賃が途絶えたりすると、マンション経営全体の収支の悪化に直結するということは認識しておきましょう。
建物の日常的なメンテナンスや入居者のニーズに応えたリフォーム、設備の新規導入といった措置を継続的に講じることで、「この物件に住みたい」と思われ続ける住環境づくりを心がけることが重要です。
新築マンションと中古マンションの価格差による3つの違い
同じエリア・物件規模の場合、一般的に新築物件の方が中古物件よりも価格が高い傾向があります。特に一棟マンションの規模だと、新築物件と中古物件で数千万円の価格差があることもあり得るでしょう。
価格差によって、新築物件と中古物件には以下のようなマンション経営上の差が生まれます。
・融資を受ける際のハードル
・購入時の初期費用
・不動産取得税の金額
物件価格が高いということは、より大きな金額の融資を受けることになるため、金融機関の融資審査を通過するために求められるオーナーの属性(年収、金融資産等)のハードルが高くなります。
購入時の初期費用は概ね物件価格に比例するため、物件価格が高いとその分高くなりやすいでしょう。
不動産取得税は取得した不動産の価格(課税標準額)に税率を乗じて算出されるため、価格が高いと税額も高くなります。
新築マンションを選ぶメリット・デメリット
新築マンションでのマンション経営のメリット・デメリットはそれぞれ以下の通りです。
【メリット】
・相場以上の家賃、礼金を設定できる可能性がある
・修繕リスクを抑えやすい
・物件に対する金融機関の評価が高い
新築物件は入居者や金融機関に好印象を与えやすく、修繕リスクを抑えやすいため、マンション経営をスムーズにスタートしやすいといえます。
【デメリット】
・物件価格が高い
・利回りが低くなりやすい
・家賃の下落幅が大きい
新築物件は収益性が高いとはいいにくいため、高い利回りやキャッシュフローを重視する場合は中古物件の方が適切かもしれません。
中古マンションを選ぶメリット・デメリット
中古マンションでのマンション経営のメリット・デメリットはそれぞれ以下の通りです。
【メリット】
・物件価格が比較的安価
・高利回りの物件もある
・資金計画が立てやすい
各号室のこれまでの家賃の推移や修繕履歴といった過去のデータを参照できるため、家賃の下落率や修繕コストの見積りがしやすく、正確な資金計画が立てやすいというのは中長期的なメリットの一つです。
【デメリット】
・入居者募集で苦戦する可能性がある
・修繕リスクが高い
・物件に対する金融機関の評価が低くなる可能性がある
中古物件の中でも築年数が経過した物件は、エアコンや給湯器、エレベーターといった大型設備の経年劣化が進んでいる場合もあり、購入してすぐに多額の修繕コストが発生することがあるかもしれません。過去の修繕履歴を購入前に確認して、大型設備のメンテナンス状況を確認しておきましょう。
一棟マンションの3つの管理方法
購入・建築後の管理方法には以下の3つがあります。
・自主管理
・管理委託
・サブリース
一棟マンション経営に関するオーナーの知識と経験に応じて検討しましょう。
自主管理
自主管理とは、建物管理や入居者対応等の全ての工程をオーナー自身で行う管理方法のことです。
一棟マンションの管理には、建物や設備に関する高度な専門知識、周辺エリアの賃貸住宅マーケットについての理解が求められるうえ、24時間365日いつトラブルが発生するか分からないため、一般の個人オーナーが一人で行うのは現実的ではないでしょう。
管理委託
管理委託とは、管理会社に建物管理の実務全般を委託する管理方法のことです。
現場レベルでの実務は管理会社が行ってくれるため、オーナーは最終的な経営判断(修繕実施の判断、入居者への対応方針の決定等)に専念できます。
管理委託料として、家賃の5%ほどのコストが毎月かかりますが、建物の日常的なメンテナンスや清掃、入居者対応、空室の入居者募集といった現場実務を広く代行してくれるため、コストに見合うサービスといえるでしょう。
サブリース
サブリースとは、マンション一棟を丸ごとサブリース会社が借り上げ、サブリース会社から家賃収入を得るという管理方法です。
サブリースにおいては空室の有無に関わらず一定の家賃収入を得ることができるため、空室リスクの心配がなくなります。一方で、手数料率が管理委託よりも高いことが多いため、収益性は下がるという点は認識しておきましょう。
自己資金ゼロでマンション経営を始められる「オーバーローン」とは?
投資規模の大きさから、マンション経営を始めるには金融機関からの融資を活用するのが一般的です。
融資を活用するにあたって、一定割合の自己資金を求められることが多くありますが、オーナーの属性や物件の評価によっては自己資金ゼロでマンション経営を始められる可能性があります。自己資金ゼロ、すなわち物件価格と購入時の初期費用も含めた金額での融資を「オーバーローン」といいます。
オーバーローンでマンション経営を始める3つのメリット
オーバーローンでマンション経営を始めるメリットは以下の3つです。
・まとまった資金がない状態でもマンション経営を始められる
・投資効率が良い
・手元資金を残しておける
融資を受けるにあたっては数千万円規模の自己資金を求められることもあり得ますが、オーバーローンの場合は手元の自己資金を拠出する必要がないため、投資に回せるまとまった資金が用意できるまで待つ必要がありません。
「購入したい物件はあるけれども手元の資金が足りない」という状況で良い物件を購入できるチャンスを逃すという機会損失を防ぐことができます。
少ない資金で大きな規模の物件を持つということは、レバレッジを効かせて資産規模を拡大ができるため、投資効率が良いといえます。
マンション経営にはランニングコストや突発的な出費がつきものであるため、手元資金を物件購入に回さずに手元に温存しておけるというのは大きな安心材料です。
オーバーローンでマンション経営を始める3つのデメリット
オーバーローンでマンション経営を始めるデメリットは以下の3つです。
・支払い金利の総額が増える
・キャッシュフローが出しにくい
・資金ショートするリスクがある
オーバーローンでは物件価格に加えて頭金と初期費用も含めた金額で融資を受けるため、融資総額および毎月の返済金額が大きくなります。支払い金利の金額は融資総額と比例するため、支払い金利というマンション経営上のコストが増えるということです。
毎月の返済金額が大きくなると、家賃収入との差額が小さくなるため、キャッシュフローが出しにくくなり、資金的に余裕のないマンション経営になりやすいでしょう。
手元資金が少なく、キャッシュフローがあまり出ていない状態でオーバーローンを組むと、突発的な出費を支払うことができず、資金ショートしてしまうリスクがあります。オーバーローンを活用する際も、マンション経営を防衛するための資金として一定の手元資金を確保しておくのが得策です。
マンション経営でのありがちな失敗事例3選
マンション経営においてよく起こり得る失敗事例は以下の3つです。
・税金を滞納してしまう
・自主管理をした結果、適切な管理ができなくなる
・突発的な出費に対応できなくなる
税金を滞納してしまう
マンション経営においては固定資産税・都市計画税、不動産取得税、所得税・住民税をはじめ多くの税金がかかります。
不動産取得税は購入時のみに発生する単発の税金ですが、課税標準額(固定資産税評価額)の3%または4%の金額が課税されるため、物件によっては数百万円規模の請求をされる可能性もあります。購入時の初期費用として、ある程度のキャッシュを確保しておきましょう。
固定資産税・都市計画税、所得税・住民税は毎年課税されるため、ランニングコストとして資金計画に織り込んでおく必要があります。各種税金を資金計画に織り込んでおらず、支払いを滞納してしまうとペナルティとして追加で課税されることもあり得ます。
どの税金が、いくら、いつ課税されるかを正確に把握し、資金計画を立てたり見直したりするタイミングで予め納税用の資金を確保しておくなど、支払い漏れのないように注意しましょう。
自主管理をした結果、適切な管理ができなくなる
自主管理でオーナーが自ら物件の管理をすることで、管理会社に支払う管理委託料というコストを削減することはできます。ただ、一般の個人オーナーにとって管理委託料は削るべきコストではないでしょう。
なぜなら、物件の管理には高度な専門知識や経験値が必要であるうえ、管理上のトラブルはいつ発生するか分からないため、自主管理はオーナーの負担が大きすぎるからです。マンション経営に慣れており、経験と知識のある人員を賃貸管理に割ける法人等の場合は自主管理でも問題はありませんが、一般の個人オーナーは管理会社に管理を委託するのが得策といえるでしょう。
管理委託料を削減するために自主管理をした結果、管理が行き届かず、空室率が上がったり家賃が下落したりするのは本末転倒といえます。
突発的な出費に対応できなくなる
マンション経営をしていると、設備の故障やそれに起因する二次被害、自然災害による建物の損傷といった突発的な要因による出費がいつ発生するか分かりません。給湯器や排水管、エレベーターといった大型の設備が故障すると、一気に数十万円ないし数百万円の修繕費が発生する可能性もあります。
突発的な出費に備えるため、損害保険に加入しておく、修繕費として常時一定のキャッシュを確保しておくといったリスクヘッジ策を事前に講じておくと良いでしょう。
修繕費が支払えず、修繕をしないまま放置してしまうと被害が拡大して修繕費がさらに増大したり、入居者から損害賠償を請求されたりすることにもなりかねないため、突発的な出費に対する備えはマンション経営においては非常に重要です。
マンション経営の費用に関するよくある質問
マンション経営の費用に関するよくある質問について、以下2つ解説します。
Q.初期費用はどれくらいかかるのか?
一棟マンションの経営に必要な初期費用は、以下の2つです
建築費用(本体工事・付帯工事)
諸費用(ローン諸費用、各種税金、仲介手数料、保険料等)
東京都における本体工事費用の平均建築単価は以下の通りです。
鉄筋コンクリート造:33万円/平方メートル
鉄骨鉄筋コンクリート造:39万円/平方メートル
付帯工事費用は概ね本体工事費用の約20%、諸費用は概ね本体工事費用の約5%かかります。
Q.ランニングコストはどれくらいかかるのか?
マンション経営におけるランニングコストには以下のような項目があります。
・ローン返済
・税金(固定資産税・都市計画税、所得税・住民税)
・委託管理費
・修繕費
・共用部分の水道光熱費
・損害保険料
ランニングコストの金額は、融資条件(期間、金利等)や設置される設備の状況等によって大きく異なります。
上掲ランニングコストのうち、修繕費はコストの発生時期および金額の正確な予測が困難であるため、毎月のキャッシュフローの中から修繕用の資金として一定額を積み立てておく等の備えをしておくと安心でしょう。
【関連ebook(無料)】
>>【無料小冊子】不動産投資ローンマニュアル - 仕組みから審査攻略法までを解説
>>【無料小冊子】40の金融機関と接する融資のプロがコロナ禍でも融資を引き出せる方法を解説
【あなたにオススメ】
・人生100年時代には2000万円の貯蓄が必要!貯金では簡単ではないが、不動産投資なら可能性が高まる
・今日からできる!収益不動産の価値を見極める3つの評価方法
・資産運用としての不動産投資の位置づけ
・話題の海外不動産投資はアリなのか?を正しく判断できる5つの視点
・好調が続くREIT投資のメリットとデメリット、今から買うのはアリか