アパートローンの審査は物件の収益性が重要?落ちた時の対処法も紹介
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

アパートローンは、不動産投資を行うために利用するローンで、通常の住宅ローンよりも審査が厳しいのが特徴です。このアパートローンの審査に通過するためには、投資する物件の収益性や本人の属性の高さが求められます。

なおアパートローンとは、木造アパートを建てる際に利用するローンのように思われがちですが、RC造マンションなどの投資物件を購入・建築する際にも利用できます。アパートローンは不動産投資の時に利用するローンと思っておきましょう。

本記事では、アパートローンの審査基準や重視される項目、審査に落ちた時の対処法などについて紹介します。

目次

  1. アパートローンの審査の特徴
  2. 物件に関するアパートローンの審査基準
  3. 本人属性に関するアパートローンの審査基準
  4. アパートローンの審査では事業計画書も重視される
  5. アパートローンの審査の流れと必要書類
  6. 物件の収益性を高めるためにできること
  7. 審査に落ちたときはどうすればいい?
  8. アパートローンの審査に通るために物件価値と属性を高めよう
  9. アパートローンに関するよくある質問

アパートローンの審査の特徴

アパートローンの審査では、「物件の収益性」と「本人の属性」の2つが確認されます。不動産投資では、物件を貸し出して得られる家賃収入からローンを返済するのが一般的なので、収益性が高いと見込まれる物件は審査の際に高く評価されます。

また、空室が出た場合は給与や預貯金から返済するケースもあるため、借り入れる人の属性もアパートローンの審査で重視されるポイントになります。日頃から少しでも属性を高めておく努力が必要です。

物件に関するアパートローンの審査基準

アパートローンの審査では物件のどのような点が評価され、どのような点がマイナスになるのか確認しておきましょう。

物件の収益性

アパートローンは家賃収入から返済されるので、融資審査では物件の収益性が重視されます。収益性の高い物件とは、築年数が浅い、立地が良く生活の利便性が高い、設備が充実しているなどの条件を満たしている物件のことです。

反対に築年数がかなり経過していて設備も老朽化しているような物件は、空室リスクが高いので収益性が低いと判断されます。また、駅から遠い物件もマイナス評価になります。

物件の担保価値

万が一アパートローンの返済が不能になった場合、金融機関は物件を競売にかけるなどして回収を図ります。そのため、物件の担保価値がどれくらいあるかを厳しく見極めます。その際に判断基準になるのが、建物の構造や耐用年数です。

新築のRC造マンションは法定耐用年数が47年あるので、評価が高くなります。木造アパートは22年とマンションに比べて耐用年数が少ないため、審査では不利になるでしょう。中古の場合は、築年数やリフォームの有無などでも評価が変わります。

本人属性に関するアパートローンの審査基準

物件の収益性や担保価値と並んでアパートローンの審査で重視されるのが、ローンを組む本人の属性です。

当然ながら、アパートローンを利用する場合、毎月ローンを返済する義務が発生します。なんらかの事情で債務者が返済できなくなると、金融機関に損失が生じてしまいます。

そのため、アパートローンは各金融機関が独自に定めている条件を満たさなければ利用することはできません。では、アパートローンを利用するために審査される項目にはどのようなものがあるのでしょうか。

年収や勤務先

アパートローンを毎月問題なく返済できるかどうかを判断するために、利用者自身の年収が確認されます。実際には家賃収入からローンを返済できる場合でも、何かしらの理由で家賃収入が減る可能性があるからです。

家賃収入が減り、月々の返済額を下回った場合は、自己資金から返済する必要があります。そのため、年収は重要な審査項目になります。

また、収入の安定性を判断するために、勤務先や勤続年数も確認されます。公務員や上場企業の会社員は倒産リスクが低いため、属性が高いと評価されます。反対に中小企業に勤務している人は倒産リスクや減収リスクが高く、個人事業主は年度によって収入にばらつきがあるので属性の評価は低くなります。

夫婦共働きの世帯は本人と配偶者の所得を合算できるため、独身者よりも審査において有利になることも重要なポイントです。

健康状態

多くの金融機関は、アパートローンを利用する際に団体信用生命保険に加入することを条件にしています。団体信用生命保険に加入すると、債務者が死亡したときなどに金融機関に保険金が支払われ、残ったローンの返済に充てられるため、遺族に債務のない物件を遺せます。

この保険に加入できないと、死亡などのもしもの時に、ローンを返済できなくなる可能性があります。そのため団体信用生命保険に加入できない健康状態の場合には、審査に通りづらくなってしまいます。

団体信用生命保険の保険料は、ローンの金利に上乗せして支払うのが一般的です。上乗せされる金利は商品や特約の有無などで異なりますが、0.1~0.4%程度といわれています。ローンの利息は増えますが、他に加入している生命保険を解約してバランスを取ることもできるでしょう。

年齢

年収や健康状態の項目と関係してくるのですが、借り入れ時の年齢が高いと定年後などに収入が少なくなる可能性があるため、審査は厳しくなります。返済中に亡くなったり、病気になってしまったりしたら、返済できなくなる可能性もあります。

そのため高齢の場合には、返済期間を短く設定されるケースもあります。返済期間が短くなると月々の返済額が大きくなるため、資金計画にも大きく影響してしまうでしょう。

なかには、完済年齢を75〜80歳以下に設定している金融機関もあります。長期間のローンを組みたいなら、早めにアパートローンの利用を開始する必要があります。一般的に最長返済期間は35年なので、完済年齢上限が75歳の金融機関なら40歳までに契約することが目安になります。

自己資金

マンション経営の自己資金の相場は、物件価格の約1~3割といわれています。自己資金が多ければ頭金として入れられるだけでなく、運転資金としても利用できるため経営の安定につながり、金融機関からの評価も高くなります。

自己資金をローンの頭金にすることによって、月々の返済額が少なくなるため、自己破産リスクが減ります。そのため頭金を多く払った場合には、金利を優遇してくれる金融機関もあります。

一方、頭金を入れずにフルローンで購入する場合は、自己資金が少ないことによって審査に通りづらくなります。フルローンはかなり立地の良い物件か、属性が極めて高くなければ難しいと考えるべきでしょう。

また、自己資金を頭金として使わなくても、自己資金を貯めた実績が評価されます。自己資金を貯められる計画性があれば、自己破産するリスクは低いと判断されるからです。

これまでの不動産投資実績の有無

これまで、不動産投資を行ったことがあるか、実績の有無を重視する金融機関もあります。不動産投資に限らず、分散投資はリスクを軽減するための基本的な方法です。

すでに不動産投資を行っていて物件を保有しているなら、そちらの運用実績が加味され、審査で有利に働く場合があります。過去の不動産投資がうまくいっていたのであれば、今回融資する不動産も成功する可能性が高いと判断されるからです。

また、失敗しても他の不動産の利益で補填できるため、自己破産もしづらくなります。

アパートローンの審査では事業計画書も重視される

アパートローンの審査を受ける際は、事業計画書を提出します。事業計画書には「計画地や建物の概要」「想定家賃や総事業費」「資金計画や収支計画」、そして「ターゲットにする入居者を想定した物件コンセプト」などを記載します。

事業計画書を作成する際には、現実的な計画を記入することが大切です。金融機関への印象を良くしようと多めの収益を見込んだ計画を立てても、プロが見れば過大な収益計画と判断され、逆効果になる場合があります。

アパートローンの審査の流れと必要書類

次に、アパートローンの審査の流れと必要書類を確認しておきましょう。なお、区分マンションの購入では不要なものもあるので、取引する不動産会社に確認する必要があります。

アパートローンの審査の流れ

アパートローンの審査は、以下のような流れで行われます。

  1. 仮審査を申し込む
    主に個人の属性が審査され、融資実行の可否が判断されます。審査期間は数日程度です。

  2. 物件の購入または建築の契約を締結する
    仮審査に通った場合は、売主や建築会社との間で購入や建築工事の契約を結びます。契約の際は、契約書に融資特約を盛り込んでおくことが大切です。

  3. 本審査を受ける
    購入または建築の契約を締結した後、本審査を受けます。仮審査に通っていても、物件の評価によっては審査に通らないこともあるので注意が必要です。

  4. 金融機関と融資の契約をする
    本審査に通ったら、金融機関と融資契約を結びます。契約においては金融消費貸借契約によって金利や返済期間などの条件が明文化されますので、慎重に確認しましょう。

  5. 物件を取得する
    契約後、物件の取得と引き渡しが行われます。融資の実行は引き渡し後になるので、手付金や中間手付金が不足する場合はつなぎ融資を受けることを検討しましょう。

アパートローンの審査で必要な書類

アパートローンの審査において必要になる主な書類は、下表のとおりです。

書類名備考
本人確認書類身分証明書(マイナンバーカード等)、住民票
源泉徴収票個人事業主の場合は確定申告書
納税証明書税務署の窓口またはオンラインで請求
職務経歴書-
金融資産の証明書類-
実印および印鑑登録証明書-
売買契約書-
物件概要書および重要事項説明書-
レントロール物件の賃貸借契約状況一覧(不動産会社に請求)
登記簿謄本および公図法務局で取得
借入返済予定表すべてのローンの返済予定表を提出
団体信用生命保険申込兼告知書-
建築確認済証法令を遵守した建物であることを証明する書類
※金融機関や物件タイプによって必要書類が異なる場合があります

物件の収益性を高めるためにできること

アパートローンの審査では、物件の収益性が重視されます。ここでは物件の収益性を高めるためにできることを3つ紹介します。

立地条件がよい物件を選ぶ

大都市圏の駅から徒歩数分といった立地条件が良い物件を選ぶと、収益性が高まります。好立地物件の条件として「東京23区内駅徒歩10分以内」が不動産業界のコンセンサスとして知られています。

立地条件が良い物件は賃貸需要が高く、空室リスクを避けられます。そのため、家賃を高く設定でき、高い収益性が見込めます。

立地条件が良い物件はリセールバリュー(再販売価値)も高く、中古物件になっても価格があまり落ちません。東京カンテイが発表している「首都圏駅別築10年中古マンションのリセールバリューランキング2021」を見ると、1位の東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」のリセールバリューは211.1%で、新築時の販売価格の2倍以上になっています。

30位まではリセールバリューが新築時の1.5倍前後であることから、立地条件が良い物件を購入することの大切さがわかります。

収益性の高い構造を選ぶ

物件が収益性の高い躯体構造であることも高く評価されるポイントです。アパートやマンションは、以下のような構造に分けられます。

・木造
・鉄骨造(S造)
・鉄筋コンクリート造(RC造)
・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)

下に行くほど耐震性、耐火性、防音性が優れており、付加価値が高いため、家賃を高く設定できます。鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は法定耐用年数が47年と長いため、減価償却の面でも有利です。

また、耐久性も高いため、資産価値が落ちにくいのがメリットです。資産価値が落ちないことで、家賃が下落するのを防ぎ、売却時の価格も高くなります。

ただし、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の場合、壁が厚かったり梁や柱が多かったりすることから、部屋が狭くなってしまうデメリットがあります。

マンション建築の実績やノウハウがある会社なら、そういったデメリットを解消することも可能です。そのため、構造だけでなく建築会社の選別も非常に重要です。

アパートローンの審査は物件の収益性が重要?落ちた時の対処法も紹介
※画像提供元:株式会社LeTech

ランニングコストを圧縮する

アパート経営では、「ローン返済額」「メンテナンス費」「賃貸管理委託料」「固定資産税」などの支出が発生します。これらの支出をいかに減らすかが、収益性を上げるポイントになります。

まず、建築計画の際には本当に必要な設備かどうかなど十分に検討しましょう。例えば、低層マンションであれば、エレベーターを削ることで大きなコスト圧縮につながります。

ローンの返済額を減らすためには、金利の低い金融機関で借りることが大切です。また、経営が順調で資金に余裕がある時に繰り上げ返済を行うと、月々の返済額が少なくなります。

自主管理の場合は日頃からこまめに清掃や点検を行い、修繕箇所があれば早めに手当てすることでメンテナンス費を削減できます。

委託管理の場合は、管理体制に優れた管理会社を選ぶと資産価値を維持しやすくなります。良い管理会社を選ぶことが、結果的にランニングコストの圧縮にもつながるのです。

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審査に落ちたときはどうすればいい?

アパートローンの審査は物件の収益性が重要?落ちた時の対処法も紹介

いろいろな対策をしても、アパートローンの審査に落ちてしまう場合があります。しかし、もし審査に落ちてしまっても諦める必要はありません。

ここでは、アパートローンの審査に落ちたときの対処法について紹介します。

金融機関を変える

アパートローンの審査基準は、金融機関によって違います。そのため、一度は断られた融資が、違う金融機関で審査をしたら通ったということはよくある話です。

特に金利が安い金融機関には多くの人が融資を申込みます。金融機関はその中からリスクの小さい人を選別して、融資します。そのため、少しでもリスクがある人は審査に通らない可能性があります。

一方、金利が高い金融機関では、ある程度のリスクを許容して融資を行っているので、審査に通りやすい傾向があります。

もし、審査に落ちても諦めず、他の金融機関に相談してみましょう。

時間を空ける

アパートローンの審査に落ちた場合、時間を空けてみるのも効果的です。確定申告の時期になれば、去年より年収が増えて条件をクリアできるかもしれません。また、申し込んだ時期がたまたま悪く、金融機関の事情で融資を制限していた可能性もあります。

なお、審査に落ちた直後に同じ金融機関で再審査を受けるのは禁物です。審査に落ちた記録が残っているため、再度審査に申し込んでも通ることはありません。

収支計画を見直す

前述したとおり、アパートローンの審査では収益性も重視されます。そのため、収支計画が甘いと審査に通らない場合があります。

収支計画を見直し、不動産経営が成功する可能性が高いことを証明しましょう。経営がうまくいく具体的な計画を示すことができれば、自己破産するリスクは低いと判断され、審査に通りやすくなります。

プロに相談する

金融機関の融資審査では、紹介者の情報も加味される場合があります。そのため、専門家に金融機関を紹介してもらうのもおすすめです。

また専門家にアドバイスをもらい収支計画を見直すことで、金融機関を説得できる資料も作成できるでしょう。ローン審査に通らない場合はもちろんのこと、ローンをできるだけ低金利で借りたい場合にも、専門家に相談することをおすすめします。

アパートローンの審査に通るために物件価値と属性を高めよう

アパートローンの審査に通るためには、物件価値と本人の属性を高める必要があることを確認しました。

物件価値を高めるためには満室を期待できる好立地物件を購入する必要があります。また、建物の構造が鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)なら耐震性・耐火性・防音性に優れているため、物件価値が高くなります。日頃から不動産投資について学び、常に物件をリサーチすることで、優良物件に出会える可能性が高くなるでしょう。

一方で、本人の属性は急に高めることができません。不動産投資を志したら早めに融資を受けたい金融機関で定期積金を始めるなど、自己資金を多く用意することが大切です。他にも勤務先をやたらと変えない、重大な病気にかからないように健康に留意する、なるべく年齢が若いうちに始めるなど、属性を高める方法はいくつかあります。

また、不動産会社とつながりを持っておくことも有効なので、不動産投資を検討し始めたら、気軽に不動産会社を訪ねてみるとよいでしょう。

アパートローンに関するよくある質問

Q.アパートローンの審査では何が見られる?

アパートローンの審査では物件の収益性や担保価値、ローンを組む本人の属性が見られます。本人の属性で見られる項目は「年収や勤務先」「健康状態」「年齢」「自己資金」「これまでの不動産投資実績の有無」などです。

Q.アパートローンの審査に通る基準は?

購入する物件がローンの返済を確実に行えるような収益性の高い物件であること、空室が出た場合に給与収入や預貯金などで返済できる能力がある高い属性であること、この2つの条件をクリアしていれば審査に通りやすいといえます。

Q.アパートローンの審査に落ちた時の対処法は?

アパートローンの審査に落ちた場合は、以下のことを行うとよいでしょう。

・金融機関を変える
金融機関によって審査基準が異なるので、別の金融機関では審査に通ることがあります。

・時間を空ける
年度が変わると確定申告による年収が増え、融資条件を満たす可能性があります。

・収支計画を見直す
収支計画が甘くて審査に落ちた場合は見直して、経営が成功する可能性が高いことを証明できれば審査に通ることがあります。

・プロに相談する
不動産会社などのプロに相談し、収支計画を見直して、金融機関を説得できる資料を提出することも有効です。

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