インターネットを使ってできる新しい資金調達方法としてクラウドファンディングの普及が進んでいます。クラウドファンディングは、大きく分けると「購入型」「寄付型」「融資型」「投資型」があり、それぞれに募集方法が異なるのが特徴です。
本記事では、クラウドファンディングのやり方と4つの方法のメリット・デメリット、人気クラウドファンディングの特徴について、ランキングを交えて紹介します。
目次
- 1.クラウドファンディングとは何か
- 2.購入型クラウドファンディングのメリット・デメリット
- 3.購入型クラウドファンディングの魅力とは?
- 4.寄付型クラウドファンディングのメリット・デメリット
- 5.融資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
- 6.投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
- 7.クラウドファンディングのやり方
- 8.支援者が応募してリターンを受け取るまでの流れ
- 9.クラウドファンディングの目標額を達成するためにやるべきことは?
- 10.クラウドファンディングを行う上での注意点
- 11.クラウドファンディングにかかる税金を知っておこう
- 12.クラウドファンディングサービスの事例
- 13.人気のクラウドファンディングサイトを徹底比較
- 14.人気クラウドファンディングサイトの口コミをチェック
- 15.クラウドファンディングについてよくある質問
1.クラウドファンディングとは何か
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の群衆(Crowd)から資金調達(Funding)する仕組みのことです。これまで資金調達するには「金融機関から融資を受ける」「国や地方自治体の融資制度を活用する」などが一般的でした。しかし不確実性の高い新規事業の場合は、金融機関などの審査に通りにくく結局自己資金を投じて事業を行うしかないケースも多かったのです。
クラウドファンディングの仕組みを有効活用することでプロジェクトに賛同する個人から出資を受けることが期待できます。冒頭で記載したようにクラウドファンディングの募集方法は、大きく分けると「購入型」「寄付型」「融資型(金融型ともいう)」「投資型」の4つがあります。クラウドファンディングをやりたいと思った場合、自分のプロジェクトにふさわしい方法を選びます。
1-1.日本におけるクラウドファンディングの市場規模の推移
株式会社矢野経済研究所の調べによると、2020年度の日本のクラウドファンディングの市場規模は1,841億円(新規プロジェクト支援額ベース)と前年比17.6%増えています。2016年度の約716億円に比べると大幅に増えていますが、必ずしも右肩上がりで増えているわけではありません。特に2021年度は、新型コロナウイルスの影響で大幅に減少する見込みです。
1-2.海外のクラウドファンディングの市場規模
アメリカのクラウドファンディグプラットフォーム会社であるFUNDLY社が公表したデータによると、2019年の世界のクラウドファンディングの調達額は以下のとおりです。
地域 | 年間収益額 |
北米 | 172億米ドル |
アジア | 105.4億米ドル |
欧州 | 64.8億米ドル |
南米 | 8,574万米ドル |
オセアニア | 6,880万米ドル |
アフリカ | 2,416万米ドル |
世界全体の調達額はおよそ340億米ドルです。最も多いのが北米で172億米ドル、次いでアジアの105.4億米ドルとなっています。
1-3.クラウドファンディングは一般的な資金調達とどう違うのか
一般的な資金調達には、銀行や公庫などから融資を受けたり補助金・助成金を受けたりするなどの方法があります。融資や補助金を受ける場合は、審査に通れば確実に資金調達が可能です。一方でクラウドファンディングは、事業者の審査に通ったとしてもサイトに掲載したプロジェクトに期待したほどの資金が集まらなければ目標の資金調達額に達しない場合があります。
逆にプロジェクト内容が評価され予想以上に資金が集まることもあるため、募集を開始してみないと調達できる金額がわからないのが特徴です。また融資の場合は、借入金は返済しなければなりませんが、クラウドファンディングは「購入型」のように商品やチケットなどで返礼すればよいものや「寄付型」のように返済不要なものもあります。
このように調達方法の多彩さでは、クラウドファンディングが有利といえるでしょう。次章では、クラウドファンディングの4つの募集方法について詳しく紹介します。
2.購入型クラウドファンディングのメリット・デメリット
購入型クラウドファンディングの仕組みとメリット・デメリットは、以下の通りです。
2-1.購入型クラウドファンディングの仕組み
購入型クラウドファンディングは、商品開発や店の開業などに必要な資金を集めるためのプロジェクトを公開し、出資した人へ金銭以外の物品や権利をリターンとして付与する募集方法です。購入型クラウドファンディングには、目標とする金額に達した場合のみ開始される「All or Nothing型」と目標金額の達成に関わらず開始される「All in型」の2つがあります。
2-2.購入型クラウドファンディングのメリット
個人やグループでも参加でき小規模な案件でも起案が可能なことです。またインターネット上でプロジェクトを公開することで商品などの宣伝になるメリットもあります。本来なら広告は別に行いますが、資金調達と宣伝を兼ねて行えることで広く商品や企画を認知してもらうことが可能です。
2-3.購入型クラウドファンディングのデメリット
宣伝になることの裏返しですがプロジェクトを発表した段階でアイデアを盗用されるリスクがある点はデメリットです。また募集資金が満額に達しなかった場合、プロジェクトが中途半端に終わる可能性があります。「All or nothing型」を選択した場合は、目標未達のとき出資者に返金しなければならず手間がかかる点はデメリットです。
3.購入型クラウドファンディングの魅力とは?
購入型クラウドファンディングは、4つの募集方法のなかでは最も起案しやすい方法といえます。商品やチケットなど特典の内容がわかりやすいため、出資者を集めやすいのがメリットです。
3-1.起案者になるための制約がない
寄付型のような制約がなく誰でも手軽に起案者になれるのが大きな魅力です。企業・団体に限らず個人で起案者になることもできます。例えばインディーズでのCD発売や小規模な映画の製作などメジャーな会社で扱わないプロジェクトが向いているでしょう。コアなファンが出資者になるケースもあります。
3-2.自分たちのビジョンを伝えられる
起案者にとってプロジェクトを通して自分たちのビジョンや思いを伝えられるのも大きな魅力です。単に商品を購入してもらうだけでなく自分たちの存在を社会に知ってもらえることで活動の励みにもなるでしょう。
3-3.特典によって双方にメリットがある
購入型は、出資者に特典として完成した商品やチケットなどを送付しますが、発売前に先行して手に入るなどのプレミアを付ければ欲しい人からの出資が受けやすくなります。起案者も商品を事前にPRできることでWebを使った広告代わりになる点もメリットです。
4.寄付型クラウドファンディングのメリット・デメリット
寄付型クラウドファンディングの仕組みとメリット・デメリットは、以下の通りです。
4-1.寄付型クラウドファンディングの仕組み
寄付型クラウドファンディングは、クラウドファンディングサービスを通して寄付金を募る募集方法です。まずクラウドファンディングサイトに寄付してほしいプロジェクトの内容や目標金額、掲載する画像やテキストなどを提出します。その後プロジェクトの審査で承認されるとクラウドファンディングサイトに掲載されプロジェクトがスタートする仕組みです。
一定期間経過後に集まった寄付金が支払われるため、プロジェクトに共感して寄付してもらえるような魅力的な募集内容にする必要があります。
4-2.寄付型クラウドファンディングのメリット
出資者に対して物品やサービスのリターンを付与する必要がないことはメリットです。活動報告やお礼状を送る程度なので集まった資金のほとんどをプロジェクトに使うことができます。
4-3.寄付型クラウドファンディングのデメリット
起案者になれる対象が限定されることです。例えばクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」では、自治体や学校法人、認定NPO法人、公益社団・財団法人など特定の法人格に利用が限られています。
5.融資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
融資型クラウドファンディングの仕組みとメリット・デメリットは、以下の通りです。
5-1.融資型クラウドファンディングの仕組み
融資型クラウドファンディングは、お金を借りたい企業と貸したい投資家をマッチングさせる募集方法でソーシャルレンディングと呼ばれることもあります。借手(起案者)と貸手(出資者)が共にクラウドファンディング事業者を介してお金の貸し借りを行う仕組みです。借手は、事業運営で得た利益から事業者に元本と利息を返済します。
事業者は、そのなかから手数料を差し引き残ったお金を貸手へ分配するのです。融資型は、他の3つのタイプに比べて金銭でのリターンを求める投資の性格が強い募集方法といえるでしょう。
5-2.融資型クラウドファンディングのメリット
融資型クラウドファンディングのメリットは、他の募集方法と違い金利収入という資産運用の側面があるので、投資する人を集めやすいことです。ファンドにおける元本の価格変動がないことから比較的安全性が高いといわれています。ただし、融資先からの返済遅延や倒産等によるデフォルトの可能性があるため、完全な元本保証ではありません。
5-3.融資型クラウドファンディングのデメリット
融資型クラウドファンディングは借入金利の幅が大きいのがデメリットです。「キャンプファイヤー・オーナーズ」という事業者の例では 3.0〜8.0%が中心ですが、事業内容によってさらに高い金利になる場合があります。融資期間中は毎月資金使途と借入目的にズレがないかの確認もあり、クラウドファンディングだからといって銀行よりチェックが甘いというわけではありません。
また、クラウドファンディングサービスで募集しているテーマがやや偏っているというデメリットがあります。不動産、エネルギー関連が目立ち、「オーナーズブック」のように不動産に特化した事業者も存在します。自分の事業内容がそのサイトが扱っているテーマに合っているか確認する必要があります。
6.投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
投資型クラウドファンディングには「株式型」「ファンド型」があり、仕組みとメリット・デメリットは以下の通りです。
6-1.投資型クラウドファンディングの仕組み
株式投資型クラウドファンディングは、スタートアップ企業などがクラウドファンディングサイトを使って自社株の買い手を募集する資金調達方法です。資金調達したい企業は、一般的に会社情報や貸借対照表、損益計算書、事業報告書など会社経営に関する書類の提出が求められます。プロジェクトが開始されると資金調達の内容が投資家に公開されその情報に基づき投資家が出資を判断する仕組みです。
リターンは、主に「株式」または「新株予約権」になります。ファンド投資型クラウドファンディングは、特定の事業に対し個人投資家の出資を募集する資金調達方法です。出資者は、ファンドの売上金のなかから分配金や場合によっては商品などの特典を受け取ることができます。
6-2.投資型クラウドファンディングのメリット
通常は株式を上場することで資金を調達できますが、投資型クラウドファンディングであれば未上場でも資金を募ることが可能です。
6-3.投資型クラウドファンディングのデメリット
投資型クラウドファンディングは比較的新しい手法であり、国内での実績が少ない点はデメリットにもなるでしょう。また、上場するまでの期間が長いケースが一般的であることから、二の足を踏む出資者が少なくないようです。
7.クラウドファンディングのやり方
自分がプロジェクトの起案者として利用するためにクラウドファンディングのやり方を確認しておきましょう。プロジェクトの立ち上げから終了まで以下のような手順で行います。
7-1.1.プロジェクトの内容を設定する
まず何をやりたいのか、プロジェクトの内容を設定します。出資者を集めるには、目的や計画内容が明確でなければならないため、多くの人から共感を得られるようなコンセプトづくりが重要です。
7-2.2.クラウドファンディングサイトを選ぶ
プロジェクトを公開するクラウドファンディングサイトを選びます。人気のサイトには、多くの案件が公開されているため、公式サイトを確認して自分が起案したいプロジェクトと同じ傾向の案件が多く掲載されているサイトを選ぶことも一つの方法です。
7-3.3.クラウドファンディングサイトにプロジェクトを登録する
クラウドファンディングサイトにプロジェクトのタイトルや目標金額、プロジェクトの内容、サムネイルに表示する画像、お礼の内容、連絡先などを登録します。
7-4.4.プロジェクトに対する審査を受ける
プロジェクトは、審査があるため必ず掲載されるとは限りません。プロジェクトを実行に移せるかは、事業者が決定します。例えば反社会的な事業であれば通らない可能性が高いでしょう。また内容によっては、事業者が改善点をアドバイスして掲載に至る場合もあります。
7-5.5.プロジェクトが開始される
審査に通ればプロジェクトが開始され資金集めのスタートです。1人でも多くの出資者を集めるためには、サイト任せではなく自分のSNSなどでもPRする必要があります。
7-6.6.閲覧者・出資者への報告
プロジェクトの途中経過を報告すると効果的です。「あと〇〇円で目標達成!」などとPRすることで出資を迷っている人の決断を促すことにつながるかもしれません。出資者も途中経過を知ることでプロジェクトを達成できるかどうかの目安になります。
7-7.7.プロジェクト終了、支援者へのお礼発送
プロジェクトが達成されると事業者から手数料を差し引いた出資金が起案者に振り込まれます。購入型の場合は、完成した商品やチケットなどを出資者に発送、寄付型ならお礼状を送りましょう。プロジェクトにブログや公式サイトがある場合は、プロジェクトが実行されたときの様子などを報告すると次のプロジェクトを立ち上げたときも継続して出資してもらえる可能性があります。
8.支援者が応募してリターンを受け取るまでの流れ
一方の支援者は、次のような流れでプロジェクトを支援することができます。
8-1.1.クラウドファンディングサイトでプロジェクトの内容を確認する
クラウドファンディングサイトにアクセスして、プロジェクトの内容やリターンを確認して支援するプロジェクトを選びます。
8-2.2.質問があれば問い合わせて支援をするか決定する
支援したいプロジェクトを決めた後は、質問などあれば問い合わせて納得できれば支援を決定しましょう。
8-3.3.募集期間内に決済をして支援を実行する
プロジェクトに記載されている募集期間内にクラウドファンディングサイトで出資金を決済して支援を実行します。
8-4.4.募集期間終了後、起案者が公開する活動報告でプロジェクトを確認
募集期間が終わった後、起案者が公開する活動報告でプロジェクトの進捗状況を確認します。
8-5.5.リターンを受け取る
分配金や商品、チケットなどプロジェクトごとに決められているリターンを受け取ります。
以上が基本的な流れですが、サイトごとに細かい点が異なる場合もあるため、各サイトを十分に比較して検討しましょう。
9.クラウドファンディングの目標額を達成するためにやるべきことは?
クラウドファンディング目標額を達成するために必要な4つのやるべきことを紹介します。公開初日に向けて計画的に準備を進めることが大切です。
9-1.プロジェクトに合ったクラウドファンディングサイトを選ぶ
クラウドファンディングサイトは、それぞれに募集方法や得意とするジャンルが異なります。公式サイトの内容を比較し自分のプロジェクトに合ったサイトを選ぶことが大切です。ジャンルに合ったサイトに掲載することでアクセスする支援者が多くなることが期待できます。
9-2.プロジェクトとリターンをセットで考え魅力を高める
目標額を達成するためには、プロジェクトの内容だけでなく出資したいと思わせるリターンもセットで考えることが大切です。分配金だけでなくプロジェクトの関連商品を特典に加えることで、より魅力的なリターンに感じてもらうことが期待できます。リターンのない寄付型でもプロジェクトの報告書を送付することで好感度のアップにつなげることができるでしょう。
9-3.初日までSNS等で発信して注目度を高める
舞台公演などと同様に「初日を迎えるまでにいかにプロジェクトへの注目度を高めておくか」が成功のポイントです。個人やグループでブログやSNSをやっている場合は、公開数ヵ月前から内容を発信しておくとよいでしょう。
9-4.プロジェクトのページを魅力的なものにする
インターネットサイトにとってページデザインは、最も大切な要素です。事業者のサイトには、一定のフォーマットがあるかもしれません。しかし見映えのよい写真やカラフルなイラスト、わかりやすい図表を入れるなどの工夫を行うことでより一層魅力的なページとなります。
10.クラウドファンディングを行う上での注意点
クラウドファンディングを行う上では、以下の4つの注意点を確認しておきましょう。実際にプロジェクトが始まってから「こんなはずではなかった」と後悔しないように問題点を解決してから応募することが大切です。
10-1.注意点1:プロジェクトの内容が批判を受ける可能性がある
公開したプロジェクトは共感する人ばかりとは限らず、内容によっては批判を受ける可能性があります。悪い内容を拡散されないようにコメントの文面に注意し、記載した情報に間違いがないかも入念にチェックするようにしましょう。
10-2.注意点2:プロジェクトのアイデアが盗まれるリスクがある
商品等の完成前にプロジェクトが公開されるため、第三者にアイデアを盗まれるリスクがあります。優れた商品企画であれば盗まれた被害は大きくなることから、あらかじめ特許を出願するなどの対策を講じておくことが必要です。
10-3.注意点3:目標の金額に達するまでの時間が読めない
クラウドファンディングでは、目標の金額にいつ達するか時間が読めない点には注意が必要です。期限が決まっているプロジェクトでは、金融機関から融資を受けたほうがよい場合もあります。
10-4.注意点4:公開したプロジェクトはネット上に残る点に注意が必要
支援者が出資したプロジェクトの内容をいつでも確認できるようにプロジェクト終了後もネット上に残るのが一般的です。目標金額に達しない場合でも簡単に削除できない点は念頭に置いておきましょう。
11.クラウドファンディングにかかる税金を知っておこう
クラウドファンディングは、募集方法や立場(出資者か起案者か)によって課税の有無や税金の種類が異なります。各募集方法にかかる税金の有無は、以下の通りです。
11-1.購入型クラウドファンディングにかかる税金
出資者は、商品を購入するだけなので非課税です。起案者が個人の場合は、受けた出資に対して所得税、法人の場合は法人税が課税されます。ただしリターンと比較してあまりに出資額が多い場合は、贈与税が課税される場合があるので注意が必要です。
11-2.寄付型クラウドファンディングにかかる税金
寄付型は、個人・法人のどちらかによって課税の有無が異なります。
- 起案者と支援者が共に個人の場合
支援者に税金は発生しませんが、起案者が受け取った支援金は贈与税がかかります。(年間110万円以下は非課税) - 起案者が個人で支援者が法人の場合
支援者は限度額まで必要経費になりますが、起案者には一時所得として所得税がかかります。(他の一時所得と合わせ年間50万円以下は非課税) - 起案者が法人で支援者が個人の場合
支援者に税金は発生しませんが、起案者には法人税がかかります。 - 起案者と支援者が共に法人の場合
起案者は限度額まで必要経費になりますが、支援者には法人税がかかります。
11-3.融資型クラウドファンディングにかかる税金
出資者が個人の場合、受け取った分配金は雑所得として所得税が課税されます(他の雑所得と合わせ年間20万円以下は非課税)。起案者が個人でプロジェクトの事業により利益を得た場合は所得税、法人が利益を得た場合は法人税の納付が必要です。
11-4.投資型クラウドファンディングにかかる税金
融資型と同じく出資者が個人の場合、受け取った分配金は雑所得として所得税が課税されます。起案者が個人でプロジェクトの事業により利益を得た場合は所得税、法人が利益を得た場合は法人税の納付が必要です。融資型(貸付型、ソーシャルレンディングと呼ぶ場合もある)を投資型クラウドファンディングのなかに含める分類の仕方もあります。
12.クラウドファンディングサービスの事例
クラウドファンディングサービスの事例として代表的なサービスを6つ紹介します。個人でも起案しやすいサイトや株式型・ファンド型など企業でないと難しいものもあるため、自分のプロジェクトに適したサイトを選定することが必要です。
12-1.Makuake(マクアケ)
サイバーエージェント傘下の株式会社マクアケが運営するクラウドファンディングサービスです。ファッションや飲食店、映画製作、日本酒販売など多種多彩なジャンルの案件を扱っています。サイトには、応援の気持ちを込めて購入するという意味で「応援購入」と表示しているのが特徴です。応援購入金額の歴代最高額(2022年3月24日現在、以下同)は「チェーンレス電動アシスト自転車」。
目標金額110万円に対して6億2,365万600円(2021年6月)の出資金が集まりました。目標金額が小さいプロジェクトでもアイデア次第で億単位の出資金が集まる可能性があるのが購入型クラウドファンディングの魅力です。
12-2.CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
テレビCMでもおなじみの国内最大級のクラウドファンディングサービス。アート・写真や音楽、アニメ・漫画、舞台・パフォーマンスなど芸術系の案件が多く掲載されているのが特徴です。支援総額が最も多かったプロジェクトは「世界最小のモバイルカラープリンター」で、目標金額100万円に対し、3億3,472万942円(2020年3月)の資金が集まりました。
株式会社CAMPFIREは、融資型に特化した「CAMPFIRE Owners」など複数のクラウドファンディングサイトを運営しています。
12-3.READYFOR(レディーフォー)
社会貢献性の高いプロジェクトが多いことで有名なクラウドファンディングサービス。寄付金と支援金の両方を取り扱っています。主な案件カテゴリーは、新型コロナウィルスや子ども・教育、医療・福祉など他の事業者とは一線を画す内容です。成立プロジェクトで支援総額が最も多かったのは「新型コロナウィルス感染症:拡大防止活動基金」の7億2,646万5,000円(2020年7月)でした。
サポート体制が充実しているため、安心してプロジェクトに取り組むことが期待できるでしょう。
12-4.Good Morning(グッドモーニング)
CAMPFIREグループの社会問題と向き合う人を対象にしたクラウドファンディングサービスです。例えばアフリカの農家の所得向上を目指すプロジェクトや徳島県で森のなかに小学校を開校するプロジェクトなど社会的に有意義なプロジェクトが多数起案されています。これまで最も多くの支援金が集まったのは「寝たきりでも働ける『分身ロボットカフェ』実験店常設化プロジェクト!」です。
出資総額は、目標金額1,000万円に対し4,458万7,000円(2021年5月)でした。
12-5.FUNDINNO(ファンディーノ)
ベンチャー企業に投資できる日本初の株式投資型クラウドファンディングです。日本証券業協会の調査による株式投資型クラウドファンディング国内シェア1位(2021年度)の事業者として知られています。出資する投資家にとっては、投資先が成長および将来IPO(新規株式公開)して大きな利益を得られる可能性がある点が魅力です。
2022年3月時点で最も多く応募額があったのは、位置情報データを「見える化」し位置情報から必要な情報を取得できる仕組みを構築したクロスロケーションズ株式会社(新株予約権)でした。目標金額2,475万円に対して上限応募額9,900万円(2021年6月)の資金をわずか15分33秒で集めています。
12-6.セキュリテ
経済的な価値と社会的な価値の両方を追求する仕組みのインパクト投資プラットフォームです。支援者は、共感した事業に出資して売上に応じた分配金や特典を受け取ることができます。「ファンド」「プロジェクト」「寄付」の3つのカテゴリーで出資可能なだけでなく、サイト内でファンド事業者の商品購入も可能です。
2022年3月時点のプロジェクトで最も出資額が多かったのは「日比谷音楽祭制作プロジェクト」で823万8,000円(2019年6月)です。
13.人気のクラウドファンディングサイトを徹底比較
人気のクラウドファンディングサイトを見てきましたが、ここからは紹介した6つのサイトを具体的な数字を挙げて比較してみます。
13-1.人気クラウドファンディングの手数料はどれくらい?
人気クラウドファンディングサイトの手数料ランキングは、下表の通りです。手数料には、別途消費税がかかります。また、手数料のほかに審査料などがかかるサービスもありますので、詳しく知りたい方は各公式サイトを確認しましょう。
順位 | サービス名 | 手数料 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | セキュリテ | 0% | 購入者側のファンド購入手数料は5~8% |
2 | Good Morning | 9% | 14%から9%に引き下げ。手数料4%+決済手数料5% |
3 | READYFOR | 12% | 手数料7%+決済手数料5% |
4 | CAMPFIRE | 17% | 手数料12%+決済手数料5%(購入型クラウドファンディングの場合) |
5 | FUNDINNO | 20% | 2度目以降は15% |
5 | Makuake | 20% | 決済手数料込み |
セキュリテは、ファンド型クラウドファンディングのため、資金調達側の手数料はかかりません。他は9〜20%と手数料の差が大きい傾向です。しかし20%の手数料のMakuakeは、集客力が高く出資金がたくさん集まる可能性があるため、一概に手数料だけで判断できない面があります。
13-2.各クラウドファンディングサイトの累計調達金額ランキング
各クラウドファンディングサイトで公表している累計調達金額のランキングは、下表の通りです。
順位 | サービス名 | 累計調達金額 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | CAMPFIRE | 約574億円 | 2022年3月24日時点 |
2 | READYFOR | 約200億円 | 2021年4月時点 |
3 | セキュリテ | 約107億円 | 2022年3月24日時点 |
4 | FUNDINNO | 約79億円 | 2022年3月24日時点 |
5 | Good Morning | 約26億円 | 2021年2月時点 |
- | Makuake | 非公表 | 2021年9月期約215億円(1年間) |
Makuakeはサイト上での公表はしていませんが、2021年9月期1年間だけで215億円を集めており、集客力が高いことから上位と推定できるでしょう。
13-3.各クラウドファンディングサイトの新規案件数ランキング
クラウドファンディングサイト新規案件を公式サイトから集計したランキングは、以下の通りです。サイトの基準では、募集が終了したもの以外を新規案件とする例が多く見られます。純粋な新着案件ではない場合があるため、注意が必要です。おおむね「残り日数」が多いほうが新しい案件と考えられます。
サービス名 | 新規案件数 | 新規案件のタイトル | |
---|---|---|---|
1 | Makuake | 1,064件 | New! |
2 | CAMPFIRE | 1,000件 | 注目の新着プロジェクト |
3 | READYFOR | 629件 | 新着のプロジェクト |
4 | Good Morning | 383件 | 新着+募集中プロジェクト |
5 | セキュリテ | 33件 | 募集中 |
6 | FUNDINNO | 4件 | 募集中のプロジェクト |
購入型のように規模が小さいものは案件数が多くなり株式型など規模の大きいものは案件数が少なくなる傾向です。プロジェクトの内容が異なるため、案件数のみで人気を比較するのは難しいでしょう。
14.人気クラウドファンディングサイトの口コミをチェック
紹介したクラウドファンディングは、どの程度の評価を得ているのでしょうか。代表的な人気クラウドファンディングサイト3事業者の口コミ評価を確認しておきましょう。内容は起案者、支援者の両方の視点からのものです。
14-1.Makuakeの口コミ
Makuakeの良い口コミと悪い口コミは、以下のようなものがありました。
【良い口コミ】
・Makuakeは有名なので資金を調達できるだけでなく、宣伝効果も高い
・まだ完成していない商品を応援購入できるので、新しいものが好きな人におすすめ
【悪い口コミ】
・支援のつもりで購入したものの、届いた商品はあまり良いものではなかった
・コマーシャルをやっていて達成率も高いので購入したが、商品が届くのが遅い
14-2.CAMPFIREの口コミ
CAMPFIREの良い口コミと悪い口コミは、以下の通りです。
【良い口コミ】
・プロジェクトの紹介ページが見やすい
・活動報告があるので、プロジェクトが日々進行している様子がわかり楽しい
【悪い口コミ】
・キャンセルしようと思ったが、問い合わせフォームを送信しても返事がない
・リターンの商品到着が遅れても連絡がない
14-3.READYFORの口コミ
READYFORの良い口コミと悪い口コミは、以下のようなものがあります。
【良い口コミ】
・プロジェクトが成立しないときに返金制度があるのが魅力
・スタッフが丁寧にサポートしてくれた
【悪い口コミ】
・プロジェクトページの審査で修正の依頼が多く、公開になるまで時間がかかった
・初めて買った商品が画像とかなり違った
※あくまで口コミですので、内容が事実であることを保証するものではありません。
クラウドファンディングは、プロジェクトの内容が支持されれば誰でも資金を集めることができる新しい資金調達方法として今後も普及することが予想されます。購入型クラウドファンディングなら個人でも起案者になれるため、銀行融資が難しい場合は利用を検討してみるのもよいでしょう。
※本記事はクラウドファンディングのやり方の概要を紹介するものであり、特定のサービスを推奨するものではありません。また記事中の各数値は2022年3月24日調査時点のものです。内容は変動する場合があるため、サービスを利用する際は各事業者の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
15.クラウドファンディングについてよくある質問
最後にクラウドファンディングについてよくある質問をまとめておきます。
15-1.Q:クラウドファンディングとは何ですか?
A.インターネット上で不特定多数の群衆(Crowd)から資金調達(Funding)する仕組みのことです。金融機関の融資が一定額なのに対し、クラウドファンディングは公開してみないと集まる金額がわからないのが特徴です。
15-2.Q:クラウドファンディングの募集方法は?
A.大きく分けると「購入型」「寄付型」「融資型(金融型ともいう)」「投資型」の4種類があります。「寄付型」「融資型」「投資型」は、法人の起案に向いている募集方法です。「購入型」は、個人でも起案者になれるため、最もやりやすい募集方法といえます。
15-3.Q:クラウドファンディンにはどんなトラブルがあるのでしょうか
A.クラウドファンディングのなかでも特に購入型・寄付型などでトラブルが発生しています。例えば以下のようなトラブルが多い傾向です。
- リターンの送付が遅れる
- 活動報告がされない、報告頻度が少ない
- リターンの内容や仕様が約束と異なる
- リターンの商品に不具合があるなど
15-4.Q:サイトに払う手数料はどれくらい?
A.クラウドファンディングサイトに払う手数料は約9〜20%です。事業者や利用するクラウドファンディングの種類によっても異なる可能性があるため、比較して検討する必要があります。
15-5.Q:税金はかかるのでしょうか
A.クラウドファンディングに出資して分配金を得た場合や起案者になってプロジェクト事業で利益を得た場合、個人には所得税、法人には法人税が課税されます。ただし非課税枠以内の金額なら課税されない場合もあるため、わからないときは税理士などの専門家に相談しましょう。
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