日本の超高齢化社会は、人生100年時代とも呼ばれ喜ばしい一方でさまざまな問題を引き起こしていることも事実です。例えば認知症や身体の問題、高齢化した場合の住まいの考え方、もし介護施設に入居したい場合、どう探したらよいかなど悩みは尽きません。一番大変なケースは、認知症を発症し片づけがままならなくなり家中に物があふれることです。
例えば重要書類となる家の権利関係の書類や預金通帳、生命保険証書などがどこにあるのか、いざというときに検討もつかなくなることは深刻でしょう。本人だけでなく子供や親族なども資産の有無が分からないため、全体を把握するのが困難になります。そのため60歳を過ぎたらそろそろお金回りの身辺整理を考えてみてはいかがでしょうか。
今回はシニアがお金回りの片づけをどこから始めたらよいかなど子供や親族に迷惑をかけない片づけ方について解説していきます。
シンプルに暮らすためにお金回りの管理を
基本的にできるだけシンプルに暮らすことを目指していきましょう。いわゆる断捨離を開始し「どこに何が保管されているか」について書き出すことからスタートします。その際将来的にはエンディングノートに発展していくことになる「整理手帳」を作成すると管理がしやすいでしょう。手帳が苦手な人にはデジタルのエンディングノートもあります。
特にお一人様の場合、自分に万が一のことがあると誰かに託しておくことが必要です。そういった依頼先についても考慮すべき内容の一つといえるでしょう。ここでは最低限記しておきたい以下の5つの情報について紹介します。
- 銀行口座
- クレジットカード
- 不動産関係の書類
- 生命保険などの加入状況
- 借金の整理
1 銀行口座
日本人は銀行口座の開設数が他国と比較して多い傾向があります。その理由の一つとして考えられるのは「日本の銀行が口座管理手数料を取らない」ということです。無料で口座開設ができ口座維持手数料もかからないことが多いため、気軽に開設できることはメリットでしょう。しかし無造作に開設してしまうと自分でもどこにいくらあるのかさえ分からなくなってしまう可能性があります。
2018年1月1日から「休眠預金等活用法」が施行されました。最終異動日が2009年1月1日以降で最後に異動日から10年経過している口座は、休眠口座として取り扱われることとなったのです。もちろん休眠口座になる前は通知が来ますが口座名義人と連絡が取れなければ預金保険機構に移管されてしまいます。
ただし休眠口座となった場合でも自分の資産が消滅するわけではなく必要な場合は手続きをすることで引き出すことは可能です。
2 クレジットカード
キャッシュレス決済の推進によりクレジットカードを持つ機会も増えているのではないでしょうか。特に年会費のかかるクレジットカードの場合、自分以外が保有していることを知らなければ解約しないかぎり自動的に年会費を引き落とされることになります。普段使いのクレジットカードでもキャッシングや未払い分がある場合、残された家族に対する負債として相続対象となるため注意が必要です。
キャッシュレス決済といってもクレジットカードだけではなくQRコード決済のようなスマホで利用するものもあります。これらに残高を入れておくと気づかれることなくそのままになる可能性もあるためチェックが必要です。すべてのクレジットカードや決済手段を解約するのは現実的ではないため、必要に応じて最低限のクレジットカードに絞り込んでいくことを検討するとよいでしょう。
3 不動産関係の書類
相続で大きなウェイトを占めるのが自宅や別荘などの不動産です。そのため不動産関係の書類は子供と共有しておくとよいでしょう。特に大切なのは、購入時の価格が分かる書類です。例えば相続した不動産を売却した場合の譲渡所得は「売却した金額-購入時の価格」で算出します。しかし購入時の価格が分からない場合は、売却した金額の5%を概算取得費とみなされてしまうのです。
特に新しい物件の場合、取得費が明確になっていないと税金の負担が大きくなってしまう可能性があります。そのため必ず不動産関係の書類(住宅ローン契約書や請負契約書など)は相続人が分かるところに保管しておきましょう。
4 生命保険などの加入状況
終身保険や医療保険、がん保険など生命保険関連の証券の情報は共有しておきましょう。万が一入院したり亡くなったりしたときに契約している保険会社へすぐに連絡が取ることができます。特に終身保険は、葬儀費用としてかけているケースもあるでしょう。これらをすぐに使うことができれば葬儀時の費用の面でも子供たちにとっては安心です。入院や手術が必要な場合も保障内容を確認しやすいでしょう。
また自宅の火災保険や各種損害保険・自動車を所有している場合は自動車保険などもすぐに分かるところにまとめておくとスムーズに伝達することができます。
5 借金の整理
自営業や会社経営者という場合は、事業資金として金融機関から融資を受けているケースは多い傾向です。特に多方面から借り入れをしている場合、「どこからいくら借りているか」を一覧にしておく必要があります。もし借入金をそのままにして亡くなった場合は、経営者保証がついていなければ個人の財産に影響はありません。しかしついている場合は負の遺産として相続人に引き継がれます。
負債の相続を回避する方法として「相続放棄」「限定承認」といった方法がありますがいずれも相続を知った日の翌日から3ヵ月以内に申し立てをすることが必要です。個人が多方面から借り入れを行っていた場合、相続財産がプラスかマイナスか調べてもなかなか解明できず相続税の申告期限の10ヵ月以内に間に合わない可能性もあります。
そのためできるだけ生前や認知症になる前に相続人が分かるような一覧にしておくと安心です。
まとめ
現代のシニア層の最大の壁は、認知症と相続です。残された子供たちに迷惑をかけない方法としてできるかぎりシンプルに生活してみてはいかがでしょうか。余分な物は断捨離をして身軽にすることがシニアの片づけの第一歩です。
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