(本記事は、井上 達也氏の著書『起業を考えたら必ず読む本』の中から一部を抜粋・編集しています)
売掛金はとにかく早く回収する
会社のキャッシュフローを悪化させる理由のひとつが売掛金です。
できれば経営が軌道に乗る前は、お客様には現金販売か前金でお願いしましょう。もしそれが難しい場合でも、納品時にはお金をもらえるように交渉したいものです。
会社はいくら赤字でも倒産しませんが、お金がなくなったら、スグに倒産してしまいます。これは、中小企業も大企業も同じです。そのため、お金を残すことを念頭に入れる必要があります。
もし、「当社は末締めの翌月末でないとお支払いできません」という会社なら取り引きを止めることも検討しましょう。額が小さいならまだいいのですが、額が大きい場合には急速にキャッシュフローが悪化します。
たとえば、仕入れは月初の1日に現金で払い、入金が翌月の末日ならば2か月間もお金がない状態が続きます。銀行から借り入れをしているならばなおさらです。先方の金利をあなたが負担することになってしまいます。
また、お客様が倒産したり、商品にクレームを入れてきた場合には入金されない可能性もあります。初めてのお客様なら、お金を払わずにとんずらする可能性もあります。いずれにせよ、お客様に事情を話して先払いしてもらうか、支払いを早くしてもらえるように交渉すべきです。
同時にあなたの支払い、つまり買掛金の支払いはなるべく遅くしてもらうように交渉します。
オススメなのは、20日締めの翌月末払いです。
例えば月の21日に仕入れをした場合、支払いは翌々月の末日になりますから最長70日間、支払いの猶予ができます。先方が承諾してくくれるかどうかはわかりませんが、交渉してみる価値は十分にあります。
利益が出ているのにお金が足りない現象を知る
決算になり税理士から「おめでとうございます。黒字です。つきましては税金をお支払い下さい」と言われます。
「そうか、頑張ったかいがあったな。オレはすごい経営者なのかもしれない」多くの人がまんざらでもない気分になります。
そして預金通帳を見ると……、「あれっ、お金がない!」とビックリするのです。
「儲かっているのに、お金がないなんて、そんな馬鹿な。何かに使ったかなぁ。いや使ってないぞ。じゃあ、なんでお金がないんだ。不思議だ」
実は、よくこんなことが起こり得ます。理由は簡単です(図1)。
先ほどお話しした、キャッシュフローを悪くする2人組、在庫と売掛金が出てきましたね。
図1を見ると、現金はゼロなのに、利益が100万円も出ています。利益が出ていますから、もちろん税金を支払わなければなりません。
儲かってはいるのです。黒字なんです。でも現金がないのです。
次に銀行からお金を借りている場合です(図2)。
儲かったお金が銀行への支払いで消えているパターンです。銀行からお金を借りた現金は全部使い切ったけど、黒字になった。でも支払いだけは残っている場合です。銀行に毎月返済できているというのは、やはり儲かってはいるのです。黒字なんです。でも現金がないのです。
利益が出ているのにお金がないというのは、この2つのパターンがほとんどです。
たまに黒字倒産という言葉を聞きますよね。会社は黒字でも赤字でもお金がなくなったら、会社は倒産してしまうんです。
儲かっていても、黒字であっても、常に資金繰りはチェックしておくべきなのです。
株式会社日本デジタル研究所(JDL)を経て1991年に株式会社セイショウシステムテクノロジー(現、フリーウェイジャパン)を設立。
同社は、クラウド業務系システムを開発・提供しており、そのユーザー数は11万を超える。
ベンチャーキャピタルからの出資なしで事業を拡大できたのは、著者の斬新な戦略発想に依るところが大きい。
その力を頼って、上場企業を含めた様々な業界の経営者から相談されることも多く、積極的に他社を支援している。
無類のお酒好きで、Facebookなどを通じて読者と交流するなど、多様な面を持ち合わせている。
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