スタートアップ企業・ベンチャー企業に出資し、ハイリターンを得るスキームには「ベンチャーキャピタル」と「エンジェル投資」があります。どちらも最近、国内で市場を拡大させている分野なので、スタートアップ企業・ベンチャー企業への投資に興味がある人は知っておきたいカテゴリです。ベンチャーキャピタルとエンジェル投資の仕組み・メリット・デメリットなどについて解説します。
目次
1.ベンチャーキャピタルとエンジェル投資の大きな違いは
ベンチャーキャピタルとエンジェル投資は、スタートアップ企業・ベンチャー企業に出資をしてハイリターンを得ることを目指すという目的は同じです。ただし両者にはプロジェクトの規模で大きな違いがあります。
ベンチャーキャピタルは基本的に金融機関・事業会社・政府などが出資するスキームです。対象企業への出資規模は全体で数億円単位になることが多いです。一方のエンジェル投資は、個人投資家である程度資金力があれば、気軽に投資することができます。対象企業への出資規模は全体で百万円、千万円単位が主流です。両者の違いをさらにくわしく見ていきましょう。
2.ベンチャーキャピタルとは
ベンチャーキャピタルとは、未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業に出資することでその株式を取得し、将来その企業が上場(またはバイアウト−M&A)した際、その株式を売却することで利益を得ることを目指す投資会社や投資ファンドのことです。
2-1.ベンチャーキャピタルの種類
一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会の資料によると、同協会に加盟するベンチャーキャピタルは200社超となっています(2018年度・CVC含む)。近年その数は増加傾向にあります。
ベンチャーキャピタルには「金融機関系」「独立系」「政府系・大学系」などの種類があります。同じベンチャーキャピタルでも目的や性格が異なります。
・金融機関系ベンチャーキャピタル
大手金融機関や保険会社が母体のベンチャーキャピタルです。豊富な資金力を生かしビックプロジェクトの強力なバックアップも可能です。一例として「SMBCベンチャーキャピタル」「三菱UFJキャピタル」「みずほキャピタル」などがあります。
・独立系ベンチャーキャピタル
原則、特定の母体のないベンチャーキャピタルです。各社に独自色があり、自ら上場を果たしている「ジャコフ」、投資先の経営体制にコミットすることで知られる「グロービスキャピタルパートナーズ」、海外ネットワークを持つ「日本アジア投資」などがあります。
・大学系ベンチャーキャピタル
大学発のスタートアップ企業などを支援するベンチャーキャピタルです。「東京大学エッジキャピタル」や「大阪大学ベンチャーキャピタル」などがあります。
この他、公的資金をベースにしている政府系のベンチャーキャピタルや地域密着型の地域系ベンチャーキャピタルなどがあります。
2-2.銀行とベンチャーキャピタルの違い
銀行がスタートアップ企業などにお金を提供する場合は「融資」になります。あらかじめ約束した期日に利子と元本を返さなくてはなりません。これに対して、ベンチャーキャピタルがお金を提供する場合は「投資・出資」になります。資金提供を受けたスタートアップ企業はお金を返済する必要がありません。その代わりに自社の発行株式を提供します。
2-3.ベンチャーキャピタルの仕組み
ベンチャーキャピタルは、金融機関や事業会社などから資金を募ります。これを元手にファンドを組成し、スタートアップ企業・ベンチャー企業の資金提供を行う代わりに株式を取得します。資金提供した企業が成長し上場を果たすことで、この株式の価値が向上した上で売却し、リターンを得ることを目指します。
ベンチャーキャピタルを介して、スタートアップ企業に出資する際にはリスクも存在します。ベンチャーキャピタルには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
2-4.ベンチャーキャピタルのメリット
ベンチャーキャピタルを介して、ベンチャー企業・スタートアップ企業に投資をするメリットとしては、ファンドを運営するベンチャーキャピタルに投資先企業を精査してもらえることが挙げられます。ベンチャー企業・スタートアップ企業の成長可能性を判断するのは難しいことですが、ベンチャーキャピタルの有するノウハウでその確度を高めることができます。
もちろん、ハイリターンを得られる可能性があるという点は、ベンチャーキャピタルの最大のメリットでしょう。上場を達成すれば他の投資方法では得られないようなリターンを手にすることも期待できます。
2-5.ベンチャーキャピタルのデメリット
ベンチャーキャピタルのデメリットは、出資金を回収できないことがあることです。大きく出資を行っても、思ったような利益が得られないどころか、損失を抱えてしまうこともあります。上場を目指していたのに、結局上場を果たせないこともあるでしょう。このデメリットを軽減するためには、実績のあるベンチャーキャピタルを選択するのが有効です。
3.ベンチャーキャピタルかエンジェル投資か
これまで見てきたベンチャーキャピタルへの参画は、個人投資家にとってかなりハードルが高いことはご理解いただけたと思います。一方の「エンジェル投資」は同じベンチャー企業やスタートアップ企業・ベンチャー企業の資金支援でも、個人投資家が選択しやすいスキームです。
3-1.日米差が大きいエンジェル投資
日本国内においてエンジェル投資の市場は徐々に広がっていますが、アメリカと比べると大差がついています。みずほ情報総研がまとめたレポートによると、2018年のエンジェル投資額を比較すると日本の43億円に対し、アメリカの投資額は2兆5,505億円です。実に600倍以上の差がついています。
日本でエンジェル投資が拡大しない一因として、同レポートではアメリカではエンジェル投資家が数多くのコミュニティ(グループやネットワーク)を形成しているのに対し、日本では同様のコミュニティがほとんど見られない点を挙げています。
3-2.エンジェル投資のメリット
ベンチャーキャピタルと比べると出資に参画するハードルが低く、少額かつ手軽に出資できます。国内のエンジェル投資のプラットフォームのなかには、1口10万円からスマホでカンタンに出資できるものもあります。一定の要件を満たす場合、出資金の一部または全額を所得控除できる「エンジェル税制」が活用できるのも魅力です。
3-3.エンジェル投資のデメリット
ベンチャーキャピタルと同様、出資したスタートアップ企業・ベンチャー企業が上場できずに資金が塩漬けになる、あるいは倒産によって元手が失われるといったリスクがあります。プラットフォームごとに企業を精査しているとアナウンスしていますが、このチェック機能が甘いと頓挫・倒産のリスクが一気に高まります。
4.これからの企業を資金で応援!
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資というスキームがあることで、これから日本の経済を背負って立つ企業になるかもしれない勢いのある若い企業が資金面でバックアップしてもらえます。社会にとって有益なプロジェクトでも、資金が不足していれば立ち行かないこともあります。しかし、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資によってこの課題が解決できます。もし、ベンチャー企業やスタートアップ企業の支援にご興味があるのであれば、エンジェル投資を検討してみてはいかがでしょうか。
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