リバースモーゲージと不動産担保ローンは、どちらも自宅などの不動産を担保にして生活資金や老後資金を用意しやすい仕組みです。この記事の前半では、両者の共通点と違いを解説します。後半では、利用時の注意点、実際の金利例などのテーマを取り上げます。
リバースモーゲージと不動産担保ローンの共通点
まずはリバースモーゲージと不動産担保ローンの共通点から確認していきましょう。不動産を担保に融資をしてもらえること、そして、所有権を変更しなくても済むことが両者の共通点です。
自宅などの不動産を元手にまとまった資金を得る仕組みには「リースバック」もあります。しかし、リースバックはいったん不動産を売却した上で、それをリースする(家賃を払って借りる)契約のため、所有権が移転します。自分名義の家にずっと住み続けたい人は、リバースモーゲージまたは不動産担保ローンの選択になります。
リバースモーゲージと不動産担保ローンを比較 5つの大きな違い
リバースモーゲージと不動産担保ローンを比較したときの大きな違いは次の5つです。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
- 借入金の受取方法
- 元本の返済タイミング
- 融資割合
- 不動産の最終的な扱い
- 利用できる年齢
大きな違い1:借入金の受取方法
不動産担保ローンで借りたお金は、一括で受け取るのが普通です。これに対して、リバースモーゲージのお金の受取方法は、金融機関ごとに様々です。一例では、三井住友信託銀行の場合、次の3つの受取方法を用意しています。
- 一括で受け取る
- 年1回一定額の範囲内で引き出せる
- 設定された融資枠の範囲内で自由に引き出せる
他の例では、東京スター銀行は、融資枠の範囲内で引き出せる方法のみを採用しています。また、定期的に決まった額を受け取る年金形式を採用している金融機関もあります。
大きな違い2:元本返済のタイミング
融資してもらったお金は、当然ながら返済しなくてはなりません。ただ両者は元本返済のタイミングが違います。不動産担保ローンは、通常のローンのように毎月一定の元本を返済していくのが基本です。つまり、毎月の支払いは「利息と元本の一部」となります 。
これに対して、リバースモーゲージの元本返済のタイミングは、契約者が亡くなったとき(例:亡くなってから6ヵ月後など)です。担保になっている不動産を売却して元本を一括で返済するのが基本となります。そのため、毎月の支払いは「利息分のみ」で済みます。中には、利息払いなし(借入残高への組み込み)が選択できることもあります。
この部分だけで比べると、月々の返済を抑えることを重視する人は、リバースモーゲージを選択するのがベターと考えられます。ちなみに、融資されたお金の金利条件は、リバースモーゲージは変動金利のケースが多く、不動産担保ローンは変動金利と固定金利の両方が用意されているケースが多いようです。
大きな違い3:融資割合
「担保評価額に対してどれくらい融資してくれるか?」については、金融機関によって設定が異なるというのが前提です。ただ一般的な目安としては、不動産担保ローンは担保評価額の7〜8割程度、リバースモーゲージは担保評価額の5割程度(年金形式の場合)が借入可能額の目安といわれます。両者の間には2〜3割という大きな差があるため、「担保評価額に対する融資割合の大きさ」を重視する人は、不動産担保ローンを選択するのがよいといえます。
担保評価額という観点では、リバースモーゲージを選ぶと年1回など定期的に担保評価額の見直しがある点も見逃せません。担保評価額よりも借入金が多くなった場合、新規借入ができない、あるいは、超過分の一括返済や担保(自宅)回収などのケースもあります。契約書の内容を綿密にチェックすべきでしょう。
大きな違い4:不動産の最終的な扱い
不動産担保ローンは借りたお金を完済すれば、以後、不動産をそのまま所有できます。ただし、契約期間内に返済できないときは、担保に入れた不動産を売却して返済するしかありません。
これに対してリバースモーゲージは契約者が亡くなった後、担保になっている不動産を売却することで元本を一括返済することを前提にしています。ただし、想定よりも長生きをして残高が積み上がった場合、超過分の一括返済などを求められるケースもあります。
大きな違い5:利用できる年齢
不動産担保ローンは不動産に一定の評価額が付き、契約者の要件がクリアできれば幅広い年齢で使えます。一方、リバースモーゲージは高齢者しか使えません。利用できる具体的な年齢は金融機関ごとに違いますが、例えば、三井住友銀行は60歳以上、東京スター銀行の利払いなし型は70歳以上といった具合です。契約者に加えて、配偶者の年齢規定があるリバースモーゲージもあります。
ここまで解説してきた5つの違いをまとめると次のようになります。
不動産担保ローン | リバースモーゲージ | |
1.借入金の受取方法 | 一括が原則 | 金融機関によって様々 |
2.元本返済のタイミング | 毎月分割で返済 | 契約者の死亡後に一括返済 |
3.融資割合 | 担保評価額の7〜8割程度 | 担保評価額の5割程度 |
4.不動産の最終的な扱い | 完済すればそのまま所有 | 契約者の死亡後に売却 |
5.利用できる年齢 | 幅広い年齢で利用可 | 高齢者向け |
リバースモーゲージと不動産担保ローン利用時の注意点
リバースモーゲージと不動産担保ローンの利用時の注意点としては、どちらを利用するか決めても、さらに「金融機関ごとの設定条件が異なること」が挙げられます。
ここではリバースモーゲージの場合で見ていきましょう。例えば、不動産の対象エリアは金融機関ごとに違います。あるメガバンクでは一都三県や大阪府、愛知県などの大都市圏に限定していますが、西日本シティ銀行では福岡市、北九州市など福岡県内の主要都市が中心です。
担保評価額の最低基準も金融機関によって変わってきます。あるメガバンクでは6,000万円以上の担保評価額が付かないとリバースモーゲージの融資は原則不可となっています。一方、東京スター銀行の条件は戸建て2,000万円以上、マンション3,000万円以上の担保評価額が付けば融資審査の対象になります。
不動産担保ローンとリバースモーゲージの金利比較
同じく金利設定や借り入れ可能額なども金融機関によって異なります。一例は次の通りです。なお、融資期間は25年以内または35年以内の設定が大半です。
金融機関 | 金利(変動の場合) | 借入可能額 |
---|---|---|
東京スター銀行 | 0.85〜8.35% | 100万円〜1億円 |
関西みらい銀行 | 2.0〜3.9% | 100万円〜1億円 |
住信SBIネット銀行 | 2.95〜8.9% | 300万円〜1億円 |
三井住友L&F | 3.90%~7.40% | 300万円〜10億円 |
オリックス銀行 | 3.675% | 1000万円〜2億円 |
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金融機関 | 金利(変動の場合) | 借入可能額 |
---|---|---|
みずほ銀行 | 2.975〜5.475% | 1,000万円〜2億円 |
東京スター銀行 | 2.950〜4.926% | 500万円〜1億円 |
西日本シティ銀行 | 基準金利3.475% | - |
※2020年9月現在(キャンペーン除く)
このように一口に不動産担保ローン、リバースモーゲージといっても基本的な設定条件(対象エリアや担保評価額など)や金利・借入可能額は金融機関ごとにかなり違います。それだけに複数の金融機関をしっかり比較して申し込むことが重要です。そのためには、「お金(生活資金や老後資金)が今すぐ必要!」というタイミングではなく、ある程度余裕のある段階から検討するのがよいかもしれません。
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