不動産鑑定士、不動産投資スクールの主宰者であり、ご自身でも賃貸経営をされている浅井さんに、不動産投資で失敗した代表的なパターン、今は物件の買いどきか、ご自身で所有されている物件などについて伺いました。
【浅井佐知子さんのプロフィール】
不動産鑑定士・不動産投資コンサルタント。三井ホームエステートなどでの10年間の法人営業を経て、2001年、不動産鑑定士事務所を開設。国土交通省の地価公示評価員、国税庁の相続税路線価評価員などを担当。著書に『世界一やさしい 不動産投資の教科書1年生』『世界一楽しい 不動産投資の授業』などがある
目次
不動産投資で失敗したパターンは大きく2つある
−ここまで不動産投資で失敗しないための3ポイントを解説していただきました(参照:インタビュー上編)。実際に失敗したケーススタディには、どのようなものがありますか?
これはスクールの生徒さんの例ではありませんが、不動産投資で失敗して、私のところに駆け込んでくる方はいらっしゃいます。こういったケースでは、大きく2つのパターンがあります。
1つ目のパターンは、サラリーマンが都心の区分マンションを4つ、5つとどんどん買い増して首が回らなくなったケース。2つ目のパターンは、一棟物件を金利 4.5 %などの高金利で買って、にっちもさっちもいかなくなるケース。
2つのパターンに共通するのは、不動産投資について勉強しないうちに、業者の言いなりになって買ってしまったことです。
−このような不動産投資の失敗パターンにハマっても、挽回はできるものですか?
ケースバイケースです。高金利で購入したり、客付けに苦労するような物件だったりしても、運よく好条件で買い手が現れて、プラスマイナス0に近い形で出口戦略を迎えられるケースもあります。対照的に、赤字が膨らみ、残債をなくせる価格では売却できず、自己破産したようなケースもあります。
−今までお話いただいたのは、駆け込んできた人の失敗パターンですね。浅井さんの生徒さんで失敗したケースは……いかがでしょう?
自己破産するような、致命的な失敗はありませんね。しいて言えば、ご自身でDIYするつもりでボロボロの戸建てを安く買って、お手上げになってしまうケースがありました。このケースは、現在進行形で連絡が来ていまして相談にのっているところです。
ただ、こういった手頃な価格の物件での失敗は、長期的に見ると、良いことなのかもしれません。苦労して失敗を乗り越えれば、次の物件で楽になるんですね。もっとボロボロな物件でも再生できる、そんな地力がつくんですね。
物件価格が割高といっても、すべてが高いわけじゃない
−直近の不動産市況について、浅井さんの所感を伺いたいのですが。
不動産市況を見ると、コロナの影響は全然ないですね。コロナ感染の第1波の頃は、一時的に取引が激減した感もありましたが、すぐに元に戻りました。いえ、元以上かもしれませんね。現時点で見ても、不動産市況という意味で言えば、悪くないですよね。むしろ、良いかもれません。売り物件が少ないため、全体的に物件価格が上がっている印象ですね。
−長期的に見ると、いかがでしょうか。空き家問題や少子高齢化が懸念されています。
それらの影響で、不動産が余って借り手がいなくなるとの意見もございますが、私個人はそうではないと思っています。
例えば、ご両親が亡くなって、実家をそのままにしているから空き家になるわけです。売却したり賃貸に出したりすれば、空き家じゃなくなるわけです。だけど、不動産に詳しくない方は、売れないだろう、貸せないだろうという先入観があります。
でも実際には、片田舎でも賃貸がつく(借り手が見つかる)こともありますし、ボロボロの戸建てでも意外と賃貸がついたりします。
−不動産市況が良いということは、物件価格が割高になりやすいということですね。今のタイミングは買いでしょうか?それとも、ちょっと待った方が良いでしょうか?
物件価格がいつ下がるかは、誰にも分かりません。ですから、その人が不動産投資をしたいと思ったときが、やるときなのではないでしょうか。物件価格が割高といっても、すべてが高いわけではありません。どこかに良い物件があるはずですから、探していけばいいと思います。
浅井さんの所有物件。区分、戸建て、1棟物件の3タイプを経営
−浅井さんご自身の所有物件についても、お聞きできればと思います。どのような物件を所有されていますか?
前もってお伝えしていくと、私は不動産業界でのキャリアは長いのですが、実は不動産投資家としての年数は短いです。生徒さんなどから「先生も物件を所有されていますか」と聞かれることも多いため、自身で不動産投資をするようになりました。
−浅井さんの場合、資産運用というより情報収集のため、という色合いが濃そうですね。
その通りです。1件目は、はじめの著作(『世界一やさしい 不動産投資の教科書1年生』)の内容の通りに買いました。著作のなかで小さな物件を推奨していますので、310万円の区分マンション。これは現金で買いました。埼玉県で最寄り駅から3分、実質利回りで約10%の物件ですね。
今、このマンションの理事長をやっていまして、すごく勉強になっているんです。
−そのご経験が将来の著作になるかもしれないですね(笑)。2件目はどのような?
今度は、戸建てを買いました。これは豊島区の物件で最寄り駅から徒歩約3分です。購入理由はいくつかあるのですが、立地が市街地再開発事業の一角だったので、将来の可能性を感じました。この開発条件を省いても、好立地で高めの家賃をとれています。購入費用は、商工会経由で日本政策金融公庫から融資を受けました。マル経融資という融資です。
−公庫の融資は、融資期間が短いので使いにくいイメージもありますが?
おっしゃるように融資期間は短いですが、使い方次第です。例えば、私のスクールの生徒さんの場合、物件は現金で買って、リフォーム費用だけは公庫で借りるパターンが多いですね。
ただ私の2件目の物件の場合は、まったく違う考え方です。頭金を2〜3割ぐらい入れて融資期間を10年に設定すると、利回り10%ぐらいでも手残りがほぼありません。ただ私は今、現役で働いているので家賃収入が必要ではない。早めに残債をなくして、ローンが全然ない物件を手に入れることを重視しています。
あと公庫のメリットとして、固定金利というのもポイントですね。今はインフレ局面なので今後金利が上がることも否定できません。個人的には固定金利が大切かなと思っています。
―公庫も使い方次第なのですね。他にも所有物件はありますか?
3件目は、茨城県土浦の中古アパートです。地方のアパートは購入時のポイントがいくつかあります。
まず、マストなのがファミリー向け物件であること。立地は、最寄り駅から離れていてもいいので、駐車場が各戸に1〜2台付いているのが理想です。加えて、街が形成されているのも大事ですね。分かりやすい目安は、周りにショッピングセンターがあることです。
生徒さんにこのようなアドバイスをすることが多いので、私自身もこのような物件を買いました。
−地方の一棟物件は、空室率が高いイメージもあります。でもポイントを押さえれば、やっていけるのですね。
空室対策の3つのポイントで市場分析の大切さに触れましたが、購入時も大事です。その地域の賃貸業者さん3社ぐらい回って、賃料相場、その地域に本当にニーズがあるのか、見込み物件の間取りはこれでよいのかなどを必ずヒアリングしてください。
−次に、浅井さんが買うとしたら、どのようなタイプの物件ですか?
こういうタイプの物件を買うと決めつけずに、イメージを幅広く持っています。新築物件かもしれないし、中古物件かもしれません。イメージを広げておけば、魅力的な物件と出会ったときにすぐに動けます。
2、3冊本を読めば、不動産投資との相性は分かる
−良い物件を見つけるには、不動産投資の勉強も必要ですね。初心者の人に、どんな勉強方法を推奨しますか?
まずは、不動産投資をテーマにした本をたくさん読むってことですね。2、3冊読めば、自分は不動産が好きそうだなとか、面倒だからやめようとか、何か見えてくるはずです。
−スクールを通して不動産投資を学ぶメリットはいかがですか?
不動産投資をするには、それなりの知識が必要なんですね。その知識を体系的に勉強できるのがスクールの良さでしょう。あとは仲間が出来るのもメリット。結局、不動産投資で物件を買えるかどうかって、モチベーションを維持できるかどうかが大きく関わるんですね。
探しても、探してもいい物件が見つからなくて……諦めようかなと思ったときに仲間がいれば、もうちょっと頑張ろうと思えたりする。スクールに限らず、大家さんのコミュニティで仲間を見つける方法もありますね。
−読者の皆さんには、YANUSYや浅井さんの著作やスクールを通して、不動産投資の知識を効率的に吸収していただければと思います。
浅井佐知子さんのH P(外部リンク):https://asai-kantei.jp/
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