市街化調整区域,不動産
(画像=hanack/stock.adobe.com)

不動産会社が公開している情報で頻繁に目にする「市街化調整区域」という言葉。「見かけたことはあるが詳しくは知らない」という人も多いのではないでしょうか。市街化調整区域に指定されたエリアでは、土地の購入や家屋の建設に制限があるなど不動産投資においても大切な要素の一つです。本記事では、不動産投資における市街化調整区域のメリット・デメリットなどについて紹介します。

目次

  1. 市街化調整区域の概要について解説 
    1. 市街化区域とは?
    2. 市街化調整区域とは?
  2. 市街化調整区域で不動産投資を行うリスク
    1. 市街化調整区域では建築や建て替えに許可が必要
    2. 市街化調整区域での新築や建て替えでは、住宅ローンの審査が通りにくい
    3. 市街化調整区域の不動産は価値が低く将来的に売却できない可能性がある
  3. 市街化調整区域のメリット
    1. 土地の購入価格が安いため固定資産税の負担額が少ない
    2. 都市計画税の負担がない
  4. 市街化調整区域は不動産投資の対象としてはあり?

市街化調整区域の概要について解説 

市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて指定された「市街化を抑制する区域」を指す言葉です。似た言葉として「市街化区域」がありますが、こちらは「都市として市街化する区域」を指定する用語となります。以下よりそれぞれ個別に解説します。

市街化区域とは?

市街化区域とは、前述の通り市街化を行って街を発展させていく地域を指します。市街化区域に指定されたエリアでは、その後数年から10年にわたって住居や商業施設などが整備・開発されるエリアです。市街化区域では、道路や下水道などのインフラに関しても市町村の手で整備されます。建物の建設に関する規制もなく、多くの住宅やマンションが市街化区域に建っている傾向です。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域は、市街化を抑制するエリアです。市街化調整区域では、新築で住宅を立てることは難しいのが特徴となります。市街化調整区域は、開発が抑制された地域のため、インフラの整備に関してはあまり優先されない可能性が高いと考えて差し支えありません。市街化区域・市街化調整区域の2つの区域以外にも「非線引き区域」と指定されたエリアも存在します。

非線引き区域とは、まだ市街化区域・市街化調整区域のどちらにも区分されていないエリアを指す言葉です。将来的に市街化区域に指定され、優先的に整備される可能性があります。

市街化調整区域で不動産投資を行うリスク

以下の項目より市街化調整区域で不動産投資を行う際に発生するリスクについて解説します。市街化調整区域に指定されたエリアで不動産投資を検討している場合、以下のような事柄がネックとなります。

<市街化調整区域のリスク>
・市街化調整区域では建築や建て替えに許可が必要
・市街化調整区域での新築や建て替えでは、住宅ローンの審査が通りにくい
・市街化調整区域の不動産は価値が低く、将来的に売却できない可能性がある

以下より、それぞれ個別に解説します。

市街化調整区域では建築や建て替えに許可が必要

前述の通り市街化調整区域では、原則として新たに住宅の建設はできません。しかし市街化調整区域に指定されたエリアでも賃貸物件の建設や販売がされているケースが多くあります。なぜなら都市計画法が制定される以前に該当のエリアに建設されていた物件に関しては、一定の条件を満たせば建物の建設・増改築が認められるからです。

市街化調整区域では「農林漁業用の建築物」「地域住民にとって必要な建築物」に該当する建物の建築が各自治体からの許可を得れば可能となります。市街化調整区域での新築・増改築には、自治体からの個別審査が必要で土地の売買をする場合にも基本的に申請をしなければなりません。2001年の都市計画法の改正以降は、地目が宅地となっている場合でも建築確認の申請が必要となります。また、必ずしも許可が降りるとは限らない点がネックです。

市街化調整区域での新築や建て替えでは、住宅ローンの審査が通りにくい

住宅やマンションを購入する場合、住宅ローンを組んで金融機関からの融資を受ける人は多いのではないでしょうか。しかし市街化調整区域で不動産投資を行う場合、多くの金融機関は融資を行いません。なぜなら市街化調整区域の不動産価値が低く担保として保全とならないからです。金融機関にとって市街化調整区域は、ローン契約者からの返済が滞った際に差し押さえをしてもローンの残高を補うほどの価値がないと見ているといえるでしょう。

ただし住信SBIネット銀行やauじぶん銀行などの一部の金融機関では、市街化調整区域でも融資を受けられる可能性はあると言われています。しかし多くの金融機関では融資を受けづらいのが現実です。そのため必然的に市街化調整区域の不動産を購入できるのはキャッシュに余裕がある人に限られます。宅地ではなく農地などを購入する場合、ローンの借り入れの難しさはさらに上昇するでしょう。

市街化調整区域の不動産は価値が低く将来的に売却できない可能性がある

上記のような理由から市街化調整区域の不動産はあまり人気がなく買い手も少ないのが現状です。長期的に見てもエリア自体に人気がないため価格が下がっていく可能性があります。特に「一度購入した不動産を将来的に売却したい」と考えている人が市街化調整区域の不動産を購入した場合は、将来的に買い手がつかず売却できなくなる可能性があるため注意が必要です。

前述のように市街化調整区域では住宅ローンを受けにくいため、ますます買い手が見つかりにくい状況となっています。「自分で住む」「家賃収入などを見込んでいる」などの理由で長期的に不動産を保有し続けるなら市街化調整区域に指定されたエリアでは、投資活動を行わないことが賢明です。

市街化調整区域のメリット

市街化調整区域で不動産投資を行う際のリスクについて紹介しましたがデメリットばかりではありません。市街化調整区域に指定されたエリアの土地には、以下のようなメリットもあります。

<市街化調整区域のメリット>
・土地の購入価格が安いため固定資産税の負担額が少ない
・都市計画税の負担がない

土地の購入価格が安いため固定資産税の負担額が少ない

上述した通り市街化調整区域の不動産は「資産価値が低く融資や売却が難しい」という特徴があります。しかし土地の坪単価が低いため、キャッシュに余裕がある人の場合、市街化区域の土地を買うよりも低予算で不動産を購入できる点はメリットといえるでしょう。土地価格が安いため、おのずと土地の評価額も低くなり固定資産税の負担額も少なくなります。

市街化調整区域で住宅を新築するには自治体の許可が必要で将来的な売却の可能性も見込めません。しかし長期にわたって静かな場所で暮らしたい人にとっては、生涯支出を減らせる可能性があるエリアといえます。

都市計画税の負担がない

市街化調整区域に指定されたエリアでは、特別な事情がない限り都市計画税の支払い義務はありません。都市計画税は、所有している不動産が存在するエリアのインフラや設備を整えていくため、予算を賄う目的で徴収される税金です。市街化調整区域は、開発が抑制されたエリアとなるため、必然的に都市開発のための予算も必要ありません。

固定資産税の少なさも加味すると市街化調整区域に指定された地域の不動産を購入した場合の毎年の支出は、非常に少なくて済みます。

市街化調整区域は不動産投資の対象としてはあり?

市街化調整区域では「開発が抑制されているため不便」「不動産の価値がつきにくい」などのデメリットがあります。「不動産を安く買って高く売る短期の投資」「家賃収入などを目的とした中長期の投資」といった目的で市街化調整区域の土地を購入する選択はおすすめできません。安く購入できたとしても資産評価が低い土地を購入してしまうと将来的に買い手もつかず資金を浪費してしまうことになりかねないでしょう。

ただし自分が市街化調整区域に指定されたエリアを気に入って長期的に住みたい場合は、長期的な支出を抑えられる可能性があります。

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