

【相談】「事故物件」の取扱いに関するガイドラインが制定されることになったと聞きました。どのような概要なのでしょうか。
【回答】心理的瑕疵に関して、宅地建物取引業者が買主又は借主に告知すべき内容、範囲、調査の方法などが明らかとなりました。
ガイドラインの記載内容のポイントについて、以下ご説明いたします。
ガイドライン作成の経緯
(1)心理的瑕疵とは
土地・建物において、その契約の内容に適合しない場合には、当該土地・建物には瑕疵・契約不適合があることになります。
瑕疵・契約不適合については、物理的な欠陥にとどまりません。
自殺があった物件や殺人事件の現場となった物件には住みたくないというのが、社会通念上、人が抱く感情であり、自殺や殺人事件があった物件については、心理的瑕疵があるとしてしばしば争いになることがあります。
(2)従前の問題点
宅地建物取引業者は、相手方の判断に重要な影響を及ぼすことになるものについて、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げることが禁じられています。
心理的瑕疵も、相手方の判断に重要な影響を及ぼすことになり得るため、いわゆる事故物件についてはその事実を告げる必要があります。
しかし、それが告知すべき程度なのか否かがこれまで明確ではなく、告知の要否、告知の内容についての判断が困難なケースもありました。
そして、入居者が亡くなった場合には亡くなった理由を問わず、宅地建物取引業者は購入希望者に対し説明しなければならないと思い、そのため、単身の高齢者の入居を敬遠してしまう傾向にありました。
(3)ガイドライン作成の意図
上記の従前の問題点を踏まえ、宅地建物取引業者が採るべき対応について、その基準を規定するガイドラインが作成されることとなりました。
国土交通省により、「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」として、公開されています(以下、単に「ガイドライン」といいます。)。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000219027
現在、公開されているのは、あくまでも案であって最終決定事項ではありません。
このガイドラインについて、国土交通省は国民の意見を募集しておりましたが、それを踏まえて、今後、ガイドラインが最終決定されます。
ガイドラインの内容のポイント
ガイドラインの記載内容のポイントを挙げると以下の通りとなります。
(1)対象とする不動産の範囲
居住用不動産のみを対象とする。
※オフィス等の居住用以外の目的の不動産は対象としていません。もちろん、ガイドラインの対象ではないというだけで、告知義務がないというわけではありません。
(2)告げるべき事案
他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合。
※自然死や日常生活の中での不慮の死が生じた場合については、原則として、これを告げる必要はありません。自宅の階段からの転落や、入浴中の転倒事故、食事中の誤嚥などについては、日常生活の中での不慮の死に当たり、これを告げる必要はありません。
※ただし、自然死等の場合であっても、長期間にわたって放置される等して、室内外に臭気・害虫が発生し、いわゆる特殊清掃などが行われた場合には、原則として、これを告げる必要があります。
(3)調査について(調査の対象・方法)
・「照会先の売主・貸主あるいは管理業者より、事案の有無及び内容について、不明であると回答された場合、あるいは回答がなかった場合であっても、宅地建物取引業者に重大な過失がない限り、照会を行った事実をもって調査はなされたものと解する。」
・ただし、売主・貸主からの告知がない場合であっても、上記(2)の事案の存在が疑われる場合には、売主・貸主に確認して、買主・借主に情報提供する必要があるとされています。
(4)告知について
・告げるべき内容
上記(2)に掲げる「事案が発生している場合には、これを認識している宅地建物取引業者は、事案の発生時期、場所及び死因(不明である場合にはその旨)について、買主(賃貸借契約の場合には、借主)に対してこれを告げるものとする。」
・告げるべき範囲
賃貸借に関して、上記(2)の事案の発生から概ね3年間は、借主に対して告知するものとされています。
なお、売買に関しては、年数についての言及はありません。
最後に
上述の通り、ガイドラインは、あくまでも宅地建物取引業者が採るべき対応について規定したものです。
仲介業者である場合と売主や貸主等の売買や賃貸借の当事者である場合とでは、負う責任の内容や程度が異なる点に注意が必要です。
たとえば、売主は、引渡し後に心理的瑕疵が発覚した場合、仮に、ガイドラインに記載されているような一定の調査を行っていたとしても、契約不適合責任等を免れることが出来ない事態も考えられます。
ただし、売主や貸主等の売買や賃貸借の当事者にとっても、トラブル防止の観点から、ガイドラインの記載内容は大いに参考となります。
本記事は不動産投資DOJOの転載記事になります。
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