今日からできる!収益不動産の価値を見極める3つの評価方法
(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

収益不動産の売買は、不動産の価値を見る目を持つと有利です。不動産鑑定士のようなレベルにまでなる必要はありませんが多数ある物件情報の中から「高い」「安い」を見極める基準を持っておくと成功する確率が上がるでしょう。ここでは不動産鑑定評価で用いられる3つの手法を誰にでも利用できるよう簡便化した方法を解説します。

収益還元法とは?

収益還元法は収益不動産の評価によく用いられる方法です。収益還元法には直接還元法とDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)がありますが、ここでは比較的計算しやすい直接還元法について説明します。直接還元法は年間の純家賃を還元利回りで割り戻すことによって不動産の価格を求めます。純家賃とは純利益に近い概念で入居者から受け取る家賃収入から経費を差し引いたものです。

還元利回りとは地域性や不動産の特徴が似たような物件の一般的な利回りのことで基本的に事例をもとに設定します。自分の所有物件であれば実際の純家賃を計算できます。物件概要書から概算する場合は、想定家賃を鵜呑みにせずに賃貸情報サイトで周辺の相場を調べてみることが大切です。空室は収益に含めません。

経費は管理会社への管理費、固定資産税、保険料、区分所有マンションであれば管理費・修繕積立金などです。減価償却を入れるかどうかは還元利回りが減価償却前後によりますが、一般的には経費に含めません。かなりざっくりとした計算でよければ、経費を家賃の20%(サブリースと同程度)とする考え方もあります。

還元利回りを詳細に求めることは難しいのですが一般財団法人日本不動産研究所の「不動産投資家調査」などが参考の一つです。正確に知りたければ収益不動産を専門に扱う不動産会社や不動産鑑定士に依頼するという方法もあります。

収益還元法の計算例

例えば価格4,000万円、年間の想定家賃400万円で売りに出されているワンルーム×6戸のアパートが適正な価格かどうか調べてみます。周辺で同じような間取りの募集賃料を調べてみると1戸あたり5万円でした。空室率は分からないので株式会社LIFULLの「見える!賃貸経営」を参考にしてみると15%となるため、還元利回りは不動産投資家調査によると5.5%です。

6戸-6戸×15%【空室率】≒5戸【入居戸数】

(5万円【家賃相場】-5万円×20%【経費】)×5戸【入居戸数】×12ヵ月≒240万円【純家賃】
240万円【純家賃】÷5.5%≒4,363万円【適正価格】

この物件はすぐに売ったとしても約4,360万円で売れる可能性があるため、4,000万円という価格はお買い得ということが分かります。満室にしてから売却すればなお利益が出るでしょう。

取引事例比較法

取引事例比較法は、読んで字のごとく過去の取引を参考にして評価する方法です。自分で住むために所有する不動産を査定するときによく使われますが収益不動産の評価の際も参考にされます。特に区分所有マンションや戸建てなど居住用に売買されるものはデータが多く不動産業者以外の人にも扱いやすいといえるでしょう。

よく使われるのは国土交通省の土地総合情報システム内のサイト「不動産取引価格情報を検索」です。同省のアンケート調査をもとに土地や建物、マンションや農地などの取引データを閲覧できます。1棟マンションやアパートなどのデータもあります。もちろん場所の特定はできないようになっていますが上2桁までの価格の他、最寄り駅とそこからの徒歩分数、面積や前面道路の幅と種類など詳細に載っているため、正確に把握しやすいつくりです。

他にも不動産流通機構(レインズ)が持つ取引情報のデータを集めた「レインズ・マーケット・インフォメーション 」もおすすめです。グラフや詳細な検索条件を指定できるなど見やすい工夫がされています。

積算法

上記2つの結果は時価に近いものになるため、売り出し価格を考えたり購入を検討したりするときに使われます。積算法はその仕組み上、実勢価格よりも少なめに計算される保守的な評価方法です。そのため金融機関が担保価値を評価する際によく利用されます。積算法では土地と建物を別々に算出し土地は公的な単価に面積をかけ形状による補正などを加えるのが特徴です。

建物は平方メートル単価に床面積をかけ、減価償却分を差し引くことで計算します。土地の単価は相続税の計算に使われる路線価が使われるのが一般的です。土地が面している道路ごとに単価が設定されており国税庁が発表する「路線価図」で確認できます。建物の単価は国税庁が発表している「建物の標準的な建築価額表」が参考に建築年や構造によって変えるのがおすすめです。

例えば2010年に建築された建物の平方メートル単価は木造が15万6,500円、鉄骨鉄筋コンクリートが22万6,400円、鉄骨が16万3,000円です。床面積300平方メートル、2010年築の鉄骨鉄筋コンクリート造マンションの建物を積算法で評価すると2019年時点では次のようになります。

  • 300平方メートル×22万6,400円÷ 47年【鉄骨鉄筋コンクリート住宅の法定耐用年数】×38年【残存期間】≒5,500万円

担保価値、つまり実質的な融資上限額は、積算法の価格に担保掛け目をかけて慎重に計算します。単価と同様、掛け目も金融機関によって異なりますが7~8割程度が一般的です。物件価格が路線価の8割程度であれば失敗する可能性は低いといえます。

不動産会社に勤めた経験がなくても大体の資産価値は計算できる

公表されているデータを使って不動産の資産価値を測る方法を3つ紹介しました。物件のおおよその価格を把握しておくことで高すぎる金額で買ったり低すぎる金額で売ったりすることを防げます。実際に購入・売却する際は、売買事例のデータを豊富に持った不動産会社に相談すると良いでしょう。

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