不動産業界は「騙される人が多い」というイメージがあるかもしれません。記憶に新しい「カボチャの馬車」の事件は、一定期間家賃が保証されるというので購入したが、その契約が守られず途中で保証が終わり、家賃がまったく支払われなくなった、というものでした。
不動産売買仲介業者は、最大で1回の取引額の3%+6万円を仲介手数料として受領することができます。この仕組みから、取引完了までは真摯に対応しているように見せかけて、その後はまったくフォローしてもらえずに逃げてしまう、ということが起きやすいのが不動産業界なのです。
多くの人は「自分は騙されない」と思ってしまいがちです。しかしカボチャの馬車の事例のように実際に被害が出てしまうケースも存在するため、今回は不動産業者に騙された時に取るべき行動やその予防策についてお伝えしたいと思います。
何でも契約書に残す習慣を
不動産取引詐欺の実例としては、担当者を心から信頼するあまり、その担当者が所属している会社の署名がない状態の契約書に自分だけが署名し、手元に契約書がないまま手付金を払ってしまった、という事例があります。この事例では、手付金をそのまま持ち逃げされてしまいました。
契約書は自分と相手の署名があってはじめて有効になります。有効な契約書が手元にあれば、トラブルの際に役立つことがあります。口約束でも法律上は有効ですが、裁判や後述する保証協会に資料を提出する際に、被害に遭ったことを証明することができません。
「そんなことは当たり前だろう」と思うかもしれませんが、本業で忙しく、かつ担当者を完全に信じ切っている状態だと、物件を押さえるための手付金を口約束で振込んでしまうことがあるそうです。
このような被害に遭わないためには、どんなに付き合いが長い業者であっても、またどんなに大きな会社との取引であっても、すべての金銭取引について契約書を残すようにしましょう。
多くのトラブルは契約書を交わし、内容をしっかり確認することで未然に防ぐことができます。
困った時の宅建保証協会
不動産売買業は宅地建物取引業に該当し、宅建業法により保証金を供託することになっています。宅建業はトラブルが多く、何らかの被害が発生した際にその保証金から被害者の損失を補填するためです。
したがって、不動産投資家が宅建業者から被害を被った場合、宅建保証協会に苦情の申し出を行い、保証金を申請することができます。ただし保証金の金額は1業者につき1,000万円までで、保証金は申請順に支払われます。つまり「早い者勝ち」です。
例えば全員が審査に通過するという前提で、Aさんが申請順位1位で600万円、Bさんが2位で400万円、Cさんが3位で200万円だった場合、AさんとBさんには支払われますが、Cさんには支払われません。そのため宅建業の取引で被害に遭ったら、早めに宅建保証協会に苦情の申し出をするようにしましょう。
被害を未然に防ぐことが第一ですが、それでもトラブルに巻き込まれることはあります。このような保証金制度とルールがあることを知っていれば、被害を最小限に食い止めることができる可能性があるので、必ず覚えておきましょう。
トラブルの時は誰も助けてくれない
これは不動産取引に限りませんが、本当に深刻な問題が起きた時に頼れるのは自分しかいません。
例えば手付金を持ち逃げされてしまった場合、友人や専門家に相談したところで犯人に逃げられてしまえばお金は戻ってきませんし、無条件で失ったものを補填してくれる人もいません。
実際にトラブルが発生した時に対応するのも、損害を被るのも自分です。この認識を持っていないと、日々の行動の詰めが甘くなりがちです。実際の取引を行う前に予防策や事後対策について知っておくようにしましょう。
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