不動産投資は黒字経営にこだわるべき?赤字経営にするべき?
(画像=ImageFlow/Shutterstock.com)
本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

賃貸経営をしていくうえで、利益をしっかり出して黒字経営で行くべきか、あるいは経費計上を重視して赤字経営で行くかは大きな分かれ目でしょう。黒字・赤字の選択をどう考えるべきか、またそれぞれの注意点を解説します。

今後、融資を受けたいなら黒字が鉄則

「黒字経営VS赤字経営」を考える際のポイントになるのは、「今後戸数や棟数を増やしていくかどうか」です。これから先、規模拡大を目指すなら黒字経営が鉄則です。これを端的に物語っているのが、金融機関の現役融資担当者・河津桜生氏が執筆した書籍『最強の不動産投資法』(信長出版)にある以下の一文です。

“融資を受けたいなら、ともかく黒字決算を出し続けなくてはなりません。(中略)納税額が減っても融資の道が閉ざされてしまったら元も子もありません。ですから、むしろ「税金はしっかり払う」くらいのスタンスでいたほうがいいでしょう。”

黒字経営派:追加融資を目指すなら3期以上の黒字が理想

金融機関の追加融資を目指すなら黒字経営を続けるのが基本ですが、具体的に何期にわたって黒字を続ければいいのでしょうか。

一般的に金融機関からの高い評価を受けるには、3期以上にわたって黒字を出し続けているのが望ましいと言われています。留意したいのは、帳簿上では赤字でも「減価償却費を除けば黒字」という状態なら評価してくれる金融機関が多いことです。

前出の河津氏も「減価償却費を引いた上での赤字は問題ない」と述べています。

赤字経営派:綿密な経営計画でないと損失リスクあり

逆に言えば、「相続税対策のための賃貸経営なので、今後追加融資を受ける気はない」という人は赤字経営でも構わないでしょう。ただし減価償却による帳簿上の赤字ではなく、実際に多額のキャッシュが流出し続けているのであれば改善するべきでしょう。長期的に見れば節税効果以上の損失を被る可能性があるからです。

実際に、賃貸ニーズのない地方の郊外に相続税対策を目的としたアパートが次々に建てられ、残されたのは借金と空室だらけの物件、ということが社会問題になったことがありました。赤字経営を利用して上手に節税するためには、綿密な経営計画や出口戦略を練る必要があるでしょう。

赤字経営を脱却して黒字経営を目指す3つの方法

ここまでが黒字経営派と赤字経営派の基本を整理したものです。難しいのは、すでに赤字経営になっているオーナーが黒字経営を目指す場合です。その場合は、以下の3つのアプローチによる改善が考えられます。

①金利を低くする
「金利が~%だと高い」などという定義はありませんが、「相場よりも高いのでは?」と感じたらほかの金融機関に相談してみるといいでしょう。

借り換えができることを前提に低金利を提示されたら、それを材料に現在の金融機関と交渉してみるのも手です。この交渉が上手くいかない場合は、借り換えを視野に入れるべきでしょう。

②空室割合を下げる
リノベーションせずに稼働率を上げる方法としては、家賃を下げる、家具や家電を設置する、入居者付けをしてくれる仲介会社に営業をかける、などがあります。

③費用を減らす
管理会社から提案される修繕やリフォームの費用をそのまま受けるのではなく、本当に適切な費用かをきちんと精査することも重要です。管理会社を変更することでコストが大きく変わる場合もあります。

黒字経営と赤字経営のどちらを選ぶにしても、大事なのはオーナー自身が電卓を叩いて収支を考え、支出を抑える努力をすることです。そのうえで、管理会社や税理士など専門家のアドバイスやサポートを受けるのが理想です。人任せの賃貸経営はコストが高くなりがちです。

「オーナーが主体」の賃貸経営にこだわりましょう。

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