不動産オーナーが確定申告をする際、固定資産のタイプ別で経費化の方法を選ぶと節税になることがあります。今回は、固定資産の経費化のポイントについてお伝えします。
固定資産の経費化には3つの方法がある
確定申告に慣れている不動産オーナーにとってはおさらいになりますが、建物や付属設備、器具備品など、土地以外の固定資産(減価償却資産)の経費化の方法は、申告方法や減価償却資産の金額に応じて3種類あります。
その1:減価償却
減価償却は、固定資産の原則的な経費化の方法です。貸借対照表上に「建物」や「付属設備」といった資産科目を計上した後、時間の経過とともに使用した分を経費にしていく方法です。減価償却の方法には、「定額法(均等に経費化していく方法)」と「定率法(使用し始めた時に多く経費計上し、徐々に金額を少なくしていく方法)」があり、どちらにするかを選べます。ただし、建物と付属設備は定額法しか選べません。
なお使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものは、取得時に全額を経費として計上することになっています。つまり、減価償却資産は使用可能期間が1年以上、かつ取得価額が10万円以上のものです。
その2:一括償却資産
減価償却資産の中で取得価額が10万円以上20万円未満のものは、取得価額の全部または一部を一括し、その金額を使用した年から3年間、3分の1ずつ必要経費に算入できます。法定耐用年数が7年以上の固定資産は、通常の減価償却よりも一括償却のほうが一度に経費化できる金額が多くなるので、節税につながります。
なお一括償却を選択した資産は、翌年以後も一括償却を行うことになります。途中から通常の減価償却に変更することはできません。逆も同様です。
その3:30万円未満の少額減価償却資産の特例(即時償却)
30万円未満の固定資産を購入して不動産事業に使用した場合、その取得価額を全額、使用を開始した年の必要経費として計上できます。減価償却や一括償却よりも多くの金額を経費計上できるので、節税効果が大きいです。
ただし、注意点が2つあります。1つは総額の上限です。30万円未満の資産を無制限に経費計上できるわけではなく、総額で300万円までです。もう1つは「誰でも使える償却方法ではない」という点で、青色申告書を提出する事業主に限られます。
経費化の方法は不動産投資の狙い目で選べ
固定資産の経費化の方法を3つ紹介しましたが、これらは固定資産ごとに選択できます。よくある節税アドバイスに「一度に経費計上できる額が多いほど良い」というものがありますが、実際は不動産投資の目的によって選択したほうが節税効果は高くなります。
長期保有目的の場合
不動産投資の目的が「賃貸料収入」「不労所得」「老後資金」なら、利益が出そうなタイミングを見計らって固定資産を購入し、一度により多く経費計上できる方法を選ぶいいでしょう。青色申告の人なら30万円の少額減価償却資産の特例を、白色申告の人なら一括償却を選択したほうが経費計上できる金額が多くなります。
青色申告を行う不動産投資家が「損失の繰越控除ができるから」と、初年度に一気に多額の費用を計上して損失を発生させるケースがありますが、これは一見得に見えて、実は損です。
確かに青色申告では、損益通算をしてもまだ赤字が残る場合は、翌年以後に損失を繰り越すことができます。しかし、個人事業主が繰越控除できる期間は翌年以後3年間です。そのため、初年度に費用を計上しすぎると、4年目以降に税金が発生する可能性があります。
なお、白色申告では損失を翌年以降に繰り越すことができません。そのため、申告のたびに損失額や翌年以後の賃貸収入の動向を鑑みて、経費化の方法を検討する必要があります。
なるべく早く売りたい場合
購入した不動産をなるべく早く売りたい場合は、一度に経費計上する金額が少なくなる方法を選んだほうがいいでしょう。そのほうが、売却時に支払う税金が少なくなるからです。
売却時の利益(譲渡所得)には、税金がかかります。譲渡所得の金額は、以下の算式で計算します。
譲渡所得の金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
収入金額とは、売却金額のことです。取得費は土地・建物の購入代金や建築代金、購入手数料など取得時にかかった費用であり、譲渡費用は不動産を売却するために直接かかった費用です。
ここで注目したいのが、取得費です。建物の取得費は、購入代金や購入手数料など取得にかかった金額の合計額から減価償却累計額を差し引きます。固定資産の経費計上額が少なければ、その分取得費が多くなります。すると売却時の利益が少なくなり、譲渡所得にかかる税金を低く抑えることができるのです。
建物の減価償却方法は定額法しか選べませんが、一緒に売却するエアコンやTVなどの備品は経費化する方法を選べます。この選択次第でも節税額は変わるのです。
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