大阪民泊
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インバウンド市場に可能性を感じ始めたのは2012年頃ではないだろうか?

大阪の繁華街、特に「ミナミ」近辺では、多くの外国人観光客が買い物袋を持ち、家電量販店やドラッグストアから出てくるところがよく見られた。
いわゆる爆買い観光客だが、彼らの購買対象は量販店の商品に留まらず、地域の商店街や個人店にも波及した。通りや電車の中でも、外国人の方が多いのではないかと思える状態になっていた。
この頃から加速度的に訪日観光客が増えていくが、その要因として、LCCの存在が挙げられる。特にアジア圏の訪日観光客が増えたのは、各国の経済発展に加えて、LCCにより渡航コストが大幅に下がったことが要因と考えられる。
その一方で、訪日観光客の滞在場所となる宿泊施設は、需要に対して供給が少ない状況にあり、ここに「民泊」の需要が生まれることになる。

そんな中、2013年にAirbnbやUberなどが海外のユニコーン企業として様々なメディアで紹介され、「民泊」が脚光を浴びるようになっていく。

大阪民泊

2013、14年は宿泊施設の稼働率・単価も順調に推移し、2015年から訪日観光客も一段と増加した。大阪市内ミナミ周辺の民泊では稼働率が90%を超え、1人当たりの平均単価も5,000円を超えていた。

2016年、「特区民泊」の制度が一部地域で開始された。訪日観光客激増による宿泊施設不足の現実を国が追認し、既存の旅館業法や環境の変化に戸惑う周辺住民との調和を図った結果である。もっとも、このタイミングでは、Airbnbをはじめとする海外予約仲介サイトは、日本の行政とは歩調を合わせる姿勢を見せず、多くの施設が違法民泊として運営を続けることになり、民泊施設件数は増え続けることとなる。

2017年から民泊新法の法整備が進み、2018年6月に住宅宿泊事業法が施行される。このタイミングで、各予約仲介サイトは、違法民泊のサイトへの掲載を禁ずる措置を採るようになる。ここで初めて民泊施設の数は減少することになる。
そのうえ、台風21号による関西国際空港の閉鎖、韓国との関係悪化により大阪へ訪れる外国人観光客の増加率も落ち着くことになる。元々、大阪は他都市に比べて、中国、韓国、台湾からの旅行客の比率が高かったため、より中華系観光客への依存度が高まったともいえる。

2019年はラグビーワールドカップの後押しもあり訪日観光客は増加傾向にあったが、宿泊施設オープンが相次ぎ、供給が需要に追いつき始める。
それでも宿泊業界は依然として高稼働を維持していた。弊社の運用実績でも稼働率80〜90%は維持していたが、1人当たりの平均単価は3,000円~4,000円へと減少した。民泊同士だけでなくビジネスホテルを含んだ顧客の奪い合いが鮮明化し、価格競争が激しくなっていく。そのため、賃貸で民泊を運営していた事業主が宿泊業から撤退することが多くなった。

そのような状況でも、東京オリンピック開催1年を切りカウントダウンが始まると、事前予約で2020年の予約がどんどん埋まっていった。

そして2020年。
東京オリンピックが開催され多くの外国人観光客が来日し、インバウンド業界もさらに大きく飛躍する年・・・・に、なるはずだった。

2020年初頭にコロナウイルス感染症のパンデミックと共に、訪日外国人は街から姿を消した。その結果、ホテル・観光業界は大きな打撃を受けることとなる。
当然、宿泊単価は急落。どれだけ価格を安くしても極端に下がった需要に対し供給が多く、たとえ1泊1000円前後にしても予約が入ることはなかった。

大阪民泊

コロナ禍によって、何が起こったか。
半年先まで予約が入っていたところ、コロナウイルス感染症への不安から、まずは直近1〜2か月の間にチェックイン予定であった外国人旅行者が一斉に予約をキャンセルしていく。
さらに、渡航制限や長期隔離期間の存在から、日本への旅行を検討していた旅行者のキャンセルが順次進んでいく。現在もその状態にある。

日本の緊急事態宣言の解除とウィルス感染状況が変化し、自主隔離やリモートワーク、通勤時間短縮などを理由とする民泊需要が発生した。
現在はマイクロツーリズムを目的とする旅行者やGOTOトラベル利用者など、日本人観光客の利用がほとんどを占めている。
インバウンド需要を失った民泊事業者にとっては、稼働率の低下はもちろん宿泊単価を安くせざるを得ない状況に陥ったことで、民泊事業から撤退する事業者も続出している。

これから民泊、インバウンド需要はどうなるのか?
ワクチン開発やウィズコロナの意識変化などの過程を経て、海外への渡航制限が解除され、ビジネスや観光で以前のように人が海を越えて行き来する時は訪れる。
現状、ほぼ日本人のみが利用している民泊も、渡航制限解除により改めてアジア諸国を中心とした海外旅行者が利用することになることは想像に難くない。

問題はそれがいつか?ということだ。
2020年11月上旬現在では、明確に時期は明言することはできない。
2021年春という人もいれば、2023年や2024年まで続くという人もいる。

事業目線で民泊、ひいては宿泊業を見たとき、現在は新規参入者が増え続けてピークアウトし減少に転じたところだろう。これからますます資金ショートなどにより、ジリ貧経営を強いられる事業者も出てくると思う。

ビジネスにおいて先の読めないことが多々あるのは当然で、事業者自ら考えて決断し、実行していくしかない。
今回のコロナウイルス感染症による影響で、日本はインバウンドバブルの崩壊を経験したことになる。この経験をどう活かすかが、行政や業界に携わる人間にとっての大きな課題となることは疑いようのない事実である。

この私の寄稿が、状況に応じ臨機応変に民泊をビジネスとして考えられている方へ何らかの考えをもたらすことに寄与すれば幸いであると感じている。

文責:株式会社DRILL

大阪民泊

民泊運営代行サービス「らくビー」:http://airbnb-kansai.com/


・観光客の推移(出所):日本政府観光局 (JNTO) 発表統計よりJTB総合研究所作成
https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/

・大阪市特区民泊一号:
https://min-paku.biz/news/osaka-tokkuminpaku.html

・大田区特区民泊号:
https://ameblo.jp/gyouseikurumi/entry-12135153372.html

・民泊新法スタート:
https://www.point-device.com/news74.html

・宿泊旅行統計調査
宿泊旅行統計調査(令和元年・年間値(速報値))令 和 2 年 2 月 2 8 日
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001330006.pdf

宿泊旅行統計調査(平成30年・年間値(確定値))~2月28日公表の速報値からの変更点(概要)~令 和 元 年 6 月 2 8 日
https://www.mlit.go.jp/common/001296050.pdf

宿泊旅行統計調査(平成29年・年間値(確定値))~2月28日公表の速報値からの変更点(概要)~平 成 3 0 年 7 月 3 1 日観 光 庁
https://www.mlit.go.jp/common/001247514.pdf

宿泊旅行統計調査
(平成28年・年間値(確定値))
~3月3日公表の速報値からの変更点(概要)~
平 成 2 9 年 6 月 3 0 日
観 光 庁
https://www.mlit.go.jp/common/001190401.pdf

宿泊旅行統計調査
(平成27年・年間値(確定値))
~2月29日公表の速報値からの変更点(概要)~
平 成 2 8 年 6 月 3 0 日
観 光 庁
https://www.mlit.go.jp/common/001136376.pdf

平 成 2 7 年 6 月 3 0 日
観 光 庁
宿泊旅行統計調査(平成26年・年間値(確定値))
https://www.mlit.go.jp/common/001094697.pdf

平 成 2 6 年 7 月 1 日
観光庁
宿泊旅行統計調査(平成25年1月~12月)
https://www.mlit.go.jp/common/001046276.pdf

大阪民泊

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