(本記事は、野村 絵理奈氏の著書『オンラインで伝える力』の中から一部を抜粋・編集しています)
物理的距離が心理的距離を生むオンラインコミュニケーション
画面を通すと、対面と比べてコミュニケーションが難しくなってしまうのには、次の3つの原因があります。
1、心理的な距離が生まれやすい
2、情報伝達量が制限される
3、集中力を維持させるのが難しい
この特徴は、オンラインコミュニケーションにも当てはまります。
まず、1の「心理的な距離が生まれやすい」というのは、画面を通すと、物理的距離が生まれることが原因です。
対面の場合は、すぐ手を伸ばせば届く距離に相手がいるのが普通です。その気になれば抱きしめることもできますし、極端な話、殴ろうと思えばできてしまう距離です。
反対にオンラインの場合は、地球の裏側にいる人と話すことも可能ですが、実際にふれることは不可能な物理的距離があります。
これは対面でのコミュニケーションとオンラインコミュニケーションの決定的な違いだと言えます。
そして、そのような物理的な距離のせいで生まれるのが、心理的な距離です。
〈ボッサードの法則〉というのをご存じでしょうか。
これは、「男女間の物理的な距離が近いほど心理的な距離は狭まる」という法則で、アメリカの心理学者であるボッサードが5000組の婚約中のカップルに行った調査によって発見したものです。長距離恋愛は長続きしにくかったり、好きな人にもっと近づきたいという心理が働いたりするのは、すべてこの法則のせいだというわけです。この法則は主に恋愛を語る際に使われますが、他にも似たようなセオリーで、営業職の方などにおなじみの〈単純接触効果〉があります。これは、物理的距離と心理的距離は比例するという文字通りシンプルな法則で、恋人だけでなく、すべての人間関係に当てはめることができるでしょう。この法則に従えば、物理的距離があるオンラインコミュニケーションは、心理的な距離も離れやすくなる可能性が高まります。
また、個人的には画面のサイズというのも無関係ではないと感じています。
つまり、スマホやノート型PCの向こうの相手は、実際のサイズよりずっと小さく見えますから、そのせいで相手の存在感を実物より小さくとらえてしまい心理的な距離が生まれている気がするのです。