浸透しつつあるIT重説の今
(画像=Production Perig/Shutterstock.com)

不動産売買や賃貸仲介の場面において不動産業者に課せられた義務の一つとして、「購入者(賃借人)に対する重要事項説明の実施」があります。不動産を購入したり、賃借したりする際に法律で定められた事項を宅地建物取引士という専門資格を保有した者が説明することで、後々のトラブル抑止にもつながっています。本記事では、2017年に解禁されたIT重説の現状と今後の展望について解説していきます。

国土交通省が進めるIT重説とは

「重説」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?おそらく不動産業界になじみのない方にとっては、ピンとこない方も多いかもしれません。重説とは「重要事項説明」の略で、不動産の購入者(賃借人)に対して宅地建物取引士の有資格者から、不動産購入(賃借)に際して重要事項の説明を行うことを言います。

「IT重説」とは、国土交通省によって賃貸借契約に限定して2017年10月に解禁された新しい重説の形です。従来は、顧客と宅地建物取引士が対面して重要事項の説明を行うことが義務付けられていましたが、今回の解禁を受けてスカイプなどのツールを活用してインターネット上で重説を完結することができるようになりました。

賃貸借契約のみが対象

2017年の改定においては、賃貸借契約についてのみIT重説が可能となりました。IT重説の実施に当たっては、宅地建物取引士の記名押印がなされた重要事項説明書を事前に借り主に対して送付することが求められています。また、従来の重説と同様に宅地建物取引士証や関連資料・図面などの提示も必要です。

売買契約においてはIT重説不可

不動産の売買契約において、IT重説は認められていません。賃借の媒介・仲介と異なり、売買の場合には重要事項として説明すべき項目が多岐にわたり、関連資料や図面等の数も膨大になることから賃貸借契約におけるIT重説が世間一般的に浸透してからの解禁になりそうです。

IT重説のメリットとは

IT重説のメリットについて考えてみましょう。

不動産業者の事務所に行く必要がない

従来の重要事項説明においては、不動産業者の事務所に赴いて担当者と面談して説明を受ける必要がありました。引っ越し先を決めようとして不動産業者の事務所に行って物件を内覧した際、「この部屋に決めたい」と思っても、後日改めて重要事項説明を受けに事務所まで行く手間がかかっていたのです。つまり、物件の賃貸借契約を締結するためには「最低でも」2回は不動産業者の事務所に行かなければなりませんでした。

IT重説が可能になったことで実際に物件を内覧した後、わざわざ不動産業者の事務所に行く必要はなくなりました。家にいながらにして、重要事項説明を受けて賃貸借契約を締結することができるようになったのです。この「手間の削減」こそが、IT重説の導入による最大のメリットといえるでしょう。

契約について冷静に判断が下せる

不動産業者の事務所というのは一般の方からすればあまりなじみがなく、緊張してしまう方もいるでしょう。その点、IT重説の導入によって自宅にいながらにして重要事項説明を受けることができるようになったため、契約概要について冷静に判断を下すことができる環境が整ったといえるかもしれません。

IT重説の課題とは

2017年の改定では、賃貸借契約に限定してIT重説が解禁されています。不動産の売買契約にかかる重要事項説明に関しては、従来通り対面により実施することが義務付けられているため、今後、売買契約においてもIT重説を適用できるかどうか、注目すべき点といえるでしょう。また、すでに解禁された賃貸借契約にかかるIT重説を受けた方より、「事前の重要事項説明書の送付がなかった」旨の意見も報告されています。IT重説を行う不動産業者にとっても、業務フローの確立や社内体制の整備は急務といえます。

まとめ

上手に活用すれば非常にメリットの大きいIT重説ですが、現時点でさまざまな課題が散見されるのも事実です。今後世間においてどのように認知されていくのか、見守る段階にあるといえるでしょう。