2018年に引き続き、経営者向け節税保険の規制から目が離せません。定期保険については単一ルールが設定され一応収束の兆しがあるものの、続いては医療保険やがん保険への規制が発表されました。節税保険を巡る最新動向をわかりやすく解説していきます。
節税保険の仕組みとは?「合理性を欠く」理由を解説
法人契約で保険料を法人の経費にするいわゆる「節税保険」。金融庁が節税保険に対して「合理性を欠く」と指摘したことから、2018年は生命保険業界や節税保険の加入者に震撼が走りました。会社の経営者は万一の場合に会社や従業員を守るため、会社を契約者として生命保険に加入しておくと、経営者が死亡した際には会社が保険金を受け取れます。
企業として事業を存続するためのリスクヘッジなので、法人契約の生命保険料は一定の割合で損金に算入することが認められているのです。ここまでなら健全な運用といえます。しかし生命保険には貯蓄性を持つ商品もあり、生命保険を途中で解約した場合は解約返戻金を受け取ることが可能です。そこで、保険料を毎年損金にした上で退職時に解約し、解約返戻金を受け取るという節税スキームが広がりました。
名目は事業のリスクヘッジであっても、実質は節税目的で解約を前提に契約するというわけです。しかしリスクヘッジとして機能する場合もあるため、損金に算入する割合を見直すなど細かな規制が入りつつ節税保険は実質許容されてきました。
金融庁が問題視した理由は?これまでの流れをおさらい
しかし2017年に「プラチナフェニックス」をはじめとした全額損金タイプの節税保険が開発されたことから状況が変わり始めます。これらの節税保険は、契約期間や付加保険料といった項目を調整することで、大幅な節税を実現します。2018年6月に金融庁が実態調査を開始し、これを受けて同年11月には法人向け節税保険の大幅な規制強化が発表されました。
これまでも節税保険は数多く開発され、そのたびに国税庁は通達を出すことでバランスを調整してきました。たとえば法人契約のがん保険は当初は全額損金算入が可能でしたが、2012年に2分の1損金算入に見直されています。国税庁が既存契約に対しても遡及する姿勢を見せたことや、通達ではなく単一ルールを創設すると発表したことから、生命保険各社は節税保険の販売を停止。
大手生命保険会社の社長が弁明するなど、異例の事態が相次ぎました。しかし4月10日の拡大税制研究会では「既存契約への遡求はしない」という方針が明示されました。また、解約返戻率によって損金算入の割合が変わるという単一ルールが設定されたものの、大幅に加入者のメリットが減少するわけではありません。
この発表を受け、一連の騒動は収束に向かっています。生命保険会社や中小企業の経営者は胸をなでおろしたことでしょう。
節税保険にさらなるメス?医療保険とがん保険が対象
事態が収束に向かうと同時に、新しく議題にのぼったのが医療保険とがん保険です。医療保険やがん保険も経営者が被保険者となって法人で加入することができ、保険料の全額、もしくは半額を損金算入することができます。そこで、生命保険会社は払込期間を短縮することで数百万円を損金にできるよう調整。
さらに払込期間が過ぎたら保障を個人で買い取ることで、「節税しながら個人の保障も得られる」という経営者にとってメリットの多い商品でした。このような実態を是正するため、全額損金算入できる保険を対象とした規制の通知が発表されました。内容は1契約当たりの損金算入の限度額を30万円にするというものです。
節税保険は保険の本来の目的から逸れているという批判があるものの、まっとうな経営者にとっては事業のリスクヘッジとして効果的であり、損金算入してしかるべきものもあります。今後も国税庁の動向については、定点観測し情報を逃さないようにしましょう。
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