富裕層でも「脳のクセ」には勝てない?資産運用と投資心理
(画像=Fahkamram/Shutterstock.com)
アレン琴子
アレン琴子
国際コンサル企業などの翻訳業務を経て、ファイナンシャルライターに転身。現在は欧州を基盤に、複数の大手金融メディアで執筆活動中。国際経済から投資、資産運用、FinTech、ビジネス、行動経済学まで、広範囲に渡る「お金の情報」にアンテナを張っている。

人間の脳には、それぞれにクセがあることをご存じでしょうか。早急な判断を下してしまうのは、脳のクセが原因かもしれません。富裕層は自分の脳のクセを知り、事前に対処をすることで上手に資産を増やしています。失敗をまねきやすい投資心理と対処法を見てみましょう。

富裕層は脳の癖を知り、上手に対応する

脳のクセとは、「先入観や偏見が合理的な判断や意思決定を妨げる」という思考の偏りで、社会心理学では認知バイアスと呼ばれています。投資の世界でも、脳のクセが顔を出すことは珍しくありません。例えば「もっと高リターンを狙いたい」といった願望や、「損失を出したくない」という恐怖感が、的確な投資判断や意思決定をゆがませているかもしれません。

その結果、損失を出したり、より多くの利益を手にしたりする機会を逃しているとしたら脳のクセは悪い習慣ということになります。富裕層はさらなる富を得るために、ネガティブな影響をもたらす悪い習慣を生活から徹底的に排除し、脳のクセにも上手に対応しているのです。

よくある5つの投資心理と対処法

具体的に脳のクセとはどのようなものを指すのでしょうか。脳のクセを踏まえてよくある投資心理と対処法を見ていきましょう。ここでは、以下の5つの内容について解説します。

1 「自分の判断は常に正しい」という過信
2 損失回避を最優先する
3 アプローチに規律がない
4 コンフォートゾーンから足を踏みださない
5 意思決定を単純化する

1 「自分の判断は常に正しい」という過信

投資で少しでも成功すると「自分は投資に向いている」という過剰な自信が生まれます。しかし自信過剰によって警戒心が薄れ「自分が選択を誤るはずはない」と無謀な賭けに走ったり、短期的な視野から必要以上の頻度で売買を行ったりして結果的にリターンにマイナス影響を与えることも少なくありません。

経済学者のブラッド・バーバー氏とテランス・オーシャン氏が共同発表したレポートでも、「自信過剰な人ほど資産運用のパフォーマンスが良くない」と報告されています。「投資にはリスクがつきもの」という事実を常に念頭に置き、慎重さを忘れないようにしましょう。

2 損失回避を最優先する

自信過剰とは正反対に損失を出すことを恐れるあまり、せっかくのチャンスを逃していませんか。行動経済学によると、人は利益よりも損失に対する恐怖感の方が大きいといいます。「いつか取り戻せるのではないか」と損失が生じている株をいつまでも保有していたり、「今売却しておけば損することはない」と短期的な視野から利益の確定を最優先したりするなど、極端な行動に走る投資家もいます。

長期的な利益を追究する視野に切り替えることで、目先の利益や損失に惑わされにくくなるはずです。

3 アプローチに規律がない

人間は確固たる計画や意思が確定していない限り、現状維持に徹する傾向があります。「来月から貯蓄して投資に回そう」「ポートフォリオを見直そう」などと考えているだけで、中々実行に移せないのは、具体的な計画や目標が決まっていないためです。「毎月、投資資金を積み立てる」「3ヵ月に一度、リバランスを行う」といった規律あるアプローチが、資産運用にも必要になります。

4 コンフォートゾーンから足を踏みださない

人間には「コンフォートゾーン(居心地の良い範囲)から足を踏みだす行為に不安を感じる」という習性がありますが、投資の世界でも同じことがいえます。そのため慣れ親しんだものを投資対象として選ぶ傾向が強く、ポートフォリオに偏りが見られることも少なくありません。その結果、設定していたリスク許容レベルや投資目標から、軌道が大きくズレてしまうこともあります。

基本となるポートフォリオの構成を決め、定期的にリバランスを行うことでリスクを上手に管理しながら利益を得ることができるでしょう。

5 意思決定を単純化する

「表面的で分かりやすい情報を元に、意思決定を下す」という特徴は、脳のクセの一つです。「インデックスの数値だけに注目し、全体的な値動きや影響を考慮しない」「過去の運用実績から、将来的な利益を期待する」など、不合理に単純化した意思決定の例はたくさんあります。複雑なトピックにあえて取り組むことで表面からは見えない重要な情報が得られるかもしれません。脳のクセを克服し、どのような状況でも客観的な判断を下せる習慣をつけましょう。

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