大家さんの空室対策としての「人気設備」
(画像=Evgeny Atamanenko/Shutterstock.com)
中村伸一
中村伸一
(株)マネーデザイン代表取締役 学習院大学卒業後、外資系会計事務所、銀行、証券会社を経て、2014年FP会社である株式会社マネーデザインを立ち上げ、代表取締役に就任。 フランスの経済学者、トマ・ピケティが「21世紀の資本」で述べている通り、金融リテラシーの向上が日本の経済発展につながるという信念のもと、お金に関する情報発信や講演活動を行う。特に50歳以上の層に対し、その人の持つ「人的資源」とファイナンシャル・プランニングを合わせた「リ・ライフデザイン」を提唱し、個人の住宅購入、生命保険、資産運用アドバイス、相続・事業承継、中小企業の財務相談、企業研修などを行っている。 保有資格 ファイナンシャルプランナー(AFP)、宅地建物取引士、高齢者住まいアドバイザー、 証券外務員1種、生命保険シニアライフコンサルタント、変額保険販売資格、海外ロングステイアドバイザー、日商簿記検定2級

大家さんにとって最大の悩みは、収益に直結する空室なのは間違いありません。しかし低コストで導入でき空室対策となるのが、入居者にとって人気の設備を導入することです。そこで今回は入居者から選ばれる賃貸物件になるための人気設備について解説していきます。

目次

  1. 人気設備の「キーワード」は「便利・快適」「安心・安全」
  2. 「便利・快適」な設備とは
  3. 「安心・安全な設備」
  4. 検索に引っかかる物件になるために
  5. 空室対策には時代のニーズにそった人気設備が必須

人気設備の「キーワード」は「便利・快適」「安心・安全」

最近の人気設備に対する各種調査で共通しているキーワードは、「便利・快適」「安心・安全」です。人は一度便利さ、快適さを手に入れてしまうと、今までの生活に戻れなくなります。快適さが生活の一部となってしまうため、それがないと逆に「不便さ」を感じてしまうものです。そのため便利や安全といったキーワードがそろっていない物件は、入居者の選択肢から外れてしまいます。

「便利・快適」な設備とは

「便利・快適」な設備としては、エアコン、バス・トイレ(現在は旧来の3点ユニットではなく、バスタブ、トイレ、脱衣所が別)、インターネット回線が挙げられます。2016年12月にCHINTAIが行った調査によると、エアコン付き物件を希望する割合は約85%でした。近年の温暖化で夏の暑さの厳しさは、命の危険が及ぶほどですので、もし未設置であれば真っ先に選択肢から外れてしまう可能性があります。

そのため未設置であれば、次の入れ替えの時期に設置を検討すべきです。もし3月の入れ替えが多ければ、そのタイミングでエアコンを入れると最盛期前となるので価格も抑えられるかもしれません。居室が複数ある場合は、コストがかさみますが居室ごとの設置を考慮したほうが良いでしょう。また洗面・トイレの水回り設備は、浴室乾燥機・温水洗浄便座の人気が高い傾向です。

特に女性入居者を呼び込みたい場合は、ぜひ設置を検討してください。また夫婦や子供がいるファミリー向けの部屋には、お風呂の追い炊き機能が人気です。バランス型給湯器の寿命は約10~15年のため、もし耐用年数を迎える年数の場合、資金繰りと準備をしておくと慌てずに済みます。また無料Wi-Fiとなると、それほど多くの物件が検索で出てこないため差別化になるでしょう。

さらに近年のインターネット通販サイトの便利さから、それ抜きでは生活できない人も多いのではないでしょうか。特に若年層をターゲットにした物件であれば、宅配ボックスの設置を検討しましょう。ネット通販での商品をいつでも受けられるため、利便性が高まります。

「安心・安全な設備」

近年、防犯意識はより一層高まっている傾向です。2017年に長谷工IDをもつ人向けに行われた「住まいの防犯に関するアンケート」によると、防犯について「よく不安に思う」8.2%、「時々不安に思う」58.8%でした。約67%の人が防犯に関して不安を感じていることが分かります。そのため防犯を意識した物件は入居者のニーズに沿っているといえるでしょう。

マンション形式の物件の場合、入り口をオートロック付きの物件にすることで不法侵入者を遠ざけることができます。またピッキング対策の鍵やTVモニター付きインターホンなどのセキュリティ対策も重要です。さらに防犯カメラを設置することで不法行為の抑制効果が期待できます。スマートキーを導入するなどで物件の付加価値を向上させることもアイデアの一つでしょう。

検索に引っかかる物件になるために

現在、賃貸物件を探す人は、まずパソコンやスマートホンなどで物件検索することから始める傾向です。賃貸物件の検索サイトを使いながら住みたい地域を絞り込み、家賃、建物の設備などが付帯されているかどうかで絞り込んでいきます。さらに室内の写真などを見て最終的に内見する物件を絞り込みます。

したがって写真の良し悪しも大切ですし、どのような設備がついているのかを写真でアピールできれば、差別化の要因となるでしょう。2018年10月15日の全国賃貸住宅新聞に掲載された記事では、人気設備のランキングが掲載されています。

「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」設備ランキング(2018年)

単身者向け物件 ファミリー向け物件
1位
→ 前回1位
インターネット
無料
1位
→ 前回1位
インターネット
無料
2位
↑ 前回3位
宅配ボックス 2位
↑ 前回3位
追い炊き機能
3位
↓ 前回2位
エントランスの
オートロック
3位
↓ 前回2位
エントランスの
オートロック
4位
↑ 前回圏外
備え付け
家具・家電
4位
→ 前回4位
宅配ボックス
5位
→ 前回5位
浴室換気乾燥機 5位
→ 前回5位
システムキッチン
6位
↓ 前回4位
ホーム
セキュリティー
6位
→ 前回6位
ホーム
セキュリティー
7位
→ 前回7位
独立洗面化粧台 7位
↑ 前回8位
ガレージ
8位
↑ 前回9位
防犯カメラ 8位
↑ 前回9位
ウォークイン
クローゼット
8位
↓ 前回5位
ウォークイン
クローゼット
9位
↓ 前回7位
浴室換気乾燥機
10位
↓ 前回9位
システムキッチン 10位
↑ 前回圏外
太陽光パネル
(入居者個別売電)

出典:全国賃貸住宅新聞(2018年10月15日号)

インターネット設備は、単身者、ファミリー層共に第1位となりました。ここまでくると設置必須の設備といえるでしょう。毎月の通信コストを考えると多少家賃に上乗せされても自宅でなんの制約もなく、インターネットが使えることの恩恵が受けられること大事だということです。

「この設備がなければ入居が決まらない」設備ランキング(2018年)

単身者向け物件 ファミリー向け物件
1位
→ 前回1位
室内洗濯機置き場 1位
↑ 前回3位
室内洗濯機置き場
2位
→ 前回2位
TVモニター付き
インターホン
2位
→ 前回2位
独立洗面化粧台
3位
→ 前回3位
独立洗面化粧台 3位
↓ 前回1位
追い炊き機能
4位
↓ 前回3位
洗浄機能付き便座 4位
→ 前回4位
TVモニター付き
インターホン
5位
→ 前回5位
インターネット
無料
5位
→ 前回5位
洗浄機能付き便座
6位
→ 前回6位
エントランスの
オートロック
6位
→ 前回6位
システムキッチン
7位
→ 前回7位
備え付け照明 7位
↑ 前回8位
エントランスの
オートロック
8位
→ 前回8位
宅配ボックス 8位
↑ 前回9位
インターネット
無料
8位
→ 前回9位
ガスコンロ
(二口/三口)
9位
↓ 前回7位
ガスコンロ
(二口/三口)
10位
↑ 前回圏外
システムキッチン 10位
→ 前回10位
エレベーター

出典:全国賃貸住宅新聞(2018年10月15日号)

こちらも室内洗濯機置き場が、単身者、ファミリー層両方で1位となりました。防犯対策上だけでなく台風や大雨といった災害対策という意味でも室内に洗濯機を置くスペースは必須な時代といえるでしょう。

空室対策には時代のニーズにそった人気設備が必須

2020年から5Gが始まり、IoT(Internet of Things)によりすべてのものがインターネットにつながる時代が到来します。また東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて4Kテレビが当然の時代にもなるでしょう。2019年時点でもAmazonプライムビデオやNetflixなどインターネット経由で閲覧できるビデオオンデマンドが浸透しつつあります。

そのため高画質かつ安定したインターネット環境はますます必須となるでしょう。オーナーとしては、世の中のニーズがどこにあるのか、常にアンテナを張りながら空室対策を前倒しで行ったおきたいものです。

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