「ローカル」という特色を武器に、不動産クラウドファンディング事業を軌道にのせているわかちあいファンド。運営会社の代表者である森田康弘さんと事業担当者の齋藤晃聖さんに、事業の背景や今後の課題について伺いました。
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地方の中堅企業が不動産クラファンに挑戦した理由
--インタビューの冒頭で、わかちあいファンドの強みはローカルだというお話でしたが、地方発の不動産クラウドファンディングのポテンシャルをどのように考えていますか。
森田:現在、国内には空き家が約850万戸ありますが、空き家が多い傾向は地方に行くほど強まるでしょう。今、大都市圏の不動産は価格が上昇しているため、物件が仕入れにくい状況になっています。対極的に、地方は空き家や遊休地が数多くある状況です。とはいえ、中身はピンキリですから、私たちはその中から潜在価値のある物件を選択してファンド化していくことで「地方の不動産にも可能性があること」を示していきたいですね。
--逆に、地方の物件でファンドを組成するデメリットはありますか。
森田:地方は不動産の需要が少ないことが多いので、低稼働率と隣り合わせです。そのため、私たちのように地方物件に慣れた不動産会社でないとプロパティマネジメント(管理・運用)の面で難しいと感じますね。例えば、都心の物件に慣れた不動産会社が田舎の物件を扱っても、ノウハウが違いますから、上手くいかない可能性がありますね。
--地方の中堅企業が不動産クラウドファンディングを立ち上げるのは大きなチャレンジだったと思います。どのような経緯で事業を立ち上げられましたか。
森田:弊社は立ち上げ当初(2000年頃)、不動産会社向けのポータルサイトを運営していました。ポータルサイトで集客をして、不動産会社の営業をお手伝いするような仕組みでした。そこから現物の不動産の取引をするようになったというのが創業からの大きな流れです。
そんな中で、不動産のファンド事業に関して、以前から興味を持っていました。ただ、現実的に私たち自身ができるとは思っていませんでしたね。でも不特法(*)が大きく変わったこと、ご縁に恵まれたことなどが重なってこの分野に挑戦することになりました。
*不特法=不動産特定共同事業法。不動産クラウドファンディング事業をするための前提となる法律。
ただ、地方でビジネスをしている周囲にいる方々に意見を伺っても、大半の人が不特法の事業に否定的でしたね。
--否定意見が多くても事業化したいと思った理由は何でしょうか。
森田:時代の大きな流れとして、間接金融から直接金融(※)に変わるというダイナミックな動きがあると感じていました。
*間接金融=金融機関から資金を集める仕組み。直接金融=投資家から直接資金を集める仕組み。
これからの時代は、直接金融の重要性が高まると思っていたので、「たとえ儲からなくても挑戦するべき」と決断しました。金融機関だけに依存する方向性は正しくないとの考えでした。
私たちは現在、不動産売買や分譲地開発をしていますが、もともと不動産ポータルサイトから事業を始めていることも大きかったかもしれません。一般的な不動産会社がクラウドファンディング事業をするのはハードルが高いかもしれませんが、インターネット系の事業をしていたのでクラウドファンディングがなじみやすかったのかもしれませんね。
--実際に、不動産クラウドファンディングに挑戦してみて、どのようなことを感じられていますか。
森田:わかちあいファンドを運営して、直接金融によって資金を調達できるということを 実感できたのは大きいですね。おかげさまで、不動産クラウドファンディング事業によって運営していくのに十分な利益が出ています。
一番大きかったのは、不動産クラウドファンディング事業が軌道にのったことで私たちが新しい視野を獲得できたことです。一言でいえば、新たな事業の可能性が見えてきた。これは私たちの今後に非常にプラスだと考えています。
クラウドファンディングだからこそ、リアルが大事
--わかちあいファンドは、投資家への情報発信に力を入れていますね。情報発信についてのお考えについても伺えますか。
:SNSを含めて情報発信には力を入れているつもりですが、基本的なスタンスとして、小細工をするのではなく、私たちのありのままの姿や、等身大の物件の魅力をお伝えしています。その方が投資家さんに現実味や真実味が伝わると考えています。
わかりやすい例でいうと、最近では物件の写真をきれいに加工することは簡単です。しかし、投資家さんからすると、あからさまに写真を加工されても「これって本当なの?」と逆に不信感を抱いてしまいます。
--ネット経由の不動産投資クラウドファンディングだからこそ、リアルな雰囲気が大事になってくるのですね。
齋藤:投資家さんの大半は遠方にお住まいなので、投資する物件を直接見に行けないケースが多いでしょう。だからこそ、現実味や真実味を交えて、丁寧な情報発信をすることが大事だと思っています。
--SNSでは、物件の情報以外にもフードやスイーツの情報も目立ちますね(笑)
齋藤:そうですね。物件情報だけでなく、弊社の社員を含めたありのままを皆さんに感じていただければと思います。こういったSNSのコミュニケーションで「親近感がわいたよ」という投資家さんもいらっしゃいます。「親近感を出しすぎでは」とのご意見もあるかもしれませんが、皆さんに温かく見守っていただければと思います。
不動産クラファンの運営事業者はまだまだ少ない
--不動産クラウドファンディング業界の課題について、何か感じることありますか。
齋藤:不動産クラウドファンディングの事業者数がもっと増えてほしいですね。不動産クラウドファンディングや不特法の認知度はまだまだ低いですが、この状況は事業者数が増えれば変わってくると考えています。
事業者数が増えない原因のひとつは、許可要件や申請手続きなどのハードルだと思いますが……それを考慮しても業者数はもっと多くてよい気がしますね。
--事業者数が増えると、競合が増えて事業へのマイナス面があるのではないですか。
齋藤:結局のところ、わかちあいファンドで投資をしている方々の大半は、別の不動産クラウドファンディングも利用しているケースが多いわけです。業界全体のボリュームゾーンが 拡大すると、私たちのサービスを利用していただける機会も増えるため、相乗効果が生まれると考えています。
--わかちあいファンドがクリアしたい直近の課題はありますか。
森田:先ほどお話ししましたが(前編参照)、わかちあいファンドの現在の登録者数は1,000人を超えたくらいです。この登録者数を2,000人にすることが目標ですね。とはいえ、ファンドの数や予算規模が今のまま登録者数だけが増えても、皆さんの投資機会が減ってしまう。そうならないよう、ファンドの数を増やすこと、予算規模を拡大することと両輪で進めていきたいと思います。
ファンドの安定供給というのは、不動産クラウドファンディングにとって生命線と考えています。わかちあいファンドがさらなる成長を遂げるために、ファンドの安定供給はクリアしなければならない。難しい課題ではありますが必ずクリアしたいですね。
--最後に読者の方が、わかちあいファンドに登録するきっかけになるようなメッセージをいただければと思います。
森田:私たちは、シェアリングエコノミーがこれからの世界を席巻していくと思っています。わかちあいファンドというネーミングは、不動産のシェア、不動産をわかちあう、それによって社会に貢献するといった意味で名づけました。
このファンド名が表すように、私たちは皆様と共に不動産によって豊かさをわかちあっていきたいと考えています。これを実現できるようなファンドを作っていきますので、ぜひ投資していただければと思います。
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