相続,評価方法
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一口に不動産投資と言っても、REIT・不動産小口化・現物不動産などさまざまな投資方法があります。本稿では、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説し、相続時の評価方法における3つの投資方法の違いを見ていきます。

目次

  1. 1.REIT・不動産小口化商品・現物不動産の概要
    1. 1-1.REIT
    2. 1-2.不動産小口化商品
    3. 1-3.現物不動産
  2. 2.REIT・不動産小口化商品・現物不動産のメリット・デメリット
    1. 2-1.REITのメリット・デメリット
    2. 2-2.不動産小口化商品のメリット・デメリット
    3. 2-3.現物不動産のメリット・デメリット
  3. 3.REIT・不動産小口化商品・現物不動産の相続方法の違い
    1. 3-1.「相続時評価方法」の違い
    2. 3-2.「遺産分割方法」の違い
    3. 3-3.相続税対策で有利なのは?
  4. 4.まとめ

1.REIT・不動産小口化商品・現物不動産の概要

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始めに、3つの投資方法の概要を見てみましょう。

【表1】REIT・不動産小口化商品・現物不動産の特徴

購入費用投資形態収益の内容運用方法
REIT数万~数十万円証券分配金委託
不動産小口化商品1万円から証券または現物分配金委託
現物不動産物件による現物家賃自己

1-1.REIT

REITとは、投資法人が投資家から集めた資金で複数の不動産を購入し、運用して得られた賃料収入や不動産の売買益を、分配金として投資家に還元する投資信託の一種です。米国で開発された仕組みで、日本で生まれた商品はJapanの頭文字をとってJ-REIT(上場不動産投資信託、以下REIT)と呼ばれています。

REITは証券取引所に上場されているため、株式などと同じように売買することができます。流動性が高く、簡単に換金できることがREITの魅力です。日々の取引価格は新聞の株式欄に掲載されるので、簡単に時価を把握できます。

1-2.不動産小口化商品

別名「小口不動産投資」とも呼ばれ、大都市圏の高額な不動産を100口、50口などに分割して販売されるものです。たとえば1億円のマンションを100口に分割する場合は、1口あたりの投資額は100万円です。マンションが主流ですが、駐車場を対象にしたファンドもあります。不動産小口化商品の出資形態には、「匿名組合型」と「任意組合型」があります。

【表2】「匿名組合型」と「任意組合型」の違い

所有権所得区分登記費用
匿名組合型なし雑所得不要
任意組合型あり不動産所得必要

比較すると、匿名組合型のほうが運用が容易であることがわかります。匿名とあるように、投資家の個人名が登記されることはありません。一方で任意組合型には所有権があり、登記もされるため、現物不動産に近い投資方法と言えるでしょう。

1-3.現物不動産

説明するまでもありませんが、マンションやアパート、ビルなどの不動産に直接投資することです。1室または1棟まるごと購入するため、一般的には数千万円から数億円の資金を必要とします。REITや小口化商品が登場する前は、不動産投資には「ある程度の資金力を持つ富裕層でなければ難しい」というイメージがありました。

現物不動産は毎月の家賃が収入源となり、その中からローンを返済していくため、ローン金利を上回るような家賃収入が見込める物件を購入する必要があります。

2.REIT・不動産小口化商品・現物不動産のメリット・デメリット

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2-1.REITのメリット・デメリット

REITでは、投資対象となる物件探しや購入、管理は専門家が行うため、投資家は不動産の知識がなくても気軽に始めることができます。都心や地方の物件、居住用マンションやオフィスビルなど、さまざまなタイプの物件に投資するため、リスクが分散・軽減されることもメリットです。

優良物件に投資するため分配金の利回りが高い銘柄が多く、分配金の平均利回りは2020年2月14日現在で3%台と高水準を維持しています。

デメリットは、株式と同様に値下がりするリスクがあることです。また金利動向の影響を受けやすく、長期金利が上昇するとREIT指数は下落する傾向があります。

2-2.不動産小口化商品のメリット・デメリット

不動産小口化商品の最大のメリットは、現物不動産の価格の数十分の1~数百分の1の資金で購入できることです。不動産投資型クラウドファンディングでは、1万円から出資できるものもあります。

REITでは多くの物件がパッケージになっているため、不動産を所有している感覚があまりありませんが、不動産小口化商品(任意組合型)は特定の物件を所有するため、現物投資に近い感覚があり、物件に愛着が湧きます。

デメリットは、商品数が少なく、募集が行われると出資枠がすぐに埋まってしまうため、投資できるチャンスが少ないことです。

2-3.現物不動産のメリット・デメリット

現物不動産に投資するメリットは、ローンを完済すればすべて自分の資産になることです。たとえば、家賃10万円のマンションを3室所有していれば、ローン完済後は30万円(管理費等諸経費別)が毎月入ってくるので、老後の安定した生活資金になります。

不動産投資ローンを利用することで、自己資金の何倍もの投資(レバレッジ投資)ができることもメリットです。頭金が10%の場合、自己資金が500万円あれば5,000万円の物件を購入することができる(金融機関によって基準が異なります)ので、自己資金に10倍のレバレッジを効かせたことになります。

デメリットは、現物不動産を購入するため多額の資金が必要になることです。

3.REIT・不動産小口化商品・現物不動産の相続方法の違い

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相続した不動産は、その形態によって相続時の評価方法が異なります。子や孫に不動産を残したい場合は、3つの投資対象の相続時の評価方法と遺産分割方法を確認してから投資するべきです。

それでは、不動産の相続における「相続時評価方法」「遺産分割方法」について、3つの投資対象の違いを見てみましょう。

3-1.「相続時評価方法」の違い

【表3】REIT・不動産小口化商品・現物不動産の相続時評価方法

土地建物(自宅)建物(賃貸)遺産分割
REIT相続時時価容易
不動産小口化(匿名)相続時時価容易
不動産小口化(任意)路線価80%固定資産税評価額70%容易
現物不動産路線価80%固定資産税評価額100%固定資産税評価額70%困難

※上記は一般的な例であり、土地・建物の要件によって減額率が異なる場合があります。

REITや不動産小口化(匿名組合型)のように、現物を所有せず出資のみを行うものは、株式などと同じ扱いになり、時価で評価されるため節税効果はありません。

現物不動産や不動産小口化(任意組合型)では現物を所有するため、土地は時価から20%、賃貸用建物は30%減額され、節税効果があります。

遺産分割については、REITと不動産小口化は1口単位で分割所有できるため、容易に財産を分けることができます。現物不動産は分割協議が難航することが多いので、以下のような分割方法を検討する必要があります。

3-2.「遺産分割方法」の違い

遺産分割の方法には、以下の4つがあります。

【表4】REIT・不動産小口化商品・現物不動産の遺産分割方法

現物分割代償分割換価分割共有
REIT容易可能可能口数で共有
不動産小口化容易可能可能口数で共有
現物不動産困難可能可能困難

・現物分割
現金、不動産などの財産を複数の相続人で分けて相続する方法。

・代償分割
不動産など分割が難しい財産を受け取った相続人が、他の相続人にそれに見合った現金を渡す方法。

・換価分割
相続する不動産などを売却して、相応の比率で相続人に現金を分配する方法。

・共有
不動産などの相続した財産を共同で所有する方法。

現物不動産は、共同相続人の仲が良くなければ、分割や共有が難しい資産です。また、アパートなどの賃貸物件を共有する場合も、経営方針が対立する可能性があります。現物不動産は、現金に余裕があるなら「代償分割」で、余裕がない場合は「換価分割」で分けたほうがトラブルは少ないでしょう。

REITと不動産小口化商品は口数で分けることができるため、ほとんどの分割方法に対応できます。1口1万~100万円程度と少額なので、現金相続を希望する人との調整がしやすいというメリットがあります。

3-3.相続税対策で有利なのは?

では、3つの投資対象のうち、相続税対策としてはどれが最も有利なのでしょうか。現物不動産と不動産小口化(任意組合型)は、どちらも同じ方法で評価されます。評価額が土地で20%、建物で30%減額されるため、大きな節税効果があります。ただし、自分が居住する建物は固定資産税評価額の100%で評価されるため、相続税の節税にはなりません。

一方、第三者に賃貸している住宅は70%に減額されます。固定資産税評価額は、毎年5~6月頃に自治体から送られてくる固定資産税の課税明細で確認することができます。

現物不動産が小規模宅地の場合は「小規模宅地等の特例」が摘要され、相続税が大幅に減額されます。減額率は、以下のとおりです。

・特定居住用宅地等は330平方メートルを限度に80%
・特定事業用宅地等は400平方メートルを限度に80%
・貸付事業用宅地等は200平方メートルを限度に50%

また、生前贈与は相続税の節税方法として知られていますが、暦年贈与(その年ごとの贈与)では110万円の基礎控除が使えるので、REITや不動産小口化商品をあらかじめ贈与しておけば、相続税を節税することができます。

このように、3つの投資対象のうちどれが有利になるかは状況によって変わります。自分が所有する不動産にどの方法を適用すれば有利になるかは、税理士や不動産会社に相談するといいでしょう。

4.まとめ

ここまで、不動産投資における代表的な3つの投資方法の概要やメリット・デメリット、相続方法について見てきました。

現物不動産は安定した家賃収入が見込めるため、老後を考えると頼りになる資産ですが、共同相続人との分割相続が難しいことがネックです。

REITは高利回りで分割相続もしやすく便利ですが、値下がりリスクがあり、節税効果がないのがデメリットです。

不動産小口化商品は、出資のみの証券タイプと現物所有を選ぶことができ、1口単位で現物を所有できるため生前贈与に向いています。証券タイプは、相続時に節税にならないことがデメリットです。

以上のように、不動産の相続には多くの方法があり、どの方法がベストかは共同相続人との関係によって変わるので、ケースバイケースで考える必要があります。被相続人の意思を尊重しつつ、相続が円満に行われるように準備しておきましょう。

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