賃貸アパートやマンションに投資をするにあたり気になるのが不動産収入の税金です。本記事では、不動産収入の税金の内容や計算方法について解説します。
不動産収入にかかる税金は2つ
賃貸アパートやマンションから賃貸料が得られるようになると以下の2つの税金がかかります。
所得税
所得税は、賃貸収入だけでなく給料や事業収入、年金収入、副業収入など個人の所得にかかる税金です。税務署を通じて国に納めます。勤務先の会社から受け取る給料や公的年金を除き基本的に確定申告を行うことが必要です。所得税は「課税所得金額×税率」で計算します。原則合算した所得に応じて適用する税率が変わるのが特徴です。
不動産の譲渡所得など一部の所得は、分離課税となるため、他の所得と分けたうえで一律の税率を乗じて納税額を計算します。確定申告では、その年の1月1日~12月31日の所得を計算し確定申告書を作成することが必要です。確定申告書は、翌年の3月15日までに所在地を管轄する税務署に提出する必要があります。また納税額がある場合は、同日までに納めなくてはなりません。
なお2037年までは、所得税とあわせて復興特別所得税(納める所得税×2.1%)も納付することが必要です。
住民税
住民税は、都道府県や市区町村といった地方自治体に納める税金です。その年の1月1日に住民票がある市区町村から課税されます。不動産収入に課される住民税は、次の2つから構成されています。
- 均等割:一定額以上の所得のある人に対し、全員均一に課される部分
- 所得割:前年の所得額に応じて納税額が決まる部分。全国一律10%(都道府県民税4%、市区町村民税6%)の税率で税額を計算する
こちらは、所得税とは異なり基本的に確定申告を行う必要ありません。なぜなら所得税での確定申告の情報が国税庁からそのまま市区町村に伝達されるからです。市区町村では、受け取った情報から前年の所得額を確認し住民税の納付額を計算します。税額を計算した後は、5月下旬~6月初めにかけて住民税の納付書を納税者または勤務先へ送付する流れです。納税そのものは、6月から始まります。
不動産収入にかかる税金は「不動産所得」で決まる
不動産の賃貸による収入は、税法上「不動産所得」として取り扱われます。ここで不動産所得の内容と計算方法を確認しましょう。
不動産所得とは
不動産所得とは、土地や建物といった不動産やその上に存する権利などの貸付によって生じた所得のことです。不動産所得は、給与所得や一時所得、雑所得といった他の所得と合算したうえで課税される「総合課税」の対象となります。総合課税の対象になると合算した所得額から配偶者控除や基礎控除などを差し引いた後の金額により適用する税率が決まる仕組みです。
ただし不動産所得が赤字であれば他の所得の黒字と相殺する「損益通算」ができます。損益通算をすると課税される所得額が下がるため、納税額を減らすことが可能です。なお所有しているアパートやマンションで営む民泊は、不動産所得ではなく通常「雑所得」となります。さらに賃貸用のマンションやアパート、戸建て住宅を売却したときの利益も不動産所得ではなく譲渡所得です。
不動産所得の計算方法
不動産所得は、以下の式で計算します。
不動産所得=総収入金額-必要経費
総収入金額と必要経費になるものとしては、以下のようなものがあります。
【総収入金額】
・家賃収入
・共益費(水道光熱費、清掃代など)
・更新料、礼金、名義書換料、頭金
・保証金や敷金のうち、借主に返還しないもの
【必要経費】
・管理会社に支払った管理費・共益費
・修繕費
・固定資産税・都市計画税
・損害保険料
・不動産ローンの利息
・建物の減価償却費
この他にも賃貸アパートやマンションを購入したときの不動産取得税や登録免許税、印紙税、前の家主に支払った固定資産税精算金も必要経費となります。
事例で不動産収入の税金を見てみよう
不動産収入を得ると不動産所得の金額によって納める税金が変わります。次の事例で納める所得税の金額がどうなるかを確認してみましょう。
不動産の収入にかかる所得税をシミュレーション
給与所得520万円(給与年収700万円)、社会保険料が年間約103万円で東京都在住、40代以上の独身の給与所得者が1億円で不動産投資を行い、2年目となったケース。特に生命保険などには加入していないものとします。
項目 | 金額 |
---|---|
年間の家賃収入 | 500万円 |
管理料・共益費 (※年間賃料収入の5%と仮定した場合) | 25万円 |
固定資産税・都市計画税 | 30万円 |
損害保険料(本年分) | 10万円 |
不動産ローンの利息 | 157万円 |
建物の減価償却費 | 230万円 |
課税される所得額と税額は次のようになります。
1.不動産所得を計算
総収入金額500万円-必要経費(25万円+30万円+10万円+157万円+230万円)=不動産所得48万円
2.給与所得と合算し、所得の合計額を計算
給与所得520万円+不動産所得48万円=所得の合計額568万円
3.所得の合計額から所得控除を差し引き、課税される所得額を計算
所得の合計額568万円-社会保険料控除103万円-基礎控除48万円=課税される所得額417万円
4.課税される所得額から適用税率と控除額を割り出し、所得税額を算出する
先ほど確認した「No.2260 所得税の税率(国税庁)」を見ると適用税率は20%、控除額が42万7,500円です。ここから納税額を計算すると次のようになります。
① 417万円×20%-42万7,500円=40万6,500円(所得税)
② 40万6,500円×2.1%=8,536円(復興特別所得税)
③ ①+②=41万5,036円
給与所得者は、年末調整でいったん31万500円を国に納めているので実際の確定申告では10万4,536円の所得税を納付することになります。もし簡単なシミュレーションをするのなら毎年の年末調整で適用されている税率を確認し「不動産投資をしたときの利益×適用税率」で考えるといいでしょう。
不動産収入の住民税は「一律10%」
住民税の所得割額は、一律10%です。住民税での所得計算は所得税のものより若干多くなります。ただこちらも簡単にイメージするなら「所得税の課税所得額×10%」で考えるといいでしょう。
不動産収入の税金に関する注意点
今回、不動産収入の税金の考え方を簡単に説明しました。実際は、納税になるばかりでなく不動産所得が赤字であれば損益通算で還付となります。また青色申告で納税額が0円になることも少なくありません。不動産収入の税金の細かい点が気になるのであれば専門家に相談したほうがいいでしょう。
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