投資をするならどちら?マンション投資とアパート経営の違いを解説
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本間貴志
本間貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自主管理で賃貸経営をする不動産投資家の顔も持つ。

1棟物件を手に入れて不動産投資を始めたいけどマンション投資とアパート経営で迷っている……こんな悩みを持つ投資家もいるのではないでしょうか。本稿では、マンション投資とアパート経営のどちらかを選択するときの参考になるようにさまざまな観点からマンションとアパートを比較し違いを明確にします。あなたと相性がよいのは、どちらの投資でしょうか。

そもそもマンションとアパートは何が違う?

マンションとアパートの法的な定義はありません。一方、情報サイトの「SUUMO」や「CHINTAI」などを参考にすると不動産業界や世間でいわれているマンションとアパートの違いはあります。その内容は、以下の通りです。

名称階数構造
マンション3階建て~・鉄筋コンクリート造
・鉄骨鉄筋コンクリート造
・鉄骨造
・重量鉄骨造
アパート2階建て・木造
・軽量鉄骨造

上記のようにひと口にマンション、アパートといっても構造はさまざまです。本記事では、それぞれの代表的な構造「RC造(鉄筋コンクリート造)マンション」「木造アパート」の2つを比較していきます。

マンション投資とアパート経営の比較「法定耐用年数」

法定耐用年数(以下、耐用年数)は、賃貸経営の収支や節税にかかわる大事な要素です。例えば新築の場合の耐用年数は以下のようになっています。

・RC造マンション:47年
・木造アパート:22年

耐用年数の間は、以下の式で算出した減価償却費を毎年経費として計上することが可能です。

・減価償却費=取得価額×償却率
※定額法の場合

例えば建物の取得価額1億円のアパートとマンションの場合、1年あたりの減価償却額(償却限度額)は以下のようになります。

構造1年あたりの減価償却額定額法の償却率
RC造マンション220万円0.022
木造アパート460万円0.046

※定額法(初年度使用月数12ヵ月)で計算

耐用年数は、長短でどちらがよいのでしょうか。これは「投資家が何を重視するか」で判断が大きく変わります。端的にいうと長期間にわたって一定の減価償却費を計上し続けることを重視するならマンション投資を選ぶのがベターです。一方で節税などを意識して1年あたりの減価償却費をなるべく多めに計上したい場合は、アパート経営が向いているでしょう。

マンション投資とアパート経営の比較「耐久性、坪/平方メートル単価」

工法や地盤などによって異なるものの一般的にRC造マンションは、木造アパートよりも「耐久性が高い」といわれています。例えば賃貸経営者向け月刊誌『地主と家主』の編集長・永井ゆかりさんは、著書『生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門 1万人の大家さんの結論』(プレジデント社 刊)の中で「最も強固な構造はSRC造で、その次に強固なのがRC造だ」と述べています。

RC造マンションと木造アパートを1平方メートルあたりの単価で比べるとRC造マンションのほうが建物の耐久性が高い分割高です。施工会社や不動産会社によって工事費は異なりますが国税庁の「地域別・構造別の工事費用表」(令和3年分用)が示す1平方メートルあたりの単価は、以下のようになります。

【1平方メートルあたりの単価全国平均】
・RC(鉄筋コンクリート)造:26万円
・木造:17万2,000円

このように木造よりもRC造のほうが約1.5倍割高です。

マンション投資とアパート経営の比較「防音性能(遮音性能)」

マンション・アパートの安定経営を実現するには、入居者トラブルをいかに防ぐかもポイントとなります。なぜなら入居者トラブルによる退去を防ぎ入居者の入れ替わりを少なくすれば収支が安定するからです。入居者トラブルに大きくかかわる要素の一つが「建物の防音性能」。GoodNeighbor社が行った隣人トラブルによる引っ越し経験者を対象にした調査によると引っ越し原因の第1位は「騒音」でした。

アパートまたはマンションに住んでいてトラブルで引っ越した人の69.1%が騒音を原因に挙げています。アパートとマンションを比べると騒音を感じにくい(遮音性能が高い)のはマンションです。両者の遮音性能の差を数値で確認してみましょう。日本音響エンジニアリング株式会社によると一般的な木造住宅の外壁の遮音性能は「D−35~40程度」です。

この数値は、テレビや会話などの生活音が「小さく聞こえる」「かなり聞こえる」といったレベルの遮音性能で入居者トラブルが起こりやすい住環境といえます。一方で高気密なマンションのコンクリート壁の遮音性能は「D50以上」です。(サッシ窓部分を除く)テレビや会話などの生活音が「ほとんど聞こえない」レベルとなるため、入居者トラブルが起こりにくい住環境といえるでしょう。

マンション投資とアパート経営の比較「その他」

新築物件を手に入れて不動産投資を始める場合は「工期がどれくらいかかるか」についても意識しておきましょう。なぜなら工期の間は、家賃収入がないからです。RC造マンションと木造アパートの工期を比較すると強固な建物となるマンションのほうが期間を要します。そのため特にマンション経営を選択する人は、契約の前段階で工期の目安を業者に確認するのが無難です。

一方で間取り変更など将来のリフォームのしやすさで比べた場合、木造アパートにアドバンテージがあります。木造アパートは、入居者ニーズの変化に合わせて建物を柔軟に変更しやすい構造といえるでしょう。

マンション投資とアパート経営のメリット・デメリットを整理

ここまでの比較内容をもとにRC造マンション投資と木造アパート経営のメリット・デメリットを整理してみましょう。

RC造マンション投資のメリット(木造アパートと比較した場合)

・長期にわたって減価償却費を計上できる
・建物の耐久性が高い
・防音性能が高い

RC造マンション投資のデメリット(同上)

・1平方メートルあたりの単価が高い
・工期が長い

木造アパート経営のメリット(RC造マンションと比較した場合)

・1年あたりの減価償却費が多くなりやすい
・1平方メートルあたりの単価が安い
・大幅なリフォームをしやすい

木造アパート経営のデメリット(同上)

・建物の耐久性が低い
・防音性能が低い

マンション・アパートそれぞれと相性がよいのは?

ここまでの内容でマンション投資とアパート経営の違いについては理解できたのではないでしょうか。さらに一歩踏み込んでマンション・アパートそれぞれと相性がよいのはどんなタイプの投資家を考えます。

RC造マンション投資と相性がよいのは……

マンション投資(一棟マンション)のメリットは「長期にわたって減価償却費を計上できる」「建物の耐久性が高い」などでした。これらを考慮すると長期的な安定経営や資産価値を重視する投資家と相性がよいでしょう。ただし建物価額が高いため、その分ローンを組むときの頭金(物件価格の1~2割程度)も余計に必要です。その意味では、資金に余力のある人に向いています。

アパート経営と相性がよいのは……

アパート経営の一番のメリットは「物件価額が安い」ことです。その意味では、頭金を抑えつつ一棟物件にチャレンジしたい投資家に向いています。とはいえ木造アパートは、RC造マンションよりも耐久性が低いため、突発的な修繕費用が発生しやすい点はデメリットです。都度柔軟に対応していくには、いつでも使えるまとまった現金をストックしておくと安心でしょう。

初めての一棟マンション投資なら低層タイプも一案

本記事では、マンション投資とアパート経営の違いを明確にしてマンション・アパートそれぞれと相性がよい投資家について解説しました。結論、長期的な安定経営や資産価値を重視する人は、RC造マンション向き、頭金を抑えたい人は木造アパート向きです。ただ不動産投資の初心者だと資金余力がある人でも「大規模なマンションを購入する勇気が出ない」と立ち止まってしまうケースもあります。

このような場合は、中高層のマンションよりも投資額を抑えられる「低層マンション」を視野に入れることも一案です。ご興味のある人は、こちらの記事を参考に低層マンションについて学んでみてはいかがでしょうか。

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