貯蓄型保険,資産形成
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

貯蓄型保険は、保険料が掛け捨てとならず解約返戻金を受け取れるため、資産形成手段として利用されることがあります。しかし貯蓄型保険には多くのデメリットがあるため、資産形成には不向きです。今回は、貯蓄型保険で資産形成することをやめたほうがいい5つの理由を説明します。

目次

  1. 貯蓄型保険とは
    1. 主な貯蓄型保険の種類
  2. 貯蓄型保険のメリット
    1. 保障を確保しながら資産を作れる
    2. 半強制的に貯蓄できる
    3. 相続税の節税になる
  3. 貯蓄型保険で資産形成はやめたほうがいい5つの理由
    1. 中途解約で元本割れする
    2. 保険料が高い
    3. 資産を大きく増やすのは難しい
    4. インフレに弱い
    5. 手数料が不透明
  4. 保険と資産形成は分けて考える
    1. まずは公的保障の内容を確認しよう
    2. 掛け捨ての保険で必要最低限の保障を確保する
    3. 貯蓄と資産運用で資産形成に取り組む
  5. 保険は掛け捨て、資産形成は貯蓄や金融商品を活用しよう
  6. 貯蓄型保険での資産形成についてよくある質問
    1. Q.貯蓄型保険とは?
    2. Q.貯蓄型保険のメリットは?
    3. Q.貯蓄型保険のデメリットは?

貯蓄型保険とは

貯蓄型保険とは、保険機能と貯蓄機能が一体となった保険商品です。契約期間中に万が一のことがあれば契約内容に応じた保険金を受け取れます。また保険料は掛け捨てではなく解約するタイミングに応じて解約返戻金が支払われるのが特徴です。保険料の払込期間は商品によって異なり「一生涯保険料を払うタイプ」や「60歳までなど払込期間が決まっているタイプ」などがあります。

主な貯蓄型保険の種類

主な貯蓄型保険の種類は、以下の通りです。

  • 終身保険(死亡保険)
  • 学資保険
  • 個人年金保険

終身保険は、被保険者が死亡したときに保険金が支払われる保険です。保障は一生涯続き、途中で解約すると保険料の払込期間に応じた解約返戻金が支払われます。学資保険は、子どもの学費に備えるための保険です。例えば、子どもが18歳になるまで保険料を払い込み、大学に入学するタイミングで満期保険金などを受け取るのが一般的でしょう。

契約者となる親に万が一のことがあれば保険料の払い込みが免除される特約も用意されています。個人年金保険は、毎月一定額の保険料を払い(一時払いもあり)一定の年齢に達すると年金を受け取れる保険です。国民年金や厚生年金といった公的年金を補うために利用されます。それぞれに保険のタイプは異なりますが「払い込んだ保険料に応じて将来お金が受け取れる」という点は同じです。

貯蓄型保険のメリット

貯蓄型保険のメリットは、以下の通りです。

保障を確保しながら資産を作れる

貯蓄型保険は、保険機能と貯蓄機能が一体となっているため、保障を確保しながら資産を作ることが可能です。終身保険の場合、保険期間中に万が一のことがあれば契約内容に応じた保険金が支払われます。また、中途解約すると保険料払込期間に応じて解約返戻金を受け取れることが特徴です。例えば、子どもが社会人になるまで保険料を払い込み、子育てが終わったら保険を解約して解約返戻金を受け取るといった使い方ができます。

長期間にわたって保険料を払い込むことで商品によっては解約返戻金が払込保険料の累計額を上回ることもあります。

半強制的に貯蓄できる

貯蓄型保険は、毎月保険料を払う必要があるため、半強制的に貯蓄できます。積立貯蓄のような感覚で続けられるので加入後は時間や手間がかかりません。早期に解約すると元本割れするため、強制的に貯蓄に取り組む手段として利用できるでしょう。

相続税の節税になる

貯蓄型保険は、相続税の節税につながります。被相続人の死亡によって取得した生命保険金や損害保険金は、原則として相続税の課税対象です。しかし、以下の非課税限度額の範囲内であれば、相続税は課税されません。

・相続税の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

つまり貯蓄型保険を上手に活用すれば相続税負担が軽減されるため、配偶者や子どもにより多くの資産を残したり相続税対策を行ったりすることが期待できます。

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貯蓄型保険で資産形成はやめたほうがいい5つの理由

貯蓄型保険には、一定のメリットはあるもののデメリットも多い傾向です。そのため個人の資産形成では基本的に避けたほうがいいでしょう。ここでは、貯蓄型保険のデメリットを5つ紹介します。

中途解約で元本割れする

多くの貯蓄型保険は、中途解約すると元本割れします。元本割れとは、解約返戻金が払込保険料の累計額を下回ることです。特に「低解約返戻金型」の保険は、一定期間は解約返戻金の払戻率が低くなっており元本の6~7割程度しか戻ってきません。貯蓄型保険で元本割れを避けるには、長期にわたって保険料を払い続けることが必要です。

しかし、人生には何が起こるか誰にも分かりません。まとまったお金が必要になる可能性もあるため、
資産形成として保険を利用することはあまりおすすめできません。

保険料が高い

貯蓄型保険は、掛け捨ての保険に比べると保険料が高いこともデメリットです。保険料の中に解約返戻金の原資となる積立部分が含まれているため、保険料は高い傾向にあります。保険料が高いと家計を圧迫し長期間払い続けるのが困難になる可能性もあるでしょう。

資産を大きく増やすのは難しい

貯蓄型保険は、低金利の影響で予定利率が下がっているため、資産形成するには難しい状況です。予定利率とは、保険契約時に約束する運用利率のことを指します。10年以上の長期間保険料を払い続けても解約返戻金は払込保険料の累計額を少し上回る程度であり運用手段としては有利といえません。

インフレに弱い

多くの貯蓄型保険では、契約時に予定利率などに基づいて解約返戻金の額が決まります。インフレになって物価が上昇しても解約返戻金の額は変わらないため、保険の資産価値が実質的に目減りする可能性があります。将来インフレになるかは予測できませんが貯蓄型保険にインフレリスクがあることは理解しておきましょう。

手数料が不透明

生命保険の保険料は、純保険料と付加保険料で構成されています。純保険料は、将来保険金などの支払い、付加保険料は保険会社の事業運営に充てられます。ほとんどの保険会社は、保険料の内訳を公開しておらず実質的な手数料は不透明です。長期の資産形成では手数料が安い金融商品を選ぶのが鉄則となるため、手数料が不透明な商品を選択するのは避けたほうがいいでしょう。

保険と資産形成は分けて考える

貯蓄型保険は、時間や手間がかからない半面運用手段としては非効率です。そのため保険と資産形成は分けて考えるほうがいいでしょう。掛け捨ての保険で必要な保障を確保し貯蓄や金融商品で資産形成を行うのが合理的です。

まずは公的保障の内容を確認しよう

日本では、公的な保険制度が整備されているため、民間の保険に加入しなくても一定の保障を受けられます。例えば、国民年金・厚生年金の加入者が死亡した場合、一定の条件を満たせば家族に遺族年金が支給されます。高額な医療費を支払ったときは、健康保険の高額療養費制度によって自己負担限度額を超える部分の払い戻しを受けることも可能です。他にも傷病手当金、障害年金といった制度があります。

ある程度の貯蓄があれば民間の保険は不要なケースもあるため、保険に加入する前に公的保障の内容を確認しておきましょう。

掛け捨ての保険で必要最低限の保障を確保する

公的保障だけでは、保障が不足する場合は、掛け捨ての保険を検討しましょう。掛け捨てなら手ごろな保険料で必要な保障を確保できます。中途解約で元本割れするリスクもないため「新しい商品に乗り換えやすい」「保障が不要になればいつでも解約できる」といった点はメリットです。

貯蓄と資産運用で資産形成に取り組む

資産形成は、保険ではなく貯蓄や資産運用で取り組むのがおすすめです。財形貯蓄や積立貯蓄で収入の一定額を積み立てておけば必要なときにいつでも引き出しできます。また、つみたてNISAやiDeCoといった非課税制度を利用して投資信託などの金融商品で運用すれば貯蓄型保険よりも効率的に資産を増やすことが期待できるでしょう。

保険は掛け捨て、資産形成は貯蓄や金融商品を活用しよう

貯蓄型保険は、中途解約で元本割れするリスクがあるなど運用手段としては多くのデメリットがあります。そのため保険と資産形成は分けて考えることが合理的です。例えば、保険は保険料が安い掛け捨て、資産形成は貯蓄や金融商品を活用するのが向いています。加入してから後悔しないように貯蓄型保険のデメリットを理解しておきましょう。

貯蓄型保険での資産形成についてよくある質問

Q.貯蓄型保険とは?

A.貯蓄型保険とは、保険機能と貯蓄機能が一体となった保険商品です。契約期間中に万が一のことがあれば契約内容に応じた保険金を受け取れます。

Q.貯蓄型保険のメリットは?

A.保障を確保しながら資産を作れる、半強制的に貯蓄できる、相続税の節税になるといった点が挙げられます。

Q.貯蓄型保険のデメリットは?

A.中途解約すると元本割れする可能性がある、保険料が高い、資産を大きく増やすのが難しい、インフレに弱い、手数料が不透明等といった理由が挙げられます。

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