時価総額約29兆円 ビットコインに次ぐイーサリアムとは?
(画像=sumire8/stock.adobe.com)
大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

イーサリアムは、主要な暗号資産(仮想通貨)の一つです。2021年6月18日時点で時価総額が約29兆7,733億円とビットコインの約77兆1,847億円に次ぐ規模で取引されています。イーサリアムには、どんな特徴と活用方法が期待されているのでしょうか。今回は、イーサリアムの基本情報やメリット・デメリット、将来性について解説します。

イーサリアムとは

イーサリアムとは、ヴィタリック・ブテリン氏によって考案されたプラットフォームの名称です。イーサリアムプラットフォーム内で使われる通貨を「イーサ(単位:ETH)」といい、一般的にプラットフォーム・通貨ともに「イーサリアム」と表現されています。イーサリアムの基本情報を以下にまとめました。

仮想通貨名イーサリアム(ETH)
開発者ヴィタリック・ブテリン
コンセンサスアルゴリズムPoW(プルーフ・オブ・ワーク)
発行上限なし
時価総額
(2021年6月18日時点)
約29兆7,733億円(第2位)
1ETHあたりの価格
(2021年6月18日11時30分時点)
約25万5,926.45円

イーサリアムのマイニング方式は、ビットコインと同じ「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」という方法が採用されています。ビットコインとは異なり発行上限は設けられていません。イーサリアムの時価総額は、2021年6月18日時点で約29兆円となっており第2位です。イーサリアムの価格は、2020年前半は2万~3万円で推移。

しかし2020年の年末にかけて徐々に上昇しはじめ翌年2021年5月には40万円を超える場面も見られました。その後は、下落し2021年6月18日時点では25万円前後で取引されています。

イーサリアムの特徴・メリット

イーサリアムの主な特徴・メリットは、以下の5つです。

スマートコントラクト

スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上にプログラムを書き込むことで、契約内容の実行を自動化できる仕組みのことです。スマートコントラクトは、金融や不動産などの分野で実用化が期待されています。例えば不動産であれば相対取引が中心のため、売買契約などの取引は書面で行われることがほとんどです。そのため取引成立までに時間がかかり人件費などのコストもかさみます。

もし不動産取引にイーサリアムのスマートコントラクトを活用できれば契約や決済、所有権の移転、物件の引き渡しなどを自動化することが期待できるでしょう。またブロックチェーンによって改ざんが難しい状態で契約履歴が保存できるため、契約不履行の防止にもなります。スマートコントラクトは、汎用性が高く送金や金融商品の取引、商品・サービスの売買など各分野で活用が期待されているのです。

分散型アプリケーション(dApps)

分散型アプリケーション(dApps)とは、政府や企業といった中央管理者がいなくても運用できるアプリケーションのことです。アプリの利用者によってデータが分散管理され仕様変更などの意思決定には利用者全員が参加できます。dAppsは、中央管理者がいないため、運営元や一部の参加者に権力が集中することを防止することが可能です。

またブロックチェーン上でデータが分散管理されるため、ハッキングリスクが下がります。一方でデータ量が増えるとトランザクション(取引)の遅延が生じる「スケーラビリティ問題」があるため、処理能力の向上が課題です。dAppsの事例としては「ゲーム」が知られています。イーサリアムのdAppsを活用したゲームでは、独自トークンが使用可能です。

独自トークンの発行が可能

イーサリアムには「ERC20」という規格がありこの規格を使って独自トークン(仮想通貨)の発行が可能です。トークンは、法人でも個人でも発行できイーサリアムブロックチェーン上で構築されます。イーサリアムを利用することでブロックチェーンの設計に手間がかからないのがメリットです。ICOによる資金調達では、独自トークンを発行する際にイーサリアムがよく使われます。

また議決権や発行者が提供する商品・サービスの決済などトークンに独自の価値を設定することも可能です。

分散型金融(DeFi)との関係

分散型金融(DeFi)とは、主にイーサリアムのブロックチェーン上に構築される金融アプリケーションのことです。銀行や証券会社、仮想通貨取引所といったサービスをブロックチェーン活用により提供するものといったほうが分かりやすいかもしれません。既存の金融サービスは、中央管理者が存在しています。

しかしDeFiは、ブロックチェーンとスマートコントラクトが基盤となっているため、契約実行の自動化により管理者を排除し透明性の高い取引ができるのです。代表的なDeFiサービスとして「分散型取引所(DEX)」や「レンディング」があります。DEXは、取引所に通貨を預ける必要がなくウォレット同士で取引できるのが特徴です。レンディングは、仮想通貨を第三者に貸し出して利息を得ることです。

DEXやレンディングなどのDeFiサービスに仮想通貨を貸し出すことで金利や手数料収入を得られる「イールドファーミング」の登場により仮想通貨投資家の間でDeFiがブームとなりました。ただしDeFiは管理者がいないため、トラブルが生じても自己責任である点に注意が必要です。

発行上限や半減期がない

ビットコインなど発行上限がある仮想通貨は、マイニング(仮想通貨の採掘)に半減期が設けられています。半減期とは、マイニング時にもらえる報酬が半分になる時期のことです。半減期を作ることで採掘される通貨量を制限し希少価値を作り出すように設定しています。ただし発行上限や半減期があり通貨の供給量が減ると価格が不安定になりやすい点が特徴です。

イーサリアムには発行上限や半減期がないため、比較的安定した価格を維持しやすいといえます。

イーサリアムのデメリット

イーサリアムは、15秒に1回のペースで取引の承認作業が行われますが取引量が増えると承認に時間がかかってしまうことがあります。これがスケーラビリティ問題です。イーサリアムには、取引情報のほかにスマートコントラクトを実行するためのプログラムも書き込まれます。またDeFiの活況などもあってデータ量が増加傾向です。

イーサリアムが普及するほどスケーラビリティの問題は深刻化するため、課題解決が急務となっています。

イーサリアムの今後と将来性について

ここでは、イーサリアムの今後の価格に影響を与えると考えられる内容を紹介します。

4回目のアップデート(セレニティ)

イーサリアムは、バージョンアップのために4回のアップデートが決まっています。各アップデートの名称と実行年月は以下の通りです。

  • フロンティア(2015年7月)
  • ホームステッド(2016年3月)
  • メトロポリス(2019年3月)
  • セレニティ(未定)

4回目のセレニティでは、マイニング方式が従来の「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」から「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」に移行される予定です。PoWは、電力の過剰消費により二酸化炭素が排出され環境への負担が大きいという課題があります。PoSへの移行で従来よりも電力消費量が抑えられる見込みです。

EAAの動向

EAA(エンタープライズ・イーサリアム・アライアンス)とは、イーサリアムを推進する非営利団体のことです。マイクロソフトやトヨタ自動車といった世界の大手企業が参加しています。EAAの活動によりイーサリアムの普及が進めばイーサリアムの価格が上昇する可能性があるでしょう。

ビットコインとの相関性

2020年後半~2021年5月にかけてビットコインは100万円台から600万円超まで大きく上昇しました。同じタイミングでイーサリアムも5万円前後から40万円超まで上昇しています。また2021年5月にビットコインが300万円台まで下落したときは、イーサリアムも20万円台まで下落しました。このようにイーサリアムの価格は、他の仮想通貨と同様にビットコイン価格との相関性が高い傾向です。

そのためビットコインの動向に大きな影響を受ける可能性があります。

スマートコントラクトの実用化

スマートコントラクトは将来性の高い技術ですが、本格的な実用化には至っていません。金融業界や不動産業界を中心にイーサリアムのスマートコントラクトの実用化が進めばイーサリアム価格にプラスの影響を与える可能性があるでしょう。

イーサリアムに投資する方法

イーサリアムに投資するには、仮想通貨取引所で口座開設が必要です。取引所によって取扱通貨の種類や手数料などが異なります。多くの取引所でイーサリアムを取り扱っていますが、念のため口座開設前に確認しておきましょう。また入出金手数料や売買手数料は投資成果に影響を与えるため、手数料が安い取引所を選ぶことが大切です。

まとめ

イーサリアムには、いくつかの課題があるものの「スマートコントラクト」「dApps」といった強みがあることから将来性の高い通貨といえます。仮想通貨への投資を考えているならビットコインだけでなくイーサリアムを検討してみてはいかがでしょうか。

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