貯蓄と投資の最適な割合はどれくらい?判断するポイントや注意点を解説
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大西 勝士
大西 勝士
フリーランスの金融ライター(AFP、2級FP技能士)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数のメディアで執筆しています。

資産運用を行う場合、どれくらいの資金を投資に回せばよいのでしょうか。貯蓄と投資の割合に正解はないため、自分にとって最適な割合を判断することが必要です。今回は、貯蓄と投資の平均的な割合や最適な割合を判断するポイントについて詳しく解説します。

貯蓄と投資の違い

そもそも貯蓄と投資には、どのような違いがあるのでしょうか。まずは、貯蓄と投資それぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。

貯蓄のメリット・デメリット

銀行預金などの貯蓄は、いつでも自由に引き出せる流動性の高さがメリットです。生活費や近いうちに使う予定のお金は、貯蓄の形で持っておくといいでしょう。また銀行預金は、投資商品のような価格変動リスクはなく預金保険制度により一定額まで元本とその利息分が保証されています。貯蓄のデメリットは、ゼロ金利政策の状況下では超低金利なため、お金を大きく増やすのが難しいことです。

銀行の預金金利は低いため、口座に預けても元本が大きく増える可能性は低いでしょう。またインフレによって物価が上昇すると貯蓄の資産価値は実質的に目減りします。例えば100円で買えていたものが200円に値上がりした場合、貯蓄の資産価値は半分になってしまうのです。

投資のメリット・デメリット

投資は、株式や投資信託、不動産などへ資金を投下することです。投資は、値上がりや利益の分配が期待できるため、貯蓄よりもお金が増える可能性があります。中長期的に投資をして利益を再投資して元本に組み入れていくと利益の増え方が大きくなる「複利効果」も期待できるでしょう。一方で投資は元本保証ではないため、損をすることもあります。

運用に失敗すれば元本を下回ってしまい資産を大きく減らしてしまうことも珍しくありません。投資商品は、預貯金に比べると流動性が低く資産の種類によっては現金化に時間がかかる点にも注意が必要です。

貯蓄と投資の平均的な割合は?

貯蓄と投資の平均的な割合は、どれくらいなのでしょうか。2021年1月29日に金融広報中央委員会が公表している「家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」によると2人以上世帯の金融資産保有状況は以下の通りです。

資産の種類平均保有額割合
預貯金678万円約47.2%
保険415万円約28.9%
有価証券287万円約20.0%
その他金融商品55万円約3.8%

参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」

預貯金と保険で全体の約76%を占めており残りの約28%を有価証券などの金融商品で保有しています。また投資割合については、海外との比較も参考になるでしょう。2021年8月20日に日本銀行が公表している「資金循環の日米欧比較」によると日米欧の2021年3月時点における家計の金融資産構成は以下の通りです。

国名現金・預金投資信託・株式保険・年金などその他
日本54.3%14.3%27.4%4.1%
米国13.3%51.0%29.0%6.7%
欧州34.3%27.8%33.8%4.1%

参考:日本銀行「資金循環の日米欧比較」

日本は、現金・預金と保険・年金などの割合が多く合計で約81.7%です。投資信託・株式の割合は、14.3%にとどまっています。一方で米国は現金・預金が13.3%と低く投資信託・株式は51%です。欧州は、現金・預金と保険・年金の合計が約68.1%、投資信託・株式は27.8%となっています。米国や欧州に比べると日本の家計は、保有資産に占める投資の割合が低いことが理解できるでしょう。

貯蓄と投資の最適な割合は人それぞれ

先ほど貯蓄と投資の平均的な割合を確認しましたが投資割合が高ければよいわけではありません。近年の堅調な株式市場相場のおかげで投資割合が高い人は、資産が増加した人もいるのではないでしょうか。しかし現在の相場が今後も続く保証はなく株価をはじめとする資産価格が下がる可能性も考えられます。年齢や収入、リスク許容度などには個人差があるため、最適な割合は人それぞれです。

貯蓄と投資の割合に正解は存在しません。リスクとリターンのバランスを考えながら自分にとって最適な割合を考えることが大切です。

貯蓄と投資の割合を判断するポイント

いくら投資に回すかを決めるときは、どのようなことを検討すればよいのでしょうか。ここでは、貯蓄と投資の割合を判断するポイントを紹介します。

年齢

一般的には、歳をとるほどリスク許容度は低くなります。例えば20~30代の若い世代であれば投資で損失を出しても労働収入でカバーが期待できるでしょう。しかし年金収入のみの高齢者が損失を出してしまうと生活費への影響が大きくなります。そのため「50代になったら投資割合を10%下げる」といったように年齢に応じて資産配分を見直すことが一つの考え方です。

家族構成

家族構成によっても貯蓄と投資の最適な割合は変わってきます。独身のうちは、生活費が低いため、投資割合を増やして一時的に損失が出た場合でも生活への影響は小さく済むかもしれません。しかし結婚して子どもがいる場合は、独身時よりも必要な生活費が増えます。住宅ローンの返済や教育費などまとまったお金が必要になるケースもあるでしょう。

相場によっては、一時的に資産が目減りする可能性もあるため、リスクを抑えながら投資に取り組む必要があります。

収入・保有資産

収入が高い人やまとまった資産を保有している人は、一時的に含み損が膨らんでも収入や預貯金で損失をカバーすることが可能です。しかし収入や保有資産が少ない人は、損失が出たときに生活に支障が出る恐れがあります。現在の収入や保有資産から「どの程度リスクを許容できるのか」について十分に考慮して投資割合を決めることが大切です。

リスク許容度

リスク許容度とは「投資元本のマイナスがどれくらいなら心理的に耐えられるか」といった度合いです。リスク許容度は、個人差が大きいため重要な判断ポイントとなります。株式市場では、過去に大きな暴落が発生している点も忘れてはいけません。例えば2008年のリーマンショックでは、日経平均株価の下落率が50%超、2020年のコロナショックでも30%超の下落率を記録しています。

これを踏まえると「一時的に資産が30~50%目減りする可能性がある」と想定したうえで貯蓄と投資の割合を決めることも一つの方法です。

運用目的

貯蓄と投資の割合は、運用目的によっても変わります。老後資金や教育費のように時間をかけて準備できるお金は、投資の割合を増やしてもよいでしょう。積立投資を長く続ければ購入単価が平準化され複利効果も期待できます。一方で旅行資金や車の購入代金のように近いうちに使う予定のお金は、貯蓄で準備するのが確実です。

投資は、価格変動リスクがあるため、お金が必要なタイミングで値下がりする恐れがあります。

運用商品

運用商品の選択も投資割合の判断に影響を与えます。投資信託のように少額から分散投資ができる商品であれば投資の割合を増やしやすいでしょう。一方でFXや仮想通貨のように値動きが大きくリスクが高い商品に投資する場合は、貯蓄の割合を増やすほうがリスクを抑えられます。

貯蓄と投資の割合を決めるときの注意点

貯蓄と投資の割合を決めるときは、以下の点に注意が必要です。

生活防衛資金を確保しておく

投資を始める前に生活防衛資金を確保しておきましょう。生活防衛資金とは、一時的な収入の減少に備えるお金のこと。収入が減少しても生活できるように最低でも生活費3~6ヵ月分の預貯金を確保しておくと安心です。貯蓄と投資の割合を決める際は、生活防衛資金を除いて考えましょう。

家計収支や保有資産を把握する

貯蓄と投資の割合を決めるときは、家計収支や保有資産を把握することも重要です。収入や支出、保有資産がいくらあるか分からないと自分のリスク許容度を正しく判断できません。まずは、Excelや家計簿アプリを使って家計を「見える化」することから始めましょう。

まとめ

貯蓄は、必要なときにいつでも使えること、投資は貯蓄よりお金が増えやすいのがメリットです。どちらもメリット・デメリットがあるため、バランスよく保有することが大切です。年齢や家族構成、リスク許容度などを考慮して自分にとって最適な割合を見つけましょう。

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