2020年の路線価が発表されましたが、基準がコロナ禍以前の価格であることから、地価の下落が進めば路線価と地価の乖離が大きくなります。そこで国税庁は、10月に路線価の減額修正を検討しているといいます。減額修正が行われた場合、マンションオーナーに影響はあるのでしょうか。
コロナで地価下落、路線価と乖離も
2020年7月1日、国税庁は2020年度の路線価を発表しました。路線価はその年の1月1日時点の価格として発表され、相続税や贈与税の算定基準になります。全国平均の路線価は、前年比で1.6%上昇しました。都市開発やインバウンド効果によって、大都市圏のみならず地方都市にも上昇が波及したことによるものです。
しかし、2020年度は新型コロナウイルスの影響で状況が一変し、年度後半には地価が大幅に下落する可能性があります。路線価と実際の地価に乖離が生じれば、各種税金の課税基準に問題が生じることも考えられます。
路線価や固定資産税評価額は地価の影響を受ける
そもそも、路線価はどうやって決まるのでしょうか。路線価は「毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価額等を基として、算定した価格の80%により評価」(国税庁見解)されます。例えば、地価公示価格が1,000万円の土地の路線価は、800万円になります。
マンション経営における固定費である固定資産税の評価額も、地価の影響を受けます。固定資産税評価額は、地価公示価格の70%を目安に評価されます。
固定資産税評価額と地価の関係については、「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる」という最高裁の判決が平成15年6月26日に出ています。
つまり、「客観的交換価値である地価を固定資産税評価額が上回ることは許されない」という判決が下されたのです。
今後の地価の動向にもよりますが、路線価に対しては20%、固定資産税評価額に対しては30%以上の地価下落が起これば、減額修正をせざるを得ないでしょう。
国税庁が10月以降に減額修正で対応か
このような状況を踏まえ、国税庁は10月以降に地価動向を見た上で、路線価の減額修正に対応することを検討しています。地価が大幅に下落し、路線価が地価を上回るようであれば、対象とする地域を決めて補正率を定める予定です。
検討されているのは、1~6月と7~12月の路線価と地価を比べて、地価が20%以上下落して路線価を下回った地域を対象に補正率を計算する方法です。地価の調査方法は、国土交通省が定期的に発行している「地価LOOKレポート」を参考にする方法や、外部業者に委託して調査する方法などが検討されています。
減額修正がマンションオーナーに与える影響は?
路線価の減額修正が行われると、マンションオーナーにはどのような影響があるのでしょうか。物件が相続や贈与に絡むオーナーは、相続税・贈与税が減額される可能性があります。土地の評価額は、路線価を基準にして計算されるからです。
また、固定資産税が減額される可能性もあります。土地に対する課税方法は「一物四価」と呼ばれるほど複雑で、同じ土地に対して4つの評価方法があります。四価とは、時価(実勢価格)、公示価格(公示地価)、相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額のことです。前述のとおり、固定資産税評価額は公示価格の70%相当で計算されます。
したがって、路線価が減額修正されるほど地価が大幅に下落した場合は、固定資産税の減額修正につながる可能性もあります。一棟オーナーはすべての土地を所有しているので、減額される金額も大きくなるでしょう。
固定資産税は市町村税なので、国税庁が対応することはないと思われます。固定資産税の評価替えは3年に1回行われ、次回は2021(令和3)年に実施されます。ただし、2021年より前でも地価の大幅な下落があれば、市区町村で減額修正が行われることがあります。
路線価の減額修正の行方によりますが、地価が下落した場合は、自分の所有するマンションの固定資産税を減額できるかどうか、不動産会社に相談してみるといいでしょう。
実際に路線価の減額修正が行われるかどうかは地価の動向によりますが、10月時点で国税庁がどのような判断を下すのか、マンションオーナーは注目しておく必要があるでしょう。
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